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増田信夫の油外放浪記  MIC社長増田信夫 第97回 油外収益で総経費をカバーするSSづくりへの挑戦!

油外放浪の旅はここから始まった

私が初めてSSという実店舗を運営したのが1995年のこと。
当初から「油外収益だけで総経費を賄うSSを創ってやるぞ」と意気込みました。安定的に燃料指数がマイナスとなるSSづくりが目標です。「オートバックスやタイヤ館などは、油外収益だけで成り立っている。SSでできないはずがないじゃないか」と考えたわけです。

ところが多くの先輩たちから諭されたものです。「それは構造的に無理だよ、なぜなら…」ともっともらしい理由が述べられました。
実際やってみて思い知りました。何しろ店舗敷地のほとんどを燃料油関連が占めます。油外販売や作業のためのスペースは限られ、目立たない場所でひっそりやらざるを得ません。ほとんどの経費は、燃料油関連の設備費と給油人件費で占められます。

当社の第1号店である仲町台店は、360坪の敷地に同時8台の給油設備を持ちながら、油外設備はリフト1基、洗車機1台、駐車場1台。毎月2000万円もの経費をどうすれば油外で賄えるか、思案投げ首の毎日でした。

お手本はどこにもありません。何を売ればいいのか、誰も教えてくれません。教科書もありません。仕方なく自分たちで試行錯誤を繰り返すほかありません。
まさに本稿タイトルどおり「油外放浪」の旅に出たわけです。

苦節20年、夢が現実に

仲町台SSがオープンした、1995年は、規制緩和(「改正車両法」の施行) により、SS業界にも車検の門戸が開かれた年です。当社はいち早く車検を取り入れました。洗車も研究を重ね、当初は車検と洗車に注力しました。
しかし、早々に洗車をあきらめました。あまりにも労働集約的要素が大きい。天候やマネジメントにも大きく左右されることが分かり、「油外の柱にはなりにくい」と判断しました。

「車検」は死に物狂いで追求しました。他の油外に比べ、格段に生産性が高いからです。
その甲斐あって、車検需要期である3月を筆頭に、SSによっては燃料指数がマイナスとなる月がときどき発生するようになりました。しかし、通年で見ると、油外が1SS当たり平均400万円くらい足りません。

次に重点化したのは「車販」です。
中古車の無在庫販売から始めました。ところがスタッフを育成し、なかなか各SSに配備することができません。難度の高い販売スキルを発揮できるスタッフは限られるからです。
そこで「車販専任チーム」をつくり横断的に活動させてみました。それでも1SS当たり月10台くらいの販売が限界です。それ以上売ろうとするほど、「車販専任チーム」のコストは膨れ上がり、生産性が悪化してしまいます。

結局チームは解散せざるを得ず、車販収益は元の木阿弥に戻ってしまいました。
ところが車販の「副産物」が思わず開花しました。下取りしたり不要車として「買い取った車の再利用に」・・・とレンタカーを始めたわけですが、これが爆発的にヒットしました。
店頭で販売努力をしなくても、1SS当たり200~300万円の収益を簡単にもたらしてくれます。今や1400店以上のフランチャイズ店の収益を支えるビッグマーケットに成長しました。

こうして「車検」と「レンタカー」の油外2本柱ができました。目下そのさらなる強化を図っていますが、「車販」もモノにしたいという思いはずっと持ち続けていました。

中古車リースを開発したり、中古車の在庫販売を試したりしましたが、昨年末に始めた新車リースが大ヒットの兆候を呈しています。
そして今年、「油外収益だけで総経費を賄う」という夢が実現しそうだと気づきました。

(グラフ1)を見てください。当社SSの油外収益と総経費の月間平均値の推移です(2016年は1~9月までの平均)。そして、(グラフ2)は燃料指数の推移です。


今年は車検需要期の3月と9月、レンタカー需要期の7~9月に大きく稼ぎ、さらに新車リースが各SSで軌道に乗ったのが効いたのでしょう。

(グラフ1) と(グラフ2) に記した以外でも様々な施策を行ってきました。
まさに苦節20年。万感の思いがこみ上げ、数表からしばし目が離せませんでした。

コスト以上に稼げばいい

    

