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2025.10.10
油外放浪記 第204回「インドアゴルフ練習場をやってみた」
今年も8月の最高益を更新
今年も酷暑の夏でした。地域によっては記録的な豪雨が発生し、被害に遭われた皆様方には、心よりお見舞い申し上げます。
幸い当社の店は、ほぼダメージを受けませんでした。むしろ九州でたくさんの車が水没したため、当地に出店したレンタカー店は、損保会社から100台以上をマンスリー契約いただくという特需がございました。少しでも地域のお役に立てたのなら、喜ばしいことです。
さて、当社のSSの8月の実績を(表1) に示します。

前年同月と比べると、燃料油の販売量は横ばいでしたが、口銭が2円下がったため、520万円を失いました。油外は、車検とレンタカーが奮闘しました。
油外が3,200万円増加したので、総粗利の増加額は2,500万円となりました。
一方で、経費も2,000万円増えました。
しかし、経費の伸び以上に収益が伸びたので、問題ありません。営業利益はプラス680万円の7,300万円。
当社の事業年度は、7月からスタートしています。気が早いですが、8月までの実績をもとに、今期1年間の営業利益を推計してみました。7.6億円となります。昨期を3億円上回ります。皮算用ですが、幸先のよいスタートです。
夏のレンタカー増車は一粒で3度おいしい
8月は、レンタカーのためにあると言っても過言ではありません。
昨年の8月、当社のSSは8店合計580台で臨み、9,000万円を売り上げました。今年の8月は700台で臨み、1.1億円。ついに単月の売上で1億円を越えました(表2)。

とにかく夏は、レンタカー需要がハンパなく沸き起こります。車の数を増やした分だけ、荒稼ぎできるわけですが、実は夏の増車は、一石三鳥の効果があることをお話しします。
たとえば、夏までに20台増車したとしましょう。
1台当たり平均150万円で購入したとして、仕入れ原価は3,000万円です。
その車が、7~9月の3カ月間で、12万円×3カ月×20台=720万円を稼ぎます。
そして秋に売却します。買った時と比べて走行距離は1万キロくらい増えますが、同じ年式の車です。1台当たり平均120万円で落札されるとして、2,400万円の車販収益が得られます。
加えて、夏に大量集客した新規客の一部が、秋以降にリピート利用してくださいます。来年の夏まで、ざっと月間100万円×12カ月=1,200万円の売上が、アドオン(上乗せ)されます。
「レンタカーを日常利用」されるお客様が積み上がるのは、地域に密着したSSレンタカーだからこそです。
さあ、集計してみてください。
3,000万円の投資が、1年間で4,320万円の収益となります。投資効率44%。事故や災害によって車両の価値が下がるリスクもありますが、概ね、元本保証の超高利回りが見込めます。
レンタカーがSSの生産性を跳ね上げる
レンタカーは、SSの生産性も大きく向上させます。
昨年来、当社のSSでは、重要指標の一つとして、店長やスタッフに「生産性」を意識づけています。
8月は合計3万4,000時間の労働を投入し、2.85億円の粗利を得ました。人時生産性は8,400円。SS業態としてはかなり高いのではないでしょうか。ちなみに、昨年8月の人時生産性は7,700円でしたので、700円の改善です。
それもそのはず、レンタカーは「人]ではなく「車」が稼ぐからです。車を増やすほど、生産性が改善します。1回貸し出すのにかかる人手は30分ほど、そして客単価は約1万円。ですからレンタカーだけで見ると、人時生産性は2万円となります。
しかも投入する人員は、特別なスキルが要りません。業務時間30分のほとんどを占めるのは洗車ですが、「今日だけ働く」スキマバイトでも十分に務まります。
新規事業経過報告(インドアゴルフ練習場)新規事業の種を探す
本稿のタイトルは「油外放浪記」ですが、当社では、SSと関係のないビジネスも試していますので、ときどき開示させていただいております。
きっかけは2020年に政府が発表した「カーボンニュートラル宣言」です。
脱炭素社会が到来すれば、SSビジネスは根こそぎ倒壊してしまうとの危機感から、2つの方針を打ち出しました。
1)現行ビジネスで稼げるうちは、稼げるだけ稼ごう。
2)SSやガソリン車が、世の中からなくなっても成立する事業を立ち上げよう。
アンテナを張っていると、いろいろな提案を受けます。すぐ着手できるものもあり、試してみては頓挫を繰り返してきました。
「新規事業セミナー」なるものにも、しばしば参加させていただいております。その中で、興味を惹いたのが「インドアゴルフ練習場」。屋内施設にゴルフのシミュレーションマシンを設置したゴルフの練習場です。
マシンの精度が飛躍的に高まっているそうで、フォームなどの測定分析機能も充実し、プロゴルファーも練習に取り入れているとのこと。天候に左右されず空調の効いた屋内で、24時間、気軽に利用できることから、利用者が増えているとの話です。
一方、従来からある屋外型の「打ちっ放し」と比較すると、かなり小さな面積で開業できるため、都市部などで新規参入が増えているそうです。
私はゴルフをしません。しかしセミナーのプレゼンターの説明に、大いに共鳴しました。
特に響いたのは次の3点です。
➊収益性・・・初期投資6000万円、年間利益3000万円、2年間で投資回収。
➋人手・・・アルバイトで運営できる。夜間は無人運営も可。
➌将来性…国内のゴルフ人口は600万人、コロナ後さらに増加しており、今後も増える見通し。
なるほどと納得しました。やらない理由はありません。
さっそく物件を探しました。ゴルフクラブを振り回せるほどの天井高を有する物件は意外に少ないですが、当社本社にほど近い場所、横浜市都筑区の駅前のパチンコ屋が廃業して、スケルトン(内装設備が施されていない)状態となっている物件が見つかりました。
さっそく2022年の年末に賃借契約しました。翌2023年から開店準備にとりかかり、同年9月にオープンしました(写真)。

