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2025.05.12
油外放浪記 第199回「既存事業を伸ばして、新規事業に投資する」
3月は大健闘
3月は、車検と車販が需要のピークです。レンタカー需要も高まります。このチャンスを生かすも殺すも、事前の仕込み次第ですが、当社のSSは良く伸びました(表1)。

3月の営業利益は7,380万円。これまでの最高額は、昨年8月の6,670万円でしたが、あっけなく塗り替えてくれました。
当社のSSが営業利益の最高額を更新してきた、これまでの推移を(グラフ1)に示します。

当初は年末に洗車前売り券を叩き売りしたので、12月は毎年のように営業利益が伸びました。
これをやめたのが2004年です。以後2016年まで、記録の更新はありません。その間、店舗数も増え、車検も伸ばしてきましたが、洗車券に及びませんでした。しかし2017年、レンタカーの収益化ノウハウが確立するや、レンタカー需要期である3月や8月は、毎年のように記録更新が続いています。
月間油外粗利5千万円に一番乗りしたSS
3月実績で特筆すべきは、新百合ヶ丘店です。油外粗利が5千万円を超えました。
過去、油外粗利のナンバーワンは、昨年3月に仲町台店がだした4,120万円です。新百合ヶ丘店も同月3,970万円と肉薄したのですが、今年はこれを1千万円以上伸ばすという大躍進です。この伸び幅は、当社史上初の快挙です(グラフ2)。


内訳を見てみましょう(表2)。経費は前年比320万円しか増えていませんので、営業利益は780万円伸びました。全店の営業利益の伸びが2,000万円弱ですから、その4割を新百合ヶ丘店が貢献しました。
新百合ヶ丘店は、神奈川県川崎市にある伊藤忠エネクスのお店です。敷地面積は650坪、同時給油8台のセルフ給油、指定整備工場や鈑金塗装ブースを有します。恵まれたSSだなぁと羨ましく見ていたところ、ある日閉鎖しているではありませんか。それが2020年。
ぜひ当社MICに運営させてほしいと伊藤忠エネクス様に直談判し、2021年2月より晴れて当社が運営させていただくことになりました。
誤算は燃料油販売です。住宅地の生活幹線道路沿いに立地し、近隣に競合店はなく、視認性も良く、間口の広いゲート式レイアウト。・・・にもかかわらず、いまだ月間販売量は180kl。一向に伸びません。
過去何千件とSSのガソリン増販策を手がけてきた私にとって、これは「謎」のままです。
反復来店するお客様が少ないにもかかわらず、車検、車販、レンタカーはよく売れます。整備士5名、鈑金スタッフ3名を配備し、レンタカー160台も良く稼働しました。
もしかすると油外商品を売るのに、ガソリンの集客力は必要ないのではないかと、考えてしまいます。
車検、レンタカーが気を吐くも車販が元気なし
3月の全店実績(表1)に戻ります。

当社が重点販売する車検、車販、レンタカーの状況を見てみましょう。
車検は3月が最大の書き入れ時です。8店で2,165台入庫し、粗利9億3,000万円は快挙です。
基本料金を3,000円値上げしたにも関わらず、台数が前年比10%伸び、粗利が同15%伸びました。
車検キャンペーンを1~3月に実施しました。期間目標5,238台のところ実績5,292台と見事達成。
昨年は達成できなかったので、雪辱を果たしました。スタッフたちへのご褒美は、恒例の箱根温泉旅行です。
レンタカーもよく伸びました。この1年間で132台増車し658台で3月需要に臨みました。増車による経費増は585万円、売上増は1,778万円。3月の利益増に大きく貢献しました。
3月は車販もキャンペーンを実施しました。ご成約客に対し、➊7万円分のオプション追加サービス、➋下取り価格は最低5万円保証(軽自動車は2万円)、➌ローン金利の割引です。
その結果、3月の販売台数は319台。かろうじて前年実績をクリアしました。1店当たり40台です。
ほんの数年前まで当社は、1店当たり月間20台売りたいと足掻いていました。ですから40台は「上出来」とすべきかもしれません。背伸びをすると、大手企業と競り合う機会が増え、そして惨敗します。「分をわきまえよ」と言われている気がします。
しかし伸びを止めれば、社員の給与アップも止まってしまいます。それは困る。
今の目標は月間500台(1店当たり63台)。まだまだ努力が足りないということでしょう。
カーボンニュートラル時代に向かう当社の3方針
さて、前号で予告したとおり、当社はSSや自動車に依拠しない新ビジネスの開発も試行錯誤しています。事のきっかけは、2020年10月の日本政府によるカーボンニュートラル宣言。SSを含むガソリン自動車関連業界は震撼しました。
しかし震えているばかりでは、やがて仕事がなくなり、会社は消滅します。何か行動しなくては、というわけで、私は3つの方針を打ち出しました。
(1)10年間は、既存事業で最大限の利益を得る
年間10億円を利益目標としました。
(2)優秀な人をたくさん採用する
勝ち残るにはやはり「人材」の質・量の充実が不可欠です。待遇や労働環境を改善し、一部上場企業に負けない職場、豊かな人生設計ができる体質をつくります。
(3)脱炭素時代に適した新規事業開発
獲得した利益を投入し、10年以内に年間10億円の営業利益が上がる2~3の事業を育てたい。そうすれば生き残れるでしょう。
ただし、何が良いかは分かりません。とりあえずできるところから、片端からやってみよう。上記(1)(2)の方針に関しては、概ね計画通りに進んでいます(表3)。
ただし急激な組織の拡大に、管理体制が追いつかなくなっています。

