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2023.12.11

代表コラム

油外放浪記 第182回「快進撃に急ブレーキをかけた時短策 一方、車販はアルバイトの戦略化を試す」

当社の第38期はまずまずのスタート

今年は、夏が終わらないのではないかと思うくらい、残暑が長引きました。当社は夏の間、SSスタッフに対して、ポカリスエットや麦茶を無制限に支給しています。
例年その費用は200万円くらいですが、今年は何と450万円かかりました。熱中症などの事故が発生しなかったのが幸いです。

さて、当社のSSは、前期(第37期)は、3.6億円の営業利益を目指したにもかかわらず、2.6億円にとどまり惨敗しました。7月から始まった 今期(第38期)は、その雪辱を果たさんと奮起しています。
その第1四半期(7~9月)の実績がまとまりました(表1)。

営業利益の目標は1億円ですが、実績は1.17億円。まずまずのスタートです。
燃料油は、販売量がやや増加し、口銭は計画の2倍を得ることができました。油外商品では、レンタカーが計画値を大きく上回りました。車検と車販は、計画には及びませんでしたが、前年実績はクリアしています。

そして、今期は経費のコントロールに注力しています。前期は予算を1.3億円もオーバーしてしまい、これが目標未達の大きな要因となりました。
そこで、前期から就任した新営業部長が、きめ細かな経費管理を実施しています。やれ「残業するな、させるな」、やれ「従業員の通勤交通費を洗い直せ」、やれ「代車のガソリン代の精算を徹底せよ」・・・。
数字を見る限り、経費のコントロールは今のところうまくいっているように見えます。

10月実績も好調だが不安要素あり

そして、10月から第2四半期が始まっています。10月の実績を(表2)に示します。

前年と比較すると、粗利は1,570万円増加し、経費が1,390万円増。したがって、営業利益は180万円増加して2,000万円。10月としては過去最高利益です。

しかし、手放しで喜ぶことはできません。
まず、粗利増加分のうち、4割以上を燃料油が占めます。150kl減販したにもかかわらず、口銭が11.6円もあったからです。ありがたいことですが、これは意図して稼ぎ出した収益ではありません。一時的なバブルです。

もう一つの懸念点は、行き過ぎた経費コントロールです。

時短をしたら、燃料油とレンタカーに大打撃

当社は社員の給与に対し、あらかじめ20時間分の残業代を含めています。それでもなお、20時間以上の残業をするスタッフが多数存在します。
この残業手当を物理的に削減するために、10月から一斉に営業時間を短縮しました。閉店時間を1時間早めたのです(表3)。

社員の給与が確定するまで、いま少し時間がかかりますが、少なくともアルバイト人件費の削減効果は、月間135万円です。
さて、どうなることか。期待と不安が半々の気持ちで様子をみることにしました。予想通り、燃料油販売量が減少しました。7~9月は前年比 101%と増販基調でしたが(表1)、10月は96%と減販しました(表2)。

営業時間を93%に短縮したほどには減販しなかった、とも言えますが、もしも時短しなければ、燃料油粗利は推定181万円。実に、燃料油だけで182万円を失いました。

油外はどうでしょう。7~9月は月間2,000万円の増収基調にありました。しかし、10月は900万円の増収に留まりました。特にレンタカー収益が300万円以上も前年割れしたのは衝撃です。
ニコニコレンタカーFCの全体実績では、10月は前年比114%の伸びを示しています。当社のSSだけ、急ブレーキがかかってしまいました。

当社は今期も増車しましたので、(表1)を見る限り前年比120%成長していたのです。もしも時短しなければ、5,200万円を得られたかもしれません。時短によって、1,000万円以上のレンタカー収益を失ってしまったと推定されます(グラフ1)。

逆もまた真なり。

レンタカーを営業するSSは、レンタカーの営業時間を1時間伸ばせば、(増車しなくても)売り上げが2割以上伸びるということです。このために必要な人件費は、「アルバイト2人×1H×時給1,200円×30日」イコール72,000円だけです。

あらためて顧客は、SSレンタカー業に対して、「利便性」を強く求めていると感じます。
旅行観光目的のお客様ならば、ある程度「お店の都合」に合わせ、何日も前から計画し予約してくれます。
しかし、地域の日常利用のお客様は、思い立ったときに利用します。ですから、「自分の都合」に合わせてくれる店を求めます。

車販はアルバイトにさせられないと誰が決めた?

