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2024.12.27

代表コラム

油外放浪記 第194回「レンタカーは車、車販は人」

「油外粗利2億円」が常態化

ようやく秋の風が吹き始めた10月、当社のSSスタッフも気概が横溢(おういつ)したでしょうか。
営業利益は8店合計で前年比700万円増加し、3,400万円となりました(表1) 。

燃料油は販売量、口銭ともに落ち込みましたが、油外粗利が3,000万円増加し2億円超。8店とも見た目はガソリンスタンドですが、燃料油の収益貢献度は1割くらいです。

燃料指数はマイナス8.6。最近あまり聞かない指標です。
「V指数」「損益分岐燃料油口銭」とも言いますが、これがマイナスということは、ガソリンマージンがマイナスでも戦える競争力があるということです。

昔のガソリン乱戦時代、血気盛んだった頃の私だったら、安売り大増販キャンペーンでもやろうかと、頭をよぎったかもしれません。

車販が油外を牽引した

先月号の本稿で、油外粗利が前年実績を「24カ月連続」オーバーしています、と書きましたが、間違いでした。 担当者から指摘があり、正しくは「53カ月連続」です。コロナ禍が始まった2020年6月から続いています。

最初の緊急事態宣言が発布された2020年4月、レンタカーが落ち込んでしまい、連続更新記録はいったん途絶えました。
しかし、わずか2カ月間で復旧したのは、レンタカーを日常利用してくださるお客様に支えられたからです。

一方で、当社は、SSとは別に、観光需要を主ターゲットとした空港前レンタカー専業店を6カ所運営していました。これが壊滅しました。
しかし、捨てる神あれば拾う神あり、閑古鳥鳴く空港前店の余った人材を集め、余った車を販売するための組織をつくったところ、SSの中古車販売支援部門として育ち、確立しました。
こうして車販がSS油外を牽引するようになり、月間ギネス記録を連続更新しているというわけです。

グラフ1で2020年と2024年の油外収益を比較しました。4年間で概ね1億円が上積みされ、2憶円を超えるようになりました。

EVレンタカーをやってみた

レンタカーは店の販売力とは無縁のビジネスです。管理者がニーズのある車両を見極め、これを必要台数配置するだけで、車が稼いでくれます。
当社のSSはレンタカーを手がけて16年経過しますが、いまだ伸び続けており、安定収益をもたらしてくれています。将来、もしもカーボンニュートラル時代が本格到来し、自動車の仕様、動力源、流通構造などが様変わりしたとしても、レンタカーニーズが衰えることはありません。時代に合った自動車を用意するだけです。

そこで当社は、EVニーズの確認とその運用ノウハウの蓄積を目的に、昨年2月よりEVレンタカーを実験しました。その結果をお伝えします。

実験期間:2023年2月~2024年10月
実験店:仲町台店
実験車両:日産サクラ、日産リーフ 各1台
レンタル料金(表2)
ガソリンレンタカーとほぼ同 等の料金設定としました。

平均実績(表3)
サクラ、リーフともに月5万円台しか売り上げられず、赤字でした。メディアが大騒ぎするほど、EV利用はまだ一般的ではありません。

利用目的(グラフ2)
ガソリンレンタカーとの目立った差異は見られません。
満足度(グラフ3)
ガソリンレンタカーとの目立った差異は見られません。

なお実験期間中、車両の不備による事故・故障はありませんでした。少なくとも5年以上運用しなければ、車両の劣化は確認できないでしょう。

付け焼き刃の販促で車販は踊らない

次に車販です。
年間3,000台以上を販売する当社のSSですが、販売においても、EVが売れたことは1台もありません。
それはそうとして、車販担当者へのインセンティブを止めた途端、販売台数の伸びが止まったことを、先月号で述べました。特定の個人に利益供与すると、SS内に不協和音が生じます。

そこで急遽、10月の実績底上げを狙い、ユーザーインセンティブを企画してみました。
成約したお客様には、10万円相当の特典(カーナビ、ETC、希望ナンバーなど)を付与しますとアピールしました。しかし全く効果が出ません(表4)。
やはり苦し紛れのの思いつき販促はダメでした。「人のマネジメント」の問題から目を逸らして、車販はうまくいきません。