開店準備
(A)事業開発プロジェクト
SSの店長から1人を選出し、事業開発責任者に任命しました。また、SSのアルバイトから1人を引き抜き、アシスタントとしました。いずれもゴルフに興味のある人間です。
さらに、本社の販促部門から社員3名を指名し、従来業務との兼業でプロジェクト要員に起用しました。
(B)初期投資
当初の説明では、6打席6,000万円でした。しかし、競合店との差別化に「高品質・大規模」が有利なことは、SSと同じでしょう。当社の店は9打席とし、内装にもお金をかけ、9,100万円かかりました。
同じエリア内に競合は21店ありますが、結果として、当店が最大規模となりました。
(C)スタッフ募集
アルバイトを募集したところ、100名以上の応募がありました。SSとはあまりの格差にびっくりです。
4~5名を採用し、シフトを組んで配備しました。あれから2年経ちますが、現在も全員が勤務しています。
(D)レッスンプロ
「つて(伝手)」を辿って1名を確保したところ、あとは芋づる式に数名を補充できました。懸案事項の一つでしたが、案ずるより産むが易し、ということになりました。
(E)集客
サブスク利用の会員を募ります。ホームページを作り、SEO(検索エンジンの最適化)や、ネット広告、SNSで販売促進をします。油外販売で培ってきたスキルが生きました。
営業収支
オープン後の収支は、(表3)のとおりです

最初の3カ月間は、無料お試し期間です。300人程度が会員化しました。
23年12月から売上(会費)が発生します。翌年3月には単月で黒字となりました。オープン7カ月目です。
そして2年目の下期には、平均売上490万円、営業利益117万円が上がるようになりました。利益率は24%です。
思ったほど会員の退会がありません。経費も安い。安定していて資金効率の高い事業であることは確かです。
しかし、どうも私の性分に合いません。どうしても、SSと比較をすることになってしまうのですが、車検、車販、レンタカーのように年々改善して、青天井で稼げる商売ではありません。
1打席当たりの月間売上は、最大50万円程度だそうです。当店は9打席なので450万円、これが天井です。これ以上の会員数を集めてしまうと、利用できない(予約できない)会員が増えてしまいます。
ということは、改善の余地は、経費をいかに削減するかに向かいます。
あるいは出店数を増やす。本部に5名のスタッフを置けば、50店くらいに拡大展開しても回るでしょう。年間7億円の利益が見込めます。1人当たり1.4億円です。なかなかの高収益事業ではありませんか。
熱心なゴルフファンからすると、ゴルフにまったく思い入れのない経営者が、単にビジネスとしてしか見ていないのは、失礼に当たるのかもしれません。しかし、社員300名の生活と将来を守るためです。
2025年1月に2号店をオープンしました。神奈川県の平塚駅前です。横浜と比べると、インドアゴルフヘの関心はやや低く、集客に苦労していますが、年末には単月黒字となる見通しです。
3号店の物件も、横浜市港北区で見つかりました。来年2月にはオープンできそうです。だんだん手慣れてきました。
SSの出店のように、能力のある店長やスタッフを採用育成する手間とコストは要りません。監視員だけを置くピュアセルフSSの出店と、たぶん同じくらいラクです。


