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2025.09.10

代表コラム

油外放浪記 第203回「中古車買取事業の栄枯盛衰」

酷暑に奮励するスタッフに脱帽

今年も酷暑が続きます。SSの現場環境は、人が働くには、年々危険度を増していると感じます。
考えてみれば、小売りサービス業で、店員さんが日中の屋外を四六時中、動き回る業態は、SSの他に思いつきません。にもかかわらず、健気にフィールドを走り回っているSSスタッフたちには、本当に頭が下がります。

この厳しい労働環境下において、当社のSSの7月の営業利益は、前年を800万円上回る4,300万円(8店合計)。7月の最高益を、今年も更新してくれました(表1) 。

燃料油販売量は横ばいですが、口銭が大きく下がりました。経費は1,300万円増加しました。しかし、油外が2,500万円増加の2.3億円。本当によく頑張ってくれました。
油外商品ごとに見てみましょう。

まず車販です。
粗利構成比が最も高く、7,000万円以上の実績です。しかし、残念ながら7月も前年割れ。自動車小売が相変わらず不調で、業販も大きく落としました。

悶々としつつも、車販が得意な仲町台店店長のもとに、各店の車販担当者を順番に行かせ、修行させています。OJT(現場教育)を通じて、自動車販売の心構えから身だしなみ、所作に至る細かい指導をしてもらっています。
全店25名の研修がひととおり完了し、結果が出るまで、なお時間を要するでしょう。

レンタカーは7月に増車

粗利の伸びが最も高いのはレンタカーです。前年比1,200万円伸びました。
レンタカーの最需要期は8月です。当社のSSは、昨年レンタカー500台で臨み、9,000万円の収益を得ました。
今年は1億円に達するぞと、担当者は息巻いています。7月時点で車両は700台となりました。早くも8月の予約が着々と入っており、準備万端、気合い十分です。

SSレンタカー事業は、7月までに大増車しておくのが鉄則です。そうすると、8月に殺到する新規客を、大量につかむことができます。
その新規客が多いほど、日常的に反復利用していただくお客様がドンと積み上がります。このリピーターの蓄積が、安定した成長を支えてくれるようになります。

点検結果をいかにリアルに説明するか

車検も、7月の最高益を出しました。粗利6,700万円。
当社8店の設備キャパの制限から、入庫台数は飽和しつつあります。・・・にもかかわらず、収益が伸びたのは、1台当たり粗利額が伸びたからです。昨年は41千円、今年は47千円(グラフ1)。
今年2月に基本料金を「値上げ」したこともありますが、整備の提案力が上がったことも大きいでしょう。

当社では、車検を受注したら、まず点検のためにご来店いただきます。30分刻みで予約が入っていますので、のんびり点検できません。ですから、お客様には立ち会ってもらうことはせず、静かで安全で涼しいセールスルームで、ゆったりお待ちいただきます。その代わり整備士は、点検箇所をスマートフォンで撮影し、クラウドシステム(ネット上のサーバー)にアップロードします。

点検が終わると、フロント担当者が点検結果を報告します。
その際、整備士が撮った写真をタブレット端末の画面上で示し、各パーツの状態を見せ、説明しながら、必要な整備をアドバイスします。点検結果の報告が終わったら、見積書を提示します。「見積書」と言っていますが、実際は金額の書かれた整備提案書です。デフォルト(標準)で10項目の整備とその料金が記載され、さらに車の状態に合わせ、整備士が平均5項目以上を追加したものです。

お客様はこれを見て、何を整備するかを決め、ご注文いただくわけです。
直近1年間の平均実績では、提案した整備の80.3%を受注しました。車検粗利47千円のうち、基本料金は13千円ですが、残りは整備粗利というわけです。

整備をご注文いただきましたら、日を改めて車を預かり、整備、法定点検、検査を実施します。整備後の写真も必ず撮ります。これをお客様に見せ、整備が完了したことを示し、料金を精算して、お車を引き渡します。これが当社の車検の一般的な流れです。

写真撮影は、リスクヘッジ(危機回避)にも有効です。
かつて、カップ焼きそばの異物混入、いわゆる「ペヤング事件」はSNS投稿から始まりました。メーカーは、社員100名ほどの地方の中小企業ですが、初動対応のまずさもあり、大炎上しました。

その結果、商品の自主回収はもとより、6カ月間にわたる工場停止に追い込まれました。原因不明のまま、工場を大改修し監視センサーを増設するなど、10億円以上を投資したと言われます。
整備において、部品の交換前、交換後の写真を撮ることは、ちょっとした手間ではありますが、作業結果が客観的にチェックできるだけでなく、 お客様からあらぬ嫌疑がかけられることも防いでいるでしょう。

最初は中古車買取から始めた

さて、今回は当社が取り組んできた中古車買取ビジネスについて述べます。きっかけは、国内でのセルフ給油の解禁です。 最初は多くの業界人も「様子見」でしたが、2000年頃には世の中で一般化し始めました。
そこで気になったのが油外販売です。給油客にアテンドしなくなれば、洗車もオイルもタイヤも、声掛けできません。大規模量販店なら、コストカットを徹底すれば、燃料油販売だけで成立するかもしれませんが、同時給油4台、6台、8台程度の中小SSは、どうすればよいのでしょう。

