インフォメーション
INFORMATION
- INFORMATION
- 油外放浪記 第200回「仕入れた新車はレンタルしてから売る」
2025.07.10
油外放浪記 第200回「仕入れた新車はレンタルしてから売る」
売る仕組みが確立すれば油外は安定的に成長する
いわゆる「トランプ関税」が、国内に、とりわけ自動車関連業界にどのような影響を及ぼすのでしょうか。予測できませんが、
一介の中小企業にとって、今のうちにしっかり稼いでおくことが精一杯の対策でしょう。
当社のSSの4月の実績を(表1) に示します。

営業利益は8店合計で2,500万円。月次最高値を4月も更新しました。販売商品のリベートバックなどで1,000万円の営業外収益もございましたので、経常利益は3,500万円となります。
油外粗利は、10カ月連続して2億円を超えています。サラリと「2億」と言いましたが、初めて油外が1億円を超えたのはつい最近、2018年3月のことです。ようやく車検とレンタカーが確立したと、その嬉しさはまさに狂喜乱舞。今も鮮明に覚えています。
翌2019年度になると、1億円を超えた月は4回。そして2021年度にはすべての月で1億円を超えました。その頃から車販ビジネスが伸び始め、最初に2億円を超えたのは、2022年度の3月です(グラフ1) 。

車検の販売手順を相互チェック、客単価は値上げと整備販売
車検の制度が改正され、2ヵ月前から実施できるようになりました。しかし販促や店頭アプローチは、特段変えていません。入庫台数は前年比155台増の1,238台となりました。
各店から選出された「車検委員」が毎月ミーティングを行なっています。目標と実績を確認しつつ、ロープレなどで正しい販売手順に補正しては、自店に落とし込んでもらっています。それが効果を挙げていると思います。
車検粗利の伸び率が、車検台数の伸び率を上回っているのは、客単価が上がったからです。
車検料金は、➊基本料金、➋法定費用、➌整備費用で構成されます。私たち車検業者がコントロールできるのは➊と➌です。
➊基本料金とは、法定点検や検査、アフターフォローを実施するための手数料です。当社は長らく「1万円」でやってきました。しかし今年2月、1万3,000円に値上げしました。
2023年より車検販売の企画・推進を若い社員たちに任せており、彼らの判断です。もしも私だったら客離れが怖くて、いきなり3,000円も値上げしなかったでしょう。ひとりハラハラ見守ってきましたが、杞憂に終わりました。もう老兵の出る幕ではないのでしょう。
➌整備の販売については、昨年から強化しています。
当社のSSの車検オペレーションは、車検を受注するための整備見積もりは致しません。車検を受注した後、日を改めて点検し、時間をかけて点検結果を報告してから、整備を提案しています。
以前は点検した整備士が、その車両に必要な整備を「足し算方式」で見積提案していました。これを「引き算方式」に改めました。デフォルトで基本整備がラインナップされるよう、見積システムを設定しました。つまり整備士は、その車両に不要なものを削除していくことになります。
これによって提案する整備項目数が増えました。それに比例して、受注項目数が増えます。
車販は小売りの低迷を業販がカバーする
車検とレンタカーは3月に荒稼ぎして、4月は需要が冷えます。相対的に車販が油外のトップに躍り出ました。とは言え、前年割れです。他の2品が2桁の伸びを示す中、見劣りします。
特に小売りが不振です(グラフ2) 。