(表1) は、当社SSの9月の平均実績です。前年と比べ燃料油収益が190万円も減少しましたが、油外収益は300万円以上改善しました。1SS当たり平均油外収益は1260万円です。昔は、油外収益が1000万円を超えるのは12月だけでしたが、今はほぼ毎月超えます。

収益構成比を(グラフ3) に示します。燃料油はわずか6%で、94%が油外です。「油外様様」です。いや、「油外」と呼ぶのさえ失礼です。もしこれを「油外」と呼ぶのなら、燃料油は「油外外」です。

冗談はさておき、(グラフ3)をみても明らかな通り、当社SSの油外の中心は、「車検」「車販」「レンタカー」です。

いずれも商圏内に告知すれば、お客様の方から求めてくれる商品です。車販も新車リースを扱い始めてから、広告宣伝に反応してくれるお客様は後を絶ちません。

ですから、販売にかかる人件費はピンポイントで投入すればいいし、サービスの提供(作業)にかかる人件費も十分に賄えます。車検はレバーレート(整備·作業工賃の指数)の高い商品ですし、車販やレンタカーは車自体が付加価値の多くを稼いでくれます(表2)

経費の削減には限界があります。しかし、人件費や販促費を増やしてもそれ以上に油外収益が増大する商品は、売れば売るほど人件費効率が改善します。
この理屈が分かっていながら、実現できるまでに多くの歳月と試行錯誤を要しました。
もしも今、この方針に共感し実践してみようと思われる方がいるなら、もっと手早く効率的に実現できるでしょう。ぜひ当社の紆余曲折を参考にしていただきたいとの思いから、この連載を続けています。

ただし並ならぬ決意、くじけない心が、経営者には絶対に必要です。SSという特異な条件下にあって、そのハンデをクリアし、さらにはハンデを逆手にとる姿勢をぜひ貫いてください。

ニコニコステーションヘ展開していく

今後、「当社のSS」1店舗当たり年間営業利益を5000万円にしたいと考えています。
そのためには「車」ではなく、これを運転する「人」にフォーカスしたビジネスモデルの構築が課題になると考えています。
「生涯顧客」とか「ロイヤルカスタマー」と言われますが、車を媒介としていつまでも取引が継続し発展するお客様づくりがテーマです。

私の自宅の近所にN電化という、街の電気屋さんがあります。何かあると、いつでもすぐ来てくれます。完全修理はできなくても、当面の代案解決策を示してくれます。製品の価格こそ、ネット通販や量販店に比べると高いですが、アフターサービスまで含めると、私は高いとは思いません。個人的に重宝しています。

翻って、わがビジネスを考えてみます。車を売るのは誰でもできます。でも、車に乗るのは生身の人間、感情のある人間です。その人間が本当に必要とする時、当社は何ができるのか?即対応できるのか?

人は、車や整備を求めているわけではありません。いつでも自由に好きなところへ移動できる生活、すなわち「カーライフ」を求めています。
そう考えると「カーライフ・ワンストップ・ソリューションストア」というショップコンセプトが浮かびます。

この業態を私は「ニコニコステーション」と称しています。
その戦略はこうです。ガソリン、車検、鈑金、車販を軸にお客様を集客します。そして、大事にしたいお客様(ロイヤルカスタマー)を選別し、囲い込みます。
このロイヤルカスタマーには価格の優遇だけでなく、手厚い店頭サービス、訪問サービスを提供し、電話、DM(ダイレクトメール)、Eメールでコミュニケーションを図り、相互関係を強化します。

つまり「車」はきっかけに過ぎません。車関連にとどまらず、生活全般をとらえたサービスを構築したいと考えています。


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