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増田信夫の油外放浪記  MIC社長増田信夫 第89回 SSは新車販売に適した業態かもしれない

ショッピングセンターで中古車即売会

当社は1年前から、平塚SSに隣接して車の展示場を開設し、中古の軽自動車を70台ほど並べています。素人を採用して速成教育しただけでも、5割くらいは成約できます。

問題は来店客の少なさです。月間20万枚のチラシを地域に折り込んでいますが、せいぜい40人くらいしか来てくれません。ですから、20台くらいしか売れません 。あとは在庫車を洗車している毎日です。

そこで、お客様のいる場所に出店してみてはどうかと考えました。JR平塚駅前のショッピングセンターと交渉し、1月23~24日(土・日)の2日間、イベントコーナーを借りました(ここまでの話は前回述べました)。

実に名案です。
1日2万5000人が来店する中規模ショッピングセンターです。2日間で5万人 。仮に、1000人のうち1人が興味を示してくれたとしても、50人と商談できるではないですか。

アウェイの環境なので成約率は30%に下がったとしても、15台くらいは売れるでしょう。ワクワクして中古車7台を並べました。寒川SSでブレイクしたマイカーリースの宣伝も兼ね、新車も3台並べました。

商談用のテントを設置し、注目を集めるため、風船を1000個用意しました。たくさんの商談があってもいいように、本社の応援を含め、延べ20人がお客様を待ち構えたわけです<画像1&2>

またしても惨憺たる結果を招く

あいにく当日は関東北部で大雪予報。平塚は雪こそ降りませんでしたが、日中から凍えるような寒さです 。
大の男たち(女性もいました)が、カイロを2つ3つ身につけて待機しました。結局1台の車も売れませんでした(表1)

まずイベントコーナーの前を通るお客様が非常に少なかった。
多くのお客様は車で来店しますが、駐車場とお店を往復するだけ。極寒の屋外に出てきたお客様はごく一部でした。しかもみんな急ぎ足。もう少し暖かい季節であれば、状況は変わったかもしれません。

それでも中には、展示車の前に立ち止まり興味を示してくれたお客様もいました。が、そのほとんどは新車です。人気のハスラーとか、モデルチェンジしたばかりのプリウスです。

つまり車そのものへの興味を抱いたのであって、コストパフォーマンスとか支払い方法の利便性といった当社のアピールポイントには見向きもしてくれません。

ともあれ、立ち止まってくれたお客様にスタッフが近寄ります。すると逃げられてしまいます。車を中心にして、お客様とスタッフが対極上をグルグル回っているという、鬼ごっこのような笑えない光景を何度も目にしました。

SSであれば、当社のみならずどんな店であっても、お客様をどんどん店内に誘引するスタッフ達ですが、これが「アウェイの洗礼」というものでしょうか。

車販収益600万円アップ

さて、昨年6月から開始した新車のマイカーリースが好調です〈表2〉

もともと新車は「車を展示しなくてもカタログで売れるに違いない」という発想から本社開発部門が主導し、寒川SSでテスト販売した商品です。
が、すぐにSSスタッフたちは意欲的に取り組み始めました。たちまち他のSSも「取り扱いたい」と言い始めたので、翌7月からは本社お膝元の仲町台SS、茅ヶ崎SSで展開。今年2月からは所沢SSでも始めました。

本社が開発した商品を、SSの方から自主的に「取り扱いたい」と申し出てくること自体が珍しいのですが、SSスタッフのモチベーションが高いだけに好結果が早く現れたのでしょう。

新車は値引きなしの定価で販売しています。1台売れると25~35万円の粗利が上がります。〈表2〉を見ると、車販台数は前年比2倍ですが、車販粗利は6倍です。3SSで毎月600万円改善しており、SSの収益力に大きく貢献しています。

新車販売でSSは優位な場所にある

さて、これまでも本連載で述べてきましたが、当社がマイカーリースに取り組むことになった経緯をまとめてみます。
「SSで毎月20台以上の車を売りたい」-この命題をまず掲げました。

SSという業態が生き残っていくため、私が構想するビジネスモデルに必須の条件です。
長年、中古車の無在庫販売(オークションダイレクト)を一生懸命やってきました。しかし、全店が月20台ずつ販売を成し遂げるには、これだけではどうも役不足です。

そこで平塚SSに中古車展示場を併設しました。「中古車は現車を見せれば売れる」からです。なるほど、月20台売るのは問題ありません。でも、莫大な初期コストや在庫管理の手間がかかります。どのSSでもできるやり方ではありません。

そこで「新車ならカタログで売れるに違いない」という発想に至りました。いや、発想自体は古くからありました。しかし「SSが新車を扱うなど、分際をわきまえぬ高望み」だと、勝手に思い込んでいたのです。

ところがよくよく真面目に考えてみると、SSにとって新車販売はメリットだらけだと気づきました。

 ➊展示スペースがなくても車が売れる。
 ➋仕入れ代金がいらない(売れてから支払う)。
 ➌メーカーが品質を保証してくれる。
 ➍販売後のクレームもない。
 ➎スタッフのモチベーションが高い。競合はカーディーラーです。