これをカバーしているのが業販です。4月の業販台数は156台。このうち100台はASネット経由で中古車店に買っていただいています。残る50台は、1年落ちのレンタカーです。AA (オートオークション)に出品し落札されました。
特に1000cc以下の中古車価格が高騰しています。スリランカが1000cc以下の車両の税金を引き下げたことが影響していると聞きます。ちなみにスリランカも旧英領なので、左側走行、右ハンドルが主流です。
きっかけは、コロナで仕事が失われた社員の処遇だった
レンタカーの売却ビジネスについては、前号でも触れました。
経緯を詳しく述べます。
当社は、SSとは別に、北海道、関東、九州の7カ所の空港前にレンタカー専業店を展開しています。しかしコロナ禍の行動制限や入出国制限により、突然、開店休業状態となりました。
7店で5百数十台のレンタカーを保有しています。これを早急に売却したいと、仕事がなくなった7店の社員を本社に集めました。レンタカーの仕事しか知らない者たちでしたが、ためしに「グーネット」に掲載させてみました。原価が回収できればいいと格安に値付けしたこともあるでしょう、あっという間に完売しました。
売ったのはSSです。グーネットを見たユーザーからの問い合わせに対応し、現車を見せると、飛ぶように売れました。
なるほど、中古車検索サイトの威力を初めて思い知りました。そして「このチャネルを使えば、SSで中古車が売れる」と味をしめたわけです。
本社に集めたチームの任務は完了しましたが、そのまま「中古車仕入れ部門」へと組織化しました。AAから中古車を仕入れ、架装し、グーネットやカーセンサーに掲載し、SSに搬送する部門です。
ところがコロナ禍が意外に長引き、中古車市場が停滞しました。AAの出品車両が減り、価格が高騰し、満足に仕入れられません。またしても彼らの仕事は激減しました。
手詰まりとなったわれわれは、「自分たちで中古車を作ったらどうか」という発想に至ります。
空港前店のレンタカーは売却してしまいましたが、SSにはまだ600台のレンタカーがあります。しかしこれを直ちに売ってしまえば、レンタカー収益が減ってしまいます。
何しろSS商圏に存在するレンタカーの生活利用ニーズは、コロナ第一波で少し落ち込みましたが、1カ月で復旧したのです。
そこでまず、レンタカー用に新車を大量に発注します。その納車を待ってからレンタカーを商品車にしていこう。それまでは、少ないながらもAAから仕入れよう、仕入れた車両を一時的に在庫したり、ネット掲載用の写真を撮影したり、架装整備するための場所と設備を整えよう。
・・・というわけで、2020年秋に新車を発注し、2021年秋頃からレンタカーを販売し始めました。
かくして4年。やっていくうちに要領が分かってきました。
(1)レンタカーは春~夏に需要が伸びます。したがって売却に適した時期は秋となります。同時に、春までに次の新車が納車されるよう発注します。
(2)リース車両は販売できません。レンタカーは現金で購入します。
(3)レンタカーとして普通に運用すると、走行距離が意外に伸びてしまい、商品価値が落ちます。そこで運用期間は1年間、走行距離は5万km 未満で売却します。
(4)レンタカーとして稼ぐ車種が、必ずしも商品車として高値で売れる車種ではありません。レンタカー収益と売却益の合計が最大となる車種を見定めます。
(5)レンタカーの鮮度は、常に1~2年で保たれることとなります。メンテナンス費用はかからず、故障もありません。顧客の評判は高まり、リピーターが年々累積するので、田舎のSSでも、増車してすぐユーザーがつくようになりました。
新車1台から80万円の収益
さて、新車をレンタカーとして1年間運用してから売却する方式を、当社では「レンタ&セル(R&S) 」と称しています。約4年間で459台をやってみました。1台あたり平均収支を見てください(表2) 。

187万円で仕入れた車両を、1年間レンタカーとして運用し、粗利は58万円。そして1年落ち走行3万4000km の中古車が生まれます。これをAAに出品すると、169万円で売れました。
何と、仕入れ額の9割です!
売却益は22万円。レンタカー収益と合わせ、80万円が新車1台から生み出されました。投資利回り43%、元本保証のローリスク・超ハイリターンビジネスと見ることができます。
もともと小売り用の中古車が足りず、ほとほと困って始めたわけですが、最近はAAによる業販が主体となりました。日本車の相場が海外市場で高騰しているためか、国内市場も、コロナが終息してなお高値止まり傾向にあります。
なお、中古車仕入れ部門は現在、SSの商品車在庫ならびにレンタカーをコントロールしつつ、年間4,000台の中古車を仕入れ、年間400台の新車を仕入れる「カービジネスセンター」に進化しています。