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2026.06.10

代表コラム

油外放浪記 第211回「レンタカーを活用したインバウンド旅行事業を始めました」

イラン戦争がSSビジネスに影響し始めた

2月末に勃発した通称「イラン戦争」。本稿を執筆している5月上旬時点で、いまだ終わる気配がありません。長期化する懸念さえ出ています。
その影響は当社にも出ています。鈑金塗装用のシンナーの入荷が滞ったと思ったら、エンジンオイルの入荷も止まりました。
わが社の保有在庫は1.5カ月分。慌てて近隣のホームセンターに手分けして買い出しに行かせましたが、焼け石に水。このままでは車検の受注をストップせざるを得ません。

古代文明の発祥から大ペルシャ帝国をルーツに持つイランですから、たかだか250年の歴史しかないアメリカに屈するのは、プライドが許さないのも分かります。
あたかも太平洋戦争で、米国に挑んだ日本を想起します。国を守るため、家族を守るため、命を賭して、10倍の工業生産力を有する「鬼畜米英」 に対し、歯を食いしばって3年9カ月間も戦い続けました。
イラン戦争の早期終結を願うしかありません。一介の中小企業経営者としては、あらゆる事態を想定し、目の前のSS運営に全集中するだけです。

車検は4月も後遺症車販にもイラン危機が忍び寄る

3月満了車検を1月に前倒しで大量獲得した結果、3月の入庫台数が激減したことを、前号で述べました。69カ月間続いた月次利益の更新が、 ついに途絶えました。

4月はどうでしょう(表1) 。
車検台数は前年よりマイナス220台と、大きく落としました(8店合計)。おそらく2月に4月車検を前倒し入庫したからでしょう。
しかし油外粗利は前年を1,400万円上回り、4月としては最高の2.3億円。営業利益も前年を1,000万円上回り、4月最高の3,300万円。4月からまた連勝記録を積み上げていきたいと思います。まずは1勝目。

車販が伸びたのは業販、とりわけレンタカーを大量売却したからです。前年の2倍に相当する77台を、オークションで売却しました。中古車の輸出も、ホルムズ海峡封鎖の影響が出始めているようで、ドバイ向け船便のキャンセルや遅延が増加しているそうです。
特にランドクルーザーなどの4WD、ハイラックス、ハイエース、アルファードなどが、中東で人気が高いと聞きます。

幸い当社が出品する車両は、レンタカーとして人気のコンパクトカーがメインなので、まだそれほど影響がありません。しかし戦争が長引けば、日本の中古車市場は、中東という大市場を失い、またしても停滞するかもしれません。

ニコニコレンタカーが炎上

この3月、当社が主宰するニコニコレンタカーがSNSで炎上する騒動が起きました。
関西のFC店での話です。
帰着した車両のフロントガラスに飛び石と思われるキズがついていたため、その修理代のうち顧客の負担分(保険免責額) を徴収しました。それを聞いた当該顧客の知人なる人物がXに投稿しました。
「こんな小さなキズは直さなくてもいいのに、高い修理代を支払わされたそうです。みなさんどう思いますか?」と。

これが拡散し、大騒ぎになりました。
びっくりしたのはFC本部です。さっそく現地に急行しました。確認したところ、当該店舗の対応は「ルール通り」と判断。ただしキズの程度などにはグレーゾーンがあり、一般的な感覚とはズレが生じてしまったことは否めません。
まずはお騒がせしたことを公式に謝罪した上で、修理すべきキズかどうか、請求すべきキズかどうかの判断基準を厳格化し、標準手順を再徹底するよう、FC店に通達しました。

その後、この炎上騒動は沈静化し、全国のニコニコレンタカーの利用客数なども安定しています。
しかし、SNSで炎上するほどまでに「ニコニコレンタカー」は有名になったのだなぁと、改めて襟を正す思いです。

油外放浪記は次号で最終回

さて、今号の「油外放浪記」は「第211回」です。ということは、実に17年以上もの間、連載を続けさせていただいたことになります。
私も歳を重ねました。健康上の不安から、担当編集には「そろそろ連載を終わりたい」と1年ほど前から希望しておりましたが、いよいよ次号にて最終回となります。
読者の皆様への募る感謝の思いは次回に譲るとして、この17年間、SSを取り巻く環境の激変をしみじみ感じます。

変化への対応は、皆様それぞれだと思います。しかし連載を引き受けた以上、SS業態の優位性をフルに発揮し、年間5,000万円以上の営業利益が獲得できるようになるまで仮説と検証を繰り返していこう、それが多くのSS事業者様にとって、指針の一つとなり希望となれば、との思いで頑張ってきました。
ところが気がつけば、当社の後ろに誰もいなくなってしまいました。

17年かかって到達した業態は、見た目こそガソリンスタンドですが、車検は1店当たり平均で年間1,500台入庫、自動車販売350台、レンタカーは50~150台を運用します。そして、これを支えるためのWeb販促、コールセンター、車の仕入れや架装を行う部門の設置など、一般的なSS業態から見れば、かなりぶっ飛んだ事業形態ができてしまいました。ここまで来ればもう、「ぶっ飛び」ついでです。
今回と次回の最終回は、当社が現在進行形で立ち上げている新事業、もはや「油外」とは呼べない事業について紹介させていただきます。

