情報サービス・出版物

  1. トップページ
  2. 情報サービス・出版物
  3. 増田信夫の油外放浪記一覧
  4. 油外放浪記記事

増田信夫の油外放浪記  MIC社長増田信夫 第96回 SSレンタカーもパラダイムシフトの時機か?

レンタカーがV字回復

俗に「ニッパチ」と言われますが、例年2月と8月は油外販売が低迷する時期です。しかし当社は8月が「書き入れ時」です。

5箇所のSS合計で、油外粗利が6500万円、営業利益は1200万円、燃料指数はマイナス5.3です(表1)。

いずれも前年より大きく改善していますが、その主力は車検、車販、レンタカーです。


伸長著しいのは仲町台SSです(表2)。昨年夏にセルフ化改造するもしばらく低迷していましたが、今年の8月は営業利益400万円弱、燃料指数はマイナス5.5です。

前年同月よりも車検が160万円、車販が200万円、レンタカーは何と350万円アップしました。





グラフ1は、仲町台SSのレンタカー売り上げの推移です。

8月はレンタカー需要が1年で最高潮を迎える時期です。レンタカービジネスを始めて以来、年々増加していましたが、600万円に達した途端、2年連続で急速ダウン。それが今年はV字回復です。





8月だけではありません。実は今年2月から、月別過去最高ギネス記録を出し続けています。今回は、その顛末を綴ります。

放置すれば凋落する

仲町台SSのレンタカービジネスの凋落は、2012年10月に始まりました。
前年割れを起こしたのです。それ以降、2016年1月までほぼ毎月のように前年割れです。ニコニコレンタカーを開発し世に送り出した私としては、恥ずかしくて公言できませんでしたが、内心、地団駄を踏む思いでした。

その原因を以下に分析します。

①経営者の興味が他に移ってしまった
レンタカー収益が月300万円を超え始めると、360坪のSS店内は、出発・帰着のレンタカー車両が集中して、本業に支障をきたすこともしばしば。
つまり、レンタカー需要の拡大と裏腹に、供給量の限界を迎えます。

「SSレンタカーはこの辺りが限界かな、もうレンタカーでこれ以上の収益増は望めないぞ」と社長の私自身が思ってしまいました。そこで2012年秋から、私の意識は車検の底上げに向きました。翌年の年初から「車検を年間8000台獲るぞ」と宣言し、車検倍増プロジェクトを立ち上げ、3年間かけて達成しました。

次に躍起になったのが車販です。「SSで実施できる新しい車販スタイルの確立」を目指し、試しにやってみた個人向けオートリースがSS車販全体をブレイクさせるきっかけになったことは、本稿でも述べてきたとおりです。このように、社長自身が「愛情」を車検や車販に注いできたため、レンタカーはグレてしまいました。

②評価対象外だったSS
スタッフの評価は、やはり油外商品の販売数量が基本です。レンタカーはお客様が勝手に予約してくれますので、評価対象になっていませんでした。
するとどうなるか?レンタカー業務は未熟なスタッフに押し付けられます。未熟なスタッフが、接客、清掃、メンテナンスなどの業務を行います。いくら頑張っても評価されませんから、嫌々やります。そのサービスレベルは推して知るべし。
誰も車両を管理しないので、車両の品質もどんどん劣化しました。

③スーパーバイザーの不在
ニコニコレンタカーは、ユーザーアンケートの調査結果が社長にもダイレクトに届く仕組みになっています。ですから、私も問題が存在していることは分かっていましたし、店長会議などで厳しく叱ってきました。

ところが店長たちは馬耳東風だったのです。月1回の社長の怒鳴り声に俯いて首をすくめていれば済む問題にすぎませんでした。誰かが社長の指示を具体化し指導し、実行するまで見届けなければ、店長たちは行動しません。

すなわち、SS店長の統括権限を持つ中間管理職が当社に欠如していたのです。恥の上塗りの話があります。レンタカーサービスを担当していたあるアルバイトが、あろうことか、お客様に「こんなボロ車、よく借りますね」と言い放つのです。ユーザーアンケートで判明しました。
「すぐ外せ!」と言いましたが、しばらくすると別のお客様からまた同様のアンケートが届きます。

「何で彼がまだ働いているんだ!」と激昂すると「いや実は、土・日の早朝のレンタカー繁忙時間帯にシフトに入ってくれる貴重な人材なので…」と言い訳を始めます。さすがに私も堪忍袋の緒が切れ、直ちに当該スタッフを解任しました。

昨年後半からレンタカーの改善に着手しました。スーパーバイザーを任命しました。
さらに各SSの主要スタッフをレンタカー委員に任命しました。委員会を毎月開催し、ユーザーアンケートには即対応して、不満の多い車両はすべて入れ替え、万全の整備を施し、ピカピカに磨き上げました。

評価基準も変えました。
まず店長の評価は、店の営業利益に直結させました。すると、販売マネジメントをしなくても売れるレンタカーの有り難みを、店長たちは今さらのように実感するようになりました。
次いで、スタッフの評価を、店長に一任することにしました。
すると、打算や損得抜きで、誰もが店長の指示に素直に従うようになりました。

