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増田信夫の油外放浪記  MIC社長増田信夫 第95回 ~ふたつの車販イベント~片や「SS色を出さずに大空振り」片や「SSの身の丈で成功の足掛かり」

平塚SSが800坪のカーケア拠点に

当社の平塚SSは市街地から離れた農業地域に位置する小規模の店ですが、車検を筆頭に油外収益を稼ぎ、黒字続きの優良店です。車販は長らくオークション落札の代行をやっていましたが、「中古車の現車を並べて売ってみたい」との思いを具現化した実験店としました。

隣の農地を借りて整地し、昨年2月から50台を展示する中古軽自動車専門店を始めました。
それから、SSの前面道路の向かいには数年前に閉鎖したSSがありましたが、ここも今年に借り受けました。「平塚アネックス」と称しています。その全景が(写真1)です。


SS、中古車展示場、アネックスからなり、気づけば総敷地面積800坪の複合カーケア施設群です。平塚アネックスには、以下の3つの機能を持たせることとしました。

➊整備工場
SS内にあった小さなリフト1基で、月平均100台の車検と一般整備を行ってきました。おそらく限界を超えています。リフトを拡充しなければ整備士たちが音を上げるのは時間の問題です。
もちろん車検を拡販することもできませんし、車を売ってもアフターサービスができません。そこで平塚アネックスに2基のリフトを増設し、認証工場資格を取得しました。

➋商談室
中古車展示場がオープンし、1年間で250台を販売しました。その商談は仮設のトレーラーハウスで行ってきました。狭く暗い部屋ですが、市街化調整区域のため、建造物を建てられないのです。
平塚アネックスはもともと立派なSSでしたから、販売室は広く、最大6組が同時に商談できます(写真2)。長時間を要する車の商談に、この快適な空間は「渡りに舟」でした。

➌新車リースの専業店
昨年夏に開発した「個人向けオートリース」は、当社のどの店でやってもブレイクしています。ただし、平塚店だけは取り扱いを見合わせていました。「まずは中古軽自動車の販売
を軌道に乗せよ」というわけです。

ところが、他社の「個人向けオートリース」の成功事例を聞くにつけ驚かされます。初月から30件、50件を成約する車屋さんがいて、当社とは桁が違うのです。

そこで考えました。
ひょっとして「SSであること」がお客様にマイナスイメージを与えているのではないか?車検でもタイヤでも、絶対にSSには注文してくれない人がいる。車販も同じことが言えるのではないか?この仮説を検証するのに、平塚アネックスは「うってつけ」です。

ーというわけで、平塚アネックスの改装工事に3000万円をかけました。見かけはオートリース専門店です(写真3)。

仮に、月20件しか成約できなくても、半年以内に投資回収できる計算です。
まずは当社お得意のオープンイベントで華々しくデビューしてやろう。強烈に印象づけるため「ダイハツのタントが当たる!」と大々的にうたう、無料プレゼント企画も用意しました。
さらにダメ押しで、店長も変えました。

当社寒川SSを見事に黒字化した車販の天才を、再び平塚SSへ戻しました。そのうえに、この1年半の間に中古軽自動車の展示販売で腕っ節を太くしてきた猛者3人を商談担当の中心に据えて鍛えます。

7月初旬、近頃では珍しいほどの盛りだくさんの企画、告知量、人員体制で臨んだわけです(表1)。





大山鳴動してネズミ一匹

平塚市の軽乗用車保有台数は3万3817台(平成28年3月末現在)。車の買い替えサイクルを平均8年とすると、今年買い替えるのは4227台です。このうち個人向けオートリースの潜在需要は25%(全国市場調査より)ですから、見込み客は1000人以上います。
このうち、せめて1%が即決してくれるとして成約目標を10件としました。

さぁ、果たして結果は(表2)に見る通りです。成約したのはわずか2件、またしても惨敗です。

大きな敗因は、集客数が目標の半分だったことです。しかもそのほとんどがSSから送客され道路を渡ってきたお客様。

「景品が当たるから」と来店してくれた人たちです。折り込み広告などに反応したのは、たった97人でした。
100万円以上する新車を用意したにもかかわらず、ぜんぜん反応してくれません。