軌道に乗り始めた3つの新規事業
そして、(3)新規事業の開発です。まずはSS事業の延長線上にあり、しかしSS内では取り組むことができず、本社に専任組織を作って始めたビジネスがあります。厳密には「脱炭素」とは言えませんが、利益が安定確保できるに至っています。
(a)高年式レンタカーの販売
コロナ禍で中古車市場が冷え込み、なかなか商品車を仕入れられない時期がありました。ならばレンタカーとして仕入れた新車を1年間ほど運用し、自ら中古車を「生産」してみたらどうだろう、という発想で始めたビジネスです。
通常、新車を仕入れて販売すると、販売店には20~30万円ほどの粗利が手に入ります。が、新車をレンタカーとして1年間運用すると、得られる粗利は40~50万円、さらに1年落ちの車両を売って30万円、合計70~80万円の収益が生み出されます。
いわば新車の二毛作。
当社ではこれを「レンタ&セル(R&S)」と呼んでいます。これまでに400台以上でやってみて、事業性は十分にありそうです。
ポイントは、まずレンタカーをやっている店にしかできません。そしてレンタカーとしてしっかり稼ぎ、中古車としても値下がりしにくい車種を選定すること、タイミングよく発注し、売却することです。
(b)新車リースの通信販売
当社のSSでは、すっかり中古車販売が主流となり、新車リースの取扱量は年間120台程度に落ち込んでいます。しかしホームページからの問い合わせは、全国からあります。
そこで電話やLINEで対応・商談し、成約する組織を本社内に立ち上げました。書類は郵送で、納車は各地カーディーラーに委託します。
最初は月間2~5台でしたが、最近は200台近くを無店舗販売するに至っています。ただしこれは難易度が高く、Webコンバージョンを高める工夫、これを受けるコールセンターの設置、カーディーラーやリース会社との連携などが必要です。
労働集約型ビジネスですので、販売台数は販売員数とリンクします。年間粗利は7~10億円となりましたが、販促費や人件費がかかり、利益は1億円程度です。ただ、このやり方が確立すれば、新車リースに限らず、あらゆる商材の通販に適用できると期待しています。
(c)自動車保険の通信販売
かつてはSSの車販担当者に保険を売ってもらおうと、かなりの時間と労力を割いてきました。しかし新規契約数は月間30~50件で頭打ち。そこで車両を購入していただいたお客様に対し、試しに本社の事務スタッフが電話セールスしてみたところ、初月に100件成約しました。これはイケると専任組織をつくり、人を採用育成しました。今は年間3,000件の自動車保険を新規獲得しています。
EV時代でも自動車保険は存続します。何年かかるか分かりませんが、累計契約数が5万件を超えれば、毎月の保険料収入も相当なものになるでしょう。なお保険契約客から発生する、鈑金、整備、買い替えといった関連ニーズの囲い込みにも、着手し始めました。
無惨に散った新規事業
さて、ここからは、SSとはまったく関係ない事業です。 ダボハゼのごとく試しては、当社ではうまくいかず撤退した、死屍累々をご紹介いたします。
(d)経営者向け生命保険の法人開拓
個人経営の生保代理店と提携し、当社が見込み客を開拓しては送客し、営業手数料を得るというものです。半年間やってみましたが、実績ゼロ。その間の投資額は500万円ほどでした。
(e)まごころサポートFC
シニアの暮らしをサポートするフランチャイズに加盟。SSの地域ニーズを広く深く拾い上げることができれば、将来性のあるビジネスとなるに違いありません。ただ任命した担当者が、推進を投げ出し退職し、立ち消えとなりました。加盟金などで約1,000万円を出費しました。
(f)スマホ修理ショップのFC
iPhoneを修理するフランチャイズに加盟。仲町台店の近くの駅前ビルにテナントを借り、3名を配備してやってみました。当初のFC本部の試算は月収50万円でしたが、100万円に成長しました。ところが人件費と設備費に200万円かかります。まごころサポートと兼業することにより黒字化を目論んだのですが、それが叶わず1年で撤退。店舗費や累積赤字で3,000万円の出費。
(g)リペア保険
リース車両の事故修理費用を補償する少額短期保険なるものが新登場したとのニュースに接し、いち早く代理店契約をしました。全国のレンタカーがターゲットとなると思ったからです。
まずは自社のレンタカーで契約しました。車両保険料が安くなったのはいいですが、初年度に想定以上の事故が発生してしまい、2年目の保険料が大幅に上がってしまいました。このため1年で販売終了。資金の持ち出しはありません。
これらは必ずしも、ビジネスモデル自体に問題があったわけではないと思います。
社員を、既存の業務から完全に足を洗わせないまま、未経験の仕事に徒手空拳のまま担当させ、想定外の事態に遭遇してはへこたれ、放置し、かと言って経営者自身も報告を聞くだけで本腰を入れず任せっぱなし…という状況が招いた失敗です。
ほかにも、インドアゴルフ練習場の経営など、立ち上げ中の事業もあります。この反省を踏まえ、取り組んでいきます。