CSは売り上げに直結する

とにかく「CS」(顧客満足)の改善を一貫してやってきました。
CSと言うと、何か精神論的な抽象概念ととらえられがちですが、これほどダイレクトに利益改善に貢献するのだなということを改めて思い知らされました。
当店だけではありません。
私はニコニコレンタカーのFC本部の会長でもあるので、全国1400店のCSレベルを把握できる立場にあります。CSの高い店は、例外なく高収益です。

CS改善の第一歩は、お客様の本音を吸い上げることでしょう。そうすれば、何を改善すればよいのかはっきりします。「見て見ぬ振り」はいけません。叱り飛ばすだけでも変わりません。

当社は遅まきながら、CSを改善するための組織をつくり、権限を与えました。一時は40%台に落ち込んでいた顧客満足度ですが、今ようやく70%くらいに改善しました(グラフ2)。
目標の80%に達するまで、あと一息です。

   

「SSレンタカーは中古車」に固執しすぎたかと反省

さて、レンタカーのCSを考えるうえで、最近痛切に感じていることがあります。
SS業界でのレンタカービジネスは、2009年頃にスタートしました。当時は「格安レンタカー」として既存市場に切り込んだわけです。

「格安」を実現するためには、中古車を使おう。きちんと整備し清掃すれば、国産車の品質なら問題ないだろう。
そもそも「お客様から下取りしたり不要車として買い取った中古車を、何とか有効活用したい」との思いから、当社のレンタカービジネスは始まったのです。

果たして、この「格安レンタカー」に、あらゆるマスコミが賞賛し、多くのユーザーが支持してくれました。それが今日のSSレンタカー新市場の発展につながっているわけです。

あれから8年が経ちました。相変わらず高評価のお客様が圧倒的に多いですが、市場規模が大きくなるにつれ、ニコニコレンタカーのFCネットワークの中だけでも不満を発するお客様の声が無視できなくなってきました。

接客に対する不満は、業務の標準化、教育・管理の徹底や評価基準で解決できます。セールスをしなくていいので、接客はきわめてシンプルです。

問題は車両品質に対する不満です。いかに丁寧に作られた日本車と言えど、経年劣化はあります。初度登録から5年を超えると、メンテナンスコストが年々嵩むようになります。確実に壊れるものなのに、点検などで予知しにくい電装部品などもあります。

顧客の不満だけではありません。SSにとっても、いつ壊れるか分からない不安、クレーム対応に関わる手間、SSスタッフのストレスやモチベーション低下など、「中古車レンタカー」であることの弱点を強く意識せざるを得ません。

レンタカーCS改革の切り札とは

そこで「レンタカーに新車を活用しては?」という考えが頭をもたげます。
新車は故障しにくいし、故障してもメーカーが保証してくれます。自動ブレーキシステムなど最新装備で事故率が激減しているデータがあることも耳にします。
お客様のクレームも激減し、CSが大きく向上するに違いありません。

問題はコストです。
当社はSS以外にもレンタカーの専業店を5箇所運営しています。SS兼業と異なり、専業店は家賃も人件費も設備費もレンタカーだけで賄わなければなりません。

したがって、損益分岐点は高く、兼業店の2倍以上のレンタカー稼働率が求められます。
このため損保会社などに「当店のレンタカーを代車として活用してください」と営業活動しています。ところが「中古車だから」という理由でなかなか使ってくれません。

仕方ありません。とりあえず50台の新車をリースで導入しました。その結果、意外な事実が判明しました(表3)。

車1台当たりの月額料の差が少ないのです。普通乗用車やワンボックスクラスで4000円、軽自動車だと300円ほどです。



新車は高い残価が設定されるため、リース料は意外に安いのです。「人気車種ほど安くなる」という何とも不思議なのがリースです。

すなわち、中古車も新車も大して変わりません。車両原価の安さではなく、ローコストの事業構造こそが「格安」を実現しているのだと改めて思います。

表4は、当社仲町台SSでの兼業レンタカーと、新横浜にある専業レンタカー店の月間実績を比較したものです。

事業規模(車両台数) が2倍以上違いますが、車1台当たりの実績を比較するとよく分かります

専業店に比べ、兼業店は経費が26,000円/台も低いのです。ですから、兼業レンタカーは利益率50%以上の高収益ビジネスたり得るのです。

仮に、仲町台SSの71台の車両すべてを新車に置き換えるとどうなるでしょう。
車1台当たりの原価が5,000円上がったとしても、35万円のコストアップにしかなりません。すると利益率は46%となりますが、やはり十分な採算ビジネスです。

しかも「新車にすればCSが上がる」「CSが上がれば売り上げも上がる」という因果関係がはっきりしてきた以上、ためらう理由はありません。

さっそくSSレンタカーに続々と新車を投入してみる実験を開始することにしました。


油外放浪記一覧へ戻る