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2025.12.10

代表コラム

油外放浪記 第206回「SSスタッフを100人採用して車販でモノになるのは4人」

見た目はSSその実態は油外販売店

いつものように、当社のSSの月次実績を見ます(表1)。

営業利益は8店合計で3,850万円。10月も前年を上回りました。実に16カ月間連続して前年同月比で増益しています。
燃料油が減販し、経費が370万円増加したにもかかわらず、油外粗利は車検、車販、レンタカーともに伸び、2億3,000万円を稼ぎました。
総粗利に占める燃料油は5%程度ですから、「油外」という表現はそぐわないのではないか?と思いながら、本稿「油外放浪記」をしたためています。
…とは言え、8店とも元売会社のブランドマークが掲げられ、店舗敷地を元売カラーのキャノピーが覆い、給油設備が大部分を占め、洗車機やセールスルームなども、ほぽ運営継承した当時のままのレイアウト。見た目はごく普通のガソリンスタンドではあります。

(グラフ1) は、SS別の10月の油外粗利です。10月はこれといった需要がないにもかかわらず、全店ともに前年実績を上回り、平均で3,000万円に到達する勢いです。
大きく伸ばしたのは仲町台店と新百合ヶ丘店。それぞれ5,000万円、4,000万円を突破しました。平塚店や小田原東IC店といった田舎の小規模SSも、小規模SSなりに頑張っています。

車販は小売りと業販が逆転するか

10月のトピックは、久々に車販収益が、前年同月を大きく上回ったことです。約900万円伸ばし、8,500万円を超えました。これまでの最高額は、2024年3月に記録した8,007万円でしたので、大きく塗り替えました。
ところがその内訳を見ると、大きな変化が生じています(グラフ2)。

小売りが1,000万円以上落ち込み、業販が1,500万円以上伸びています。その結果、双方の収益額は拮抗してきました。
当社の車販ビジネスは、レンタカーと不可分で展開してまいりました。まずは2020年のコロナ禍に遡ります。客足がゼロとなった空港前レンタカー店で、大量に発生した余剰車両を売り捌くことから、車販支援部隊の「卵」ができました。そこで初めて、「グーネット」や「カーセンサー」の「威力」を体感します。
レンタカーを早々に完売した後、この部隊はAA(中古車オークション)から大量に仕入れ、架装し、ネットに上げてはSSにどんどん搬送する専門部隊に変貌します。この部門のおかげで、SSの車販ビジネスが飛躍的に活性化しました。

さて、この車販支援部隊は、もともと空港前レンタカー店のスタッフたちです。車の仕入れや販売活動についてはド素人でした。
「売れ残っても、最悪、レンタカーにすればいい」という気楽な気持ちで仕入れていました。コロナ禍でも、SSとの兼業レンタカーは、好調を維持していたからです。
こうして毎月100台、150台と仕入れをしていくうち、売れ筋の車種や年式を分析したり、中古車の「目利き」も身につくようになりました。

ところが、コロナの影響が意外と長引きます。仕入れるにも、AAの出品在庫がどんどん減少してきました。
はてさて困りました。そこで、自社内で中古車を「生産」してみたらどうだろう、という発想に至ります。すなわち、レンタカーを新車で仕入れ、1~2年間運用してから、販売用車両に転換するという作戦です。
「仕入れて売る」だけよりも、2倍以上の収益を得られます。

この方法を「R&S」(レンタル&セル)と称しています。「新車の二毛作」と言ってもいいでしょう。
ただし新車ですから仕入れに数カ月、レンタカーとして運用してから販売しますので、結果が出るまで2年くらいかかります。そうこうしているうちに、コロナは終息に向かいます。AAも回復の兆しが見えてきました。結局、「R&S」は、最適な時期に売却しやすいAAに出品するケースがほとんどです。

(グラフ3) は、今年の「R&S」の「S」の実績です。3月、8月のレンタカー需要期が過ぎた後に売却しています。これが、10月の自動車業販が押し上がった一因です。
もう一つの要因は、やはり全国の中古車店へのダイレクト販売です。

私たちは現在、年間4,000台をAAから仕入れ、「グーネット」や「カーセンサー」といった一般向けサイトに掲載していますが、一部を業販サイト「エーエスネット」にも掲載してみました。これもよく売れます。誠実に対応してきた結果、優良業者として認定されたことは大きいでしょう。