営業時間を短縮しても影響がないのが車販です。早朝や夜中に車を買うお客様はあまりいません。概ね、こちらが希望した日時に来店していただけます。10月は前年より65台増しの270台を販売しました。

「車販は高度なスキルが必要だから、能力の高い人間に3~5年の経験を積ませないといけない」との勝手な思い込みが覆されたことを、前々回で述べました。
10月も販売台数ベスト5は、すべて入社1年未満の新人たち。うち2人は女性です。

性格が明朗で、ガッツのある若者に自動車販売の基本教育を施せば、半年もしないうちに月20台前後を販売するようになります。
そう考えると、長期雇用を前提とした正社員でなくとも、つまりアルバイトでも、車販ビジネスが成立するかもしれません。

もちろん、経験の浅い新人ならではの弱点はあります。それは、下取り査定が未熟であること。したがって、車を売ったお客様から下取り契約できる比率が低くなります。当社の新人は、車販粗利が1台当たり2~3万円低くなっていますが、許容範囲でしょう。
今思えば、車検はすでに、何年も前からアルバイトが販売戦力の中心になっています。車検は社員でなければ売れない、整備士でなければ売れない、とお考えのSS事業者様はもういないでしょう。

車販も同じかもしれません。私たちの勝手な思い込みが、車販ビジネスを阻害している可能性に気づきます。

SSの採用環境が年々厳しくなっている

—と申しますのも、車販を担当してくれる社員の採用が、実に困難を極めているからです。
整備士や鈑金塗装技術者なら、経験者を募集すれば、ほぼ期待通りに採用できますし、期待通りの働きをしてくれます。すぐに辞めることも、まずありません。

ところが、車販担当者の採用となると、まったく事情が異なります。そもそも世の中に、SSでの車販経験者がいません。カネ太鼓を打ち鳴らして募集して、たまに「前職のSSで車販を担当していました」という方がやって来ますが、月間5台の販売実績で天狗になっているような者では、話になりません。

カーディーラー経験者は、SSをバカにしているのか、ほとんど応募がありませんし、応募があっても仕事のフィールドがまったく異なるため使えません。昔からSSは「3K職場」と言われ、優秀な人材がなかなか来てくれない職場でした。

それでも1995年に当社が初めてSS(仲町台店)を出店したときは、同時給油8台のフルサービスSSで、ガソリン量販を目指しましたから、大々的に募集した結果、100名を超えるアルバイトが採用できました。

「三度のメシよりクルマが好き」という若者が、当時はたくさんいたのです。とは言え、100人もいると、色恋沙汰があちこちで発生し、それはそれで大変でした。

あれから30年。世の中からクルマ好きがいなくなりました。
ガソリン販売店は「先行きがない」「環境悪化の手先」と見られるようになりました。
当社のSSは、前期に1,000万円かけて50名の社員を採用しました。しかし3カ月以内に3割が離職。つまり、1人採用するのに30万円近くかかっています。

その中の一人、今春大学を卒業して、初めての勤務がSSだという初々しい新人が、奇跡的にも当社に入社してくれました。
希望職種は一番の花形である車販。元気いっぱい、好奇心旺盛で、みんなから可愛がれ、4カ月目には20台を販売。「期待の星と、 誰もが注目しました。

ところがその翌月、突然「辞めたい」と申し出てきたのです。
聞けば、夏休みに里帰りしたとき、地元の友達と旧交を温めたところ、全員から反対されたとのこと。「ガソスタ?」「アホちゃうか」「すぐやめろ」「真面目に将来を考えろ」と。

社員登用を前提としたアルバイト採用作戦

そこで方針を変えます。
アルバイトの方が、まだ採用のハードルが低い。そこでまず、アルバイトの応募者をたくさん集めよう。そして、採用の段階で、明るく元気でSS向きの、1年以上働いてくれそうな人を選り分けよう。

採用したら、社員と同じように育成し、車検販売や自動車販売を担当させよう。半年で一人前になるなら、十分に採算に合うはずだ 。
そして、モノになりそうな者が出てきたら、本部の採用担当者がスカウト。社員にならないかと、真剣に時間をかけて口説き落とします。

SSの仕事をよく知り、諸先輩の活躍を間近で見て、当社の将来ビジョンを聞かされてきた者なら、社員になって3カ月で辞めることはないだろう。
実際、現在活躍しているスタッフの多くは、アルバイト上がりです。これを組織ぐるみで狙います。

アルバイト争奪戦は時給勝負

ところが現実は、アルバイトの採用さえままならない状況です。ましてや「選別する」など夢のまた夢。
どうしたものかと悩んでいたところ、大型スーパーのコストコの募集方法を耳にしました。時給1,500円でアルバイトを募集したところ、新設店数百人の採用枠に対し、数千人の応募者が集まったというではないですか。

時給1,500円で大量の応募が来るのなら、しっかり選別できます。このうち何割が社員並みの力を発揮するようになり、何割が社員になってくれるだろうか。まずはアルバイト不足が深刻な、当社の新百合ヶ丘店で試してみよう。1,400~1,500円で新規募集します。

もちろん既存アルバイトもベースアップします。今の平均時給は1,200円ですから、一律250円のベースアップ。これによる人件費の上昇は月に50万円。車検販売なら12台、車販なら3台、レンタカーなら貸し出し50回で回収できる経費です。

10月17日から募集を開始しました。本稿執筆時点ではまだ結果が出ていませんが、応募数は従来の7倍に増えていると報告を受けています。

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