「インバウンド×旅行×レンタカー」に商機を探す

時は2019年。当社は小さな旅行会社を立ち上げました。
当社はSSとは別に、北海道、九州、羽田や関空の空港前にレンタカー専業店を出店していますが、これが軌道に乗り始めており、相乗効果が期待できるのではないかと思ったからです。
ところが翌2020年、突然のコロナ襲来です。旅行需要はゼロとなりました。

続いて、政府によるカーボンニュートラル宣言がありました。当社の屋台骨であるSSの、存続の危機を感じました。
旅行業どころではありません。ガソリン自動車が許されているうちに、車を売れるだけ売ろう、車検は取れるだけ取ろうと大号令。そしてその収益を、来たるべき脱炭素型事業への原資にしよう。

可哀想なのは旅行会社のスタッフたちです。梯子を外されたも同然なのに、健気にも旅行商品を企画開発しては、玉砕し続けておりました。
しかし、行動すれば糸口が見つかるものです。コロナ禍の「密」を避けて移動する方法として、レンタカーが利用されることに気づきました。レンタカーなら、公共交通機関が通っていない観光地にも行くことができる。これは旅行業界の一部で最近出てきた「ドライブツーリズム」という概念にも通じます。そしてコロナ収束後、急速に爆発したのが外国人旅行客、いわゆる「インバウンド」です(グラフ1)。

インバウンド急拡大の波に乗れ

当社は直営店として、コロナ禍の前からレンタカーのインバウンド需要には実験的に取り組んできました。
しかし今や、ラーメン屋のあんちゃんも、中見世商店街のおばちゃんも、インバウンド対応する時代です。
統計によると、2025年のインバウンド消費は9兆4,500億円と過去最高額。前年比114%の急成長です。

一方、日本の輸出品目ランキングを見ると、トップは自動車で17兆円、2位は半導体等電子部品で6兆円となっています。つまりインバウンド消費額は、自動車に次ぐ経済規模だということが分かります。

2025年現在の訪日外国人数は4,200万人ですが、政府目標は6,000万人だそうです。もしも政府目標に達すればどうなるでしょう?

経営コンサルタントの大前研一氏によるとインバウンド消費額は50兆円に達すると予想されています。自動車輸出額を遥かに凌駕し、GDP(国内総生産)は1割成長するそうです。
さあ、楽しくなってきました。この巨大かつ急成長市場に、わが社も積極的に参入したい。空港前レンタカー専業店を統括する担当者、ならびに旅行会社の担当者にそう伝えました。

イギリス人100人が日本各地を縦断ドライブする企画

今回は旅行会社の取り組みを記します。レンタカー専業店については、次号をお楽しみにー。
まず「言葉の壁」問題ですが、翻訳アプリや通訳の外注であっさり解消しました。今は通訳アルバイトも雇用しています。
次に、旅行ビジネスのとっかかりを作りたい。そこで、海外で開催される旅行コンベンションに出展してみました。
「自前でレンタカーを保有する、ユニークな旅行会社です」と。数多くの旅行業者との面識を得ましたが、その中からイギリスのドライブツーリズム代理店の興味を惹くことができました。

時間をかけて交渉した結果、ついに昨年夏、提携契約を結ぶことができました。100人のイギリス人観光客が、25日間かけて レンタカーで日本を縦断ドライブする旅行企画です。北海道を皮切りに東京、富士山、金沢、京都、四国、広島、九州を巡ります。
観光バスによる団体旅行と比較すると、旅行者にとってはかなり自由度が高く、旅行会社にとってはリスクが高くなります。それもあってか、国内で取り扱う業者はおそらく存在しません。

われわれの役割は、車両の手配に始まり、毎日の宿泊施設、食事、アトラクション、通訳などの手配です。売上は一人当たり100万円。100人で1億円です。さっそく60台の新車ヤリスクロスを発注。あらゆる手配を目の回る忙しさでこなします。イギリス代理店との頻繁な打ち合わせは、時差もあるので、真夜中の3時、4時のZOOM会議も当たり前。

良い旅行商品ができた

1年弱の準備期間を経て、今年4月14日、2班100名のイギリス人が札幌に降り立ちました。その日は札幌に宿泊。翌朝、いよいよ2人1組で車に乗り込んでいただきました。おそらくこの規模では日本初となるドライブツアーのスタートです。事故や交通違反、手違い、天候や人的トラブルが発生しないかと、毎日ヒヤヒヤしていますが、5月初旬現在、順調に旅程が進んでいるようです。旅慣れたイギリス人紳士淑女がお客様だったのも幸いしました。

5月10日に福岡空港で解散の予定ですから、最後まで気が抜けません。もしも問題なければ、来年は300人以上のドライブツーリズム契約が約束されています。
旅行業界の慣習で、費用は前払い。ですから、資金繰りに窮することがないのもありがたい。

しかもこの実績が買われ、早くも新たな代理店からも引き合いが来ているそうです。使用した車両はレンタカーに回すので問題ありません。まさに当社が築いてきた機能が絶妙に組み合わさった、唯一無二のドライブツーリズム商品ができたかもしれません。

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