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増田信夫の油外放浪記  MIC社長増田信夫 第83回 「SS車販」の夜明けは近い?

ニコニコステーション構想

当社のSSを「燃料油マージンに左右されず、過大な人の能力にも負わず、コンスタントに利益を稼ぐSS」にしていきたいと躍起になっています。
これを私は「ニコニコステーション」と呼んでいます。

表1は、その目標像です。現状の数字と対比しています。

1SS当たり、月間総粗利1500万円、総経費1250万円とし、営業利益は250万円(年間3000万円)。燃料指数はマイナス10。なかなか強靭な競争力です。


利益の3本柱は「車検」「車販」「レンタカー」です。いずれも生産性が高く、スタッフの販売努力に負わずとも広告宣伝や販促活動で集客・販売できる要素の高い「ほっとけ」商品です。

「車検」は2012年から改善活動を始めました。
長い間、全店(4SS)合計は年間4000~4500台くらいで頭打ち状態でした。
これを抜本的に改革し、3年かけて、年間8000台のレベルにまで倍増しました。客単価をもう少し上げる必要がありますが、目標に到達するのは時間の問題です。

レンタカーは現状も目標も毎月150万円くらいです。
SSの人員やスペースを考えると、これがキャパシティの限界だろうと考えています。

車販は現在模索中です。
350万円の目標に対して現状は180万円です。
コンスタントに月間平均20台が売れるようになれば、その分下取り車の収益も増えますので、350万円になるだろうという皮算用です。

しかも、毎月20台ということは年間約500台。これが5年間続けば車販管理客は2500台となります。ガソリン販売量が毎月300klとするなら、SS利用客は約5000台。つまり、2台に1台は当店の車販客という状態が実現します。
そうすれば、オイル、タイヤなどのメンテナンス商品の販売シェアも向上するに違いありません。

オークション・ダイレクトは諸刃の剣

というわけで、我がSSの目下の課題は「車販」です。
以前にも記しましたが、当社の車販の歴史を振り返ってみます。

お客様に代わってオークションから中古車を落札するサービス、いわゆる「オークション・ダイレクト」方式を始めたのは2003年のことです。
当時は、「油外商材の幅を広げたい」くらいの気持ちで取り組み始めました。

店頭で車検対象のお客様に一生懸命おすすめすると、必ず「車を買い替えたい」というお客様が見つかります。「待ってました」とばかりにお客様の希望を聞き、オークション出品車両を検索し、あれでもないこれでもないと商談を始めます。
SSスタッフも、こういう商談は好きなんですね。来る日も来る日もパソコンを叩いては、オークションの状況をチェックするようになります。

その結果、車は売れたでしょうか。否。限られた人しか売れません。
それにもかかわらず、皆が車販に振り回されてしまい、他の油外収益は軒並みダウンしてしまいました。部屋の中でパソコンの画面を見ていても一銭にもなりません。

すぐさま「車販禁止令」を発しました。そして売れる人だけを集め、横断的な車販専任部隊を結成しました。「SSは見込み客を見つけるだけ。あとは車販部隊に引き継ぎなさい」と指示しました。
すると一定の成果が挙がりました。毎月30台(全店合計)くらい売れるようになったのです。

無在庫車販の壁

中古車の無在庫販売は、誰もができるわけではありません。
余計な流通コストがかからないから、安価に提供できるというメリットはありますが、目の前に現物がなく、口先だけで信用させ高額な中古商品の購入を意思決定させるのは、並外れた商談センスが必要です。

ところが、折からのSSを取り巻く市場環境の悪化と人材不足に見舞われ、車販専任部隊は2年で解散せざるを得なくなりました。彼らは各SSへ再配置され、給油や洗車をしながら車販もやる、といった具合です。
車販をあきらめたわけではありません。車屋さんの業歴を持つスタッフを採用