ところが意外や意外、どのディーラーも実に協力的です。「顧客を取り合う競合相手」というより「商品を売ってくれる販売店(SS側から見れば仕入れ先)」になるからです。

問題はお客様です。
新車の購入チャネルとして、ディーラーとSS、どちらを選んでくれるのか。 〈表3〉にまとめてみました。


=商品の品質や機能、デザインはメーカーが作ります。誰が販売しようとメーカーが製造物責任を担ってくれます。ですからディーラーもSSも条件は同じ。
=車両本体価格で競争すれば、確かにディーラーに分はある場合があります。しかし、SSはガソリンを持っています。これを武器にすれば互角に戦えるでしょう。
=SSは漠然とした気持ちでやってくるお客様が少なくありません。現に当社では、Aさんが担当すると、ほとんど「ハスラー」ばかり成約する、Bさんが担当すると「N-BOX」ばかり、という有り様です。
担当者の好みに影響されて、お客様が車種を絞り込んでいるわけです。つまり、多くのお客様はこだわりや好みを最初から抱いて来店するわけではありません。
これに対してディーラーの場合は、系列メーカーの車種しか取り扱えません。ということは、ある程度車種を絞り込んだお客様しか来店しないわけです。獏然と「車を買い替えたい」と思っているお客様とは、なかなか接点がありません。
=アフターサービスは互角です。今やカーディーラーに負けない設備と技術を持っているSS
は多いでしょう。むしろ、ディーラーより安価に提供できるかもしれません。
=給油などでいつも顔を合わせる馴染みですから、「身近さ」という点ではSSが圧倒的に有
利です。

こうしてみるとSSは決してカーディーラーに負けていないことに気づきます。むしろ、SSの方が有利な局面さえあります。要するに、お客様を商談の場に引き込みさえすれば、こっちのもの。
でもその前に大きな壁が立ちはだかります。「新車を買うならディーラーで」というお客様の固定観念と、「ディーラーに任せれば安心」という信頼感です。

きちんと告知すればマーケットは反応する

同じ車をディーラーと同じ売り方をしても、お客様はSSを選択してくれないでしょう。
それならば、異なる切り口を見つけたいと考え、見い出したのがマイカーリースです。
以下の仮説を立てました。

★仮説1-「マイカーリース」は市場に認知されていない。
マイカーリースそのものは何十年も前から存在していたそうです。でも、私たちはよく知りませんでした。ネットで調べたり実際に取扱店に行って話を聞いて、だんだん理解するようになりましたが、そうではないほとんどの人はよく分かっていないだろう、いや、聞いたことすらないだろうと思います。

当社は横浜市の港北ニュータウンにありますが、わが商圏で「マイカーリース」を正面切って告知している自動車関連事業者は皆無です〈表4〉

カーディーラーのチラシが多いですが、内容は新車の紹介と低金利のアピールに終始しています。

数年前、自動車メーカーが「残価設定クレジット一(通称「残クレ」)を大々的にアピールしました。月々の支払い額が極めて安くなるため、車を手に入れやすいのですが、支払いを先延ばしにするだけですから、一部社会問題にもなりました。
これとマイカーリースを混同している人がいるかもしれません。

★仮説2-月々定額払いは、市場に受け入れられないかもしれない
例えば携帯電話や「ASP」(アプリケーション・サービス・プロバイダ)ソフトなどがこれほど普及した一因は、「月々定額払い」方式にあるのは間違いありません。車も同じ。支持してくれる顧客層は一定割合いるのではないかと思います。

★仮説3-マイカーリースを訴求すれば、一定の反応があるのではないか。
マイカーリースを知らないから使わないだけで、知れば受け入れてくれるお客様はいるに違いない。ならば、きちんと説明しよう、というわけで、商圏内にしっかりと告知することにしました。

一般に広告宣伝費は、獲得できる粗利の30%以内に収まれば採算がとれると言われます。
マイカーリースにより得られる粗利は車1台当たり25万円とすると、1台売るために許容できる販促費は75千円です。
これは1万5000世帯にチラシを折り込むことのできる金額です。

仮に、商圏の1世帯当たりの車両保有率を75%とすると、1万5000世帯に対する毎月の車の買い替え需要は134台です(計算の詳細は省く)。
そのうち1台がマイカーリースを受け入れてくれさえすれば商売になる、というわけです。やってみる価値はありそうです。

「マイカーリース」とは、実は総花的な表現で、様々な条件設定によってリース額は変化するものですが、当社は訴求力を重視し「定額1万円」と決めました。
条件も5年契約、値引きなし、残価設定、オープンエンドリース、基本メンテナンスつき、車検つき、ロー ドサービスつき、ガソリン割引つきといった具合に限定して、にわか勉強のSSスタッフにも商談しやすい商品に仕上げました。

つまりマイカーリースの数あるパターンの一つだけを扱っています。これを「定額二コノリパック」と名づけ、市場に投入したわけですが、今のところ上記の仮説は大きく外れてはいないと思います。

最近マイカーリースを取り扱うSSが多くなっていると聞きます。しかし月間1~2台の成約件数では洗車収益と変わりません。どうせやるなら商圏内にマイカーリースをきちんと知らしめるに十分な広告宣伝費を投入すればいいのにと思います。

ともあれ今般、仮説を定量的に検証するため、全国的なマーケット調査を実施してみることにしました。結果をお楽しみにー。


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