平塚SSで自動車販売を一通りやってきた

そもそも当社が車販に取り組み始めたのは、2004年12月です。
神奈川県平塚市の郊外のSSを運営継承したのですが、田畑が広がるエリアにポツンとある、リフト室もセールスルームも狭い貧弱な店でした。この店で車を販売してみよう、車が売れれば、そこから生じる油外ニーズを根こそぎ獲得できるに違いない。そう考え、当時SS業界で主流になりかけていた「オークションダイレクト」方式を採用しました。車両在庫を持たず、オートオークション(AA)から落札代行するというやり方です。

しかし、現物がないものを売るのは、やはり困難でした。高度な商談テクニックを持つ店長が頑張って月5台。そのやり方を何とか標準化し、他の店でもできるようにしたいと、実に10年もの間、努力に努力を重ねましたが、モノになりません。外部のコンサルタントも起用しました。「商品車の在庫を持ちなさい」と当たり前のことを言われました。

「1店当たり月20台以上」が当時の販売目標でしたから、やれることば全部やってみたい。そこで各店店長に尋ねました。「SSの隣地で、中古車を展示できる場所がないか」と。すると平塚店の隣地の地主がOKと言ってくれました。
200坪の農地です。農地転用申請などいくつかのハードルがありましたが、2014年、晴れて中古車展示場を開設。以来2年間、コンサルタントの指導を仰ぎました。

さっそく展示場一杯50台の在庫を仕入れ、新聞折り込みやネットで大々的に告知し続けました。 なるほど、車を求めるお客様が次々来店してくれます。
現車を見せると「買う」「買わない」をはっきり意思表示してくれます。2年後には月間販売20台を超えました。
しかし販促費も膨れました。20台ぽっちの販売では賄えません。さらに良くないことに、長期在庫(不良在庫)が次第に足枷となってきました。

これを抜本的に改善したのが、先に述べた「中古車販売支援部門」です。
2020年のコロナ禍で、大量のレンタカー在庫を即売したことがきっかけとなり、集客はグーネットやカーセンサーに任せます。彼らが平塚当地の売れ筋車両を分析し、 AAから仕入れ、ネットに掲載し、在庫の回転率をコントロールします。

SSの車販担当者は、問い合わせ対応と販売業務に集中します。こうして平塚店の車販は月50台となりました(グラフ4)。

在庫は常時150台。展示場だけでは足りませんので、駐車場を別に借りています。参考までに、中古車展示場を持たない仲町台店の車販台数の推移を(グラフ5)に示します。

新車リースも在庫を持たずに売れるので、最初は良かったのですが、たちまち競合激化。賞味期間は3年間だけでした。そのあとは平塚店と同様、支援部門が中古車を仕入れ在庫管理をするようになりました。
そうすると、隣接地に展示場がなくとも、月30台くらいはSSで売れることが分かります。

SSと車販との相性は意外と良いのかもしれない

さて、平塚店は「中古車展示場が併設」という優位性があるので、他店より車販実績を伸ばせる筈です。販売台数を70台/月に押し上げたいと考えました。
そこで今年6月からSSと切り分け、独立採算「車販専門店」としました。名づけて「ニコモ湘南」。
燃料、車検、整備 、レンタカーといった雑多な業務で曖昧になっていた責任を明確にし、車販担当者が本気で集中できる環境をつくれば、もっと伸びるに違いないと考えたわけです。

ところが何と、パフォーマンスが落ちてしまいました(グラフ6)。

2024年5月までは前年実績を大きく上回っていたのですが、独立専門店となった6月以降は、前年実績を下回り始めています。SSの方も油外販売がシンプルになり、車検やレンタカーが大きく伸びるかと期待したのですが、かろうじて前年並みを維持しているにすぎません。
「 SSとの兼業車販」だったからシナジー効果が発揮されていたのに、その逆をやったので、シナジー効果が失われたということなのでしょうか。確かに販売した車の車検を、SSで引き受けるなどといった、相互の協力態勢も弱体化したように感じます。

一般に「中古車販売店は、販売目標の3倍の在庫を持て」と言われます。70台売るには210台の商品車在庫が必要です。まだ結論を出すには時期尚早かもしれませんが、人、設備、組織を抜本的に見直す必要がありそうです。

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