業販用の車両は、商品車もレンタカーも、すべてSSが在庫負担していますから、その販売収益もSSにつけています。しかし、SSスタッフはほとんど関与しません。手続きなどは、本社の車販支援部隊が代行しています。

というわけで、自動車業販においては、人的な販売スキルは必要ありません。レンタカーと同様、ほぼ仕組みで収益が上がります。店長にとっては、ただただありがたい商材です。

SS車販のプロが、世の中に存在しない

次は、自動車小売が低迷している問題です。
昨年5月に車販担当者への個人インセンティブを廃止して以来、低迷が続いています。前々期の年間販売台数は3,566台でした。6,000台を目指そう!と鼓舞した矢先、前期は3,451台止まり。解決策が見つからないまま、今期に突入しています。

グーネットやカーセンサーを見て問い合わせていただいたお客様に連絡し、来店してもらって、現車を見せ、成約するという販売方法です。この過程はすべて「人」が行います。
優秀な「人」を採用すればいいのでしょうか。

当社は今、全社的に人を募集していますが、経理とかIT(情報技術)とか整備士などは、簡単とは言いませんが、その道のプロや経験者が応募してくれます。ところが、SSで毎月10台、20台を販売するような人材は、まず見つかりません。そもそも「SS車販」という職種が確立していないのです。自動車販売のプロは、カーディーラーに応募します。SSという職場は眼中にありません。

つまり優秀な「人」は、自分で育てるしかないのです。
まずは素人をSSスタッフとして採用します。基本教育を施し、店頭に出してリスト取りの接客をさせることから始め、レンタカーの実務、車検の販売といった一通りの業務が一人前にできるようになってから、車販に興味がある者を見出し、スキルを身につけさせるということになります。

そこで改めて、コロナ以降の車販スタッフの状況を整理してみました(表2) 。

2020年度、車販担当者は39人。平均販売台数は年間42台。年間100台以上売るのは、わずか4人でした。
その後、年々改善します。2025年度の平均販売台数は89台。4年間で倍増しました。100台以上売る人も13人となりました。

しかし、車販担当者は39人。5年前に戻ってしまいました。新たに起用する一方で、同数の退職者(または他部門に配置転換)が出るからです。着実に育っていると思う一方、販売員数は横ばいです。

車販担当もどきが4割

もう少し、腰を据えて考えてみます。
当社は現在、8カ所のSSに約300人(うち社員100人)を配備しています。このうち車販担当者は39人。

車販担当といっても、四六時中、車販業務をやっているわけではありません。普段は通常のSS業務に携わっており、車販の見込み客が来店したときだけ商談します。
300人のうちの39人ですから、車販担当候補生の出現率は13%。しかし、年間0~2台しか成約しない人が15人(4割)います。
この「車販担当もどき」を除いた、23人の状況を(表3) にまとめました。

100台以上販売する人は13人。300人のうち4%がモノになります。しかもモノになるまで平均3年かかる、というのが当社の実態です。
1年で100台レベルに到達する人もいますが、これは「例外」「ラッキー」ととらえるべきでしょう。こういう人材の出現を待っていても、車販事業は安定しません。C君のようにあっという間にトップクラスに成長し、3年で退職する人もいます。

人の採用費用が、年々増えている

「企業は人なり」と言われます。ガソリンがセルフ方式で買える時代になって、その意義は希薄になりがちですが、今も「油外は人なり」でず。

しかし中小企業の宿命か、はたまた企業運営の下手さからか、当社は創業以来、離職率の高さに悩まされてきました。かつては30%近くありました。そこで福利厚生の充実を含め、様々な施策を講じた結果、ここ数年は10%程度と改善しています。日本の平均離職率は15.4%(令和5年)ですので、人並みの数字になったでしょうか。
事業を成長させるには、離職率を抑えるだけでなく、新規採用も不可欠です。当社は2020年に採用部門を強化し、組織的に採用活動を行ってきました。

過去5年間の採用実績を見ていますが(表4) 、その費用の高騰ぶりにびっくりしています。この5年間で採用率は6割減、1人当たり採用費が1.7倍。782人との面談の手間も、隠れたコストです。

少子高齢化や労働力不足で、採用環境がここまで厳しくなったということでしょう。

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