もしもSSのガソリン増販イベントなら、5000人(反応率5%)を動員してもおかしくない企画ですが、まさしく「笛吹けども踊らず」とは、このことです。SS利用客を除くと、10日間で97人しか動員できなかった閑古鳥イベントでした。

20年くらい前のことですが、地方の自動車販売会社に請われてSS流の集客イベントを実施したことがあります。
その時も来店したのは管理客(車を売ったお客様)ばかり。新規客は、ほとんど反応しませんでした。当時のことが頭をよぎりました。

前述の仮説が大きく外れたことに関しては、このような解釈もできます。
自動車販売店とSSでは、こんなにも集客力に違いがあるのかと。これは負け惜しみではありません。素直に喜んでいいのではないでしょうか。SS事業者であることに感謝!

スタッフ育成も中途半端

イベントの重要な目的の一つが、「個人向けオートリース」の商談担当者を育成することでした。イベント期間中に数多くの商談経験と成功体験を積ませたいと考えました。
これを「実戦ロープレ」と呼んでいます。

ところが実際は、育成目標に対して商談機会が少なすぎました。お客様をその気にさせて審査してみるまでは、だいたいできるようになります。しかし、与信通過後の車選び、見積もり、契約といった重要な手順はあまり身につきませんでした。

成約件数は2件です。かろうじて成功体験まで得たのが2人だけ。もう少し実戦経験を積んで学ばせなければ、使い物になりません。ただし、イベント後、商談したお客様が再来店され、契約に至るケースが数件認められました。気を緩めず、しっかりマスターしてくれることを期待します。

10年赤字続きの所沢SS

さて、当社は埼玉県所沢市内でもSSを運営しています。
国内セルフSSの先駆けとして開設され、一時は月販700kl以上のガソリンを売る量販店だったそうです。その後、2005年に当社が運営継承しました。この店は当社として初めてのセルフSSでもありました。

しかしその後、市場環境が激変しました。
バイパスが開通し、大型の競合セルフSSが相次いで出現します。所沢SSの立地条件は急速に悪化し、設備も老朽化が顕著、客数も半減し、燃料油口銭もマイナスの戦いを強いられ、大逆風の嵐に巻き込まれました。

横浜市の本社から所沢SSまでの道のりは片道2時間以上を要します。このため、きめ細かいフォローもできず、孤軍奮闘して頑張ってもらっていました。
店長は大胆なコストカットに励むものの、累積赤字は3000万円に膨らみました。

ガソリン販売は月販200klにまで落ち込み、好転の兆しはありません。「もはやこれまでか・・・」。2012年の時点で、とうとう私は「撤退やむなし」と判断しました。

起死回生の主役は車検と車販

同じ頃、当社は全店を挙げて車検を倍増させるプロジェクトがスタートしました。
5カ所のSSで、車検獲得台数は年間4000台前後を推移していましたが、これを8000台に押し上げようという試みです(その経緯は本稿でも述べてきました)。

当の所沢SSでも「最後の挑戦」をしてみようか。そんな流れになりました。2013年のことです。捨てる神あれば拾う神あり。
所沢SSの車検は月間25台増加し、収益は100万円アップ。そして、なんと黒字に転換したのです。

2014年の燃料指数はマイナス2.5にまで改善したのです。
小躍りして喜びました。撤退を白紙撤回したのは言うまでもありません。
とは言え、まだ予断を許しません。2015年夏に誕生した個人向けオートリース「定額ニコノリパック」を、秋から恐る恐る所沢SSにも投入しました。

しかし、折からの人員不足がたたりました。商談時間は十分に確保できず、開店休業状態です。そこで人を新たに採用し、その新人育成のため今年6月末、小規模のイベントを開催しました。

3日間のイベント期間中に商談56件、うち成約件数3件。翌7月は6件成約し、車販収益は150万円アップしました。8月を迎えてからもこのペースは保たれています。

車検と車販の二段ロケットで油外収益は月間250万円アップしたわけです。
7月の営業利益は250万円。このまま推移すれば、これまでの累積赤字3000万円は今期中に一掃できるかもしれません(グラフ1)。

へこたれなかった所沢SSスタッフたち、見捨てなかったお客様、そして神様世間様に、深く感謝申し上げます。


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