そもそも油外の発生源は、すべて車です。ですから、「もしも車両本体を売れば、油外も買ってくれるに違いない」と考えるようになりました。とは言え、何から手をつけてよいのか分かりません。
今にして思えば、ど素人考えですが、お客様に「車を買いませんか」と言うよりも、「その車を売ってください」と言う方が、ハードルが低いのではないかと考えました。
実績あるコンサルタントが見つかったこともあり、当社は最初、自動車買取ビジネスからスタートしたのです。
ちょうど仲町台店の前面道路を挟んだ向かいの土地が空いたため、そこを借り受け、中古車買取ショップ「車買取館」を開設しました。2002 年のことです。

オープン時に、商圏内に折込広告10万枚、捨て看板600本を投入し大宣伝したところ、初月の買取実績200台。幸先よいスタートです。買い取った車はAA(オート・オークション)に出品します。平均15万円の売買差益が出ます。こうしてたちまち、年間営業利益2,000~3,000万円を稼ぐドル箱事業となりました。

「よしっ、これはイケる。同じ店を出店拡大しよう」というのが当社の常套ですが、そうはなりませんでした。なぜなら、属人的要素がきわめて高い商売だったからです
。定価でモノを売るのとは訳が違う。相場を知り、中古車を査定し、交渉して価格が決まります。とてもSSスタッフにはやらせられないし、第二、第三の店長を育成することもできません。そういうわけで、実に15年間、1店だけの孤軍奮闘を続けました。

時は移り、環境も変わります。販売促進の主流は、WebやSNSに移行しました。ICT (情報通信技術)リテラシーの低い店長は、その時流に乗り遅れました。
何より肝心なのは買取価格です。AAに出品する当社より、直販機能を有するチェーン店の方が高い買取価格を提示するようになりました。

集客で負け、価格で負け。買取台数は月間30台に落ち込みます。もはやこれまで。2020年12月、「車買取館」の組織を解体しました。

路線変更で買取ビジネスが復活

組織は解体しましたが、店は残しました。通行量の多い生活道路に面した好立地で、その後もときどき新規来店があるからです。
店を仲町台店に編入し、パートの店番を置きました。来店があると、連絡を受けた仲町台店のスタッフが道路を渡って駆けつけ、接客します。そこで頭角を現したのは「H君」です。旧「車買取館」で採用された若者ですが、慣れないSS業務に就いていました。

聞けば、「買取館時代は、低迷を打開しようと、店長に繰り返し提言したのですが、一切認めてくれませんでした。閉店の憂き目にあったのが本当に悔しい」とのこと。仲町台店に配属されてからは「今の店長は、聞く耳を持ってくれます。やってみようと任せてくれます」と、水を得た魚のように目を輝かせます。

ジリ貧専業店の店長は、コストに目を奪われ、視野が狭くなりがち。対して、兼業として吸収した側の店長は、なまじ知見のない分野に、客観的な視点で挑戦する余裕があったということでしょうか。
H君の提案は、こうです。
「商品車になるような車を買い取るやり方では、もう勝ち目がありません。むしろ価値のなくなってしまった廃車/不要車に的を絞れば、勝負できます」

さっそく、Webサイトを大改修しました。営業エリアも拡大し、引き取り専用の車両と人を仲町台店に配置しました。多くは1万円程度で買取り、鉄クズとして売却します。競合がないわけではありませんが、対応の丁寧さ、迅速さがH君の持ち味。
1年を経ずして、何と年間3,000万円以上の利益貢献をするようになりました。

2年やって、これなら再び独立店としてやっていけると判断しました。復活させたドル箱部門を手放す仲町台店には泣いてもらいます。H君が店長を務めることとなった再生買取館は、毎年5,000万円を超える営業利益を出しつづけています(グラフ2)。

レッカー事業をやってみた

年間2000台の廃車/不要車を安定的に買い取るまでに蘇った「車買取館」ですが、さらなる成長展開を図っています。
レッカー事業への参入です。
2年前、H君から「レッカー車を買いたい」との申請がありました。すぐOKしましたが、1,600万円もしたのは少し驚きました。納車に1年かかります。

「有償運送業」なる事業免許も必要です。これがなかなかやっかいでしたが、昨年3月、ようやく取得できました。晴れて、緑ナンバーのレッカー車も納入されました。
さぁ、これでどんどん仕事が来るかと言うと、そうではありません。

損保会社に営業しました。その結果、今年1月から、損保会社が委託するロードサービス会社の下請け仕事が来るようになりました。
案件は月100件以上あるのですが、こちらの未熟さやキャパシティ不足から、まだ50件くらいしか受注できません。しかもバッテリーのジャンピングなど、必ずしもレッカー車でなくてよい案件が多い。

平均2時間作業で1万5,000円くらい。レバーレート7,500円。売上は月100万円以下です。

今後、技術や装備を整え、24時間出動を可能にするなど、受け入れ体制を充実していく道はありますが、レッカー事業者として本格参入すべきかどうか、いったん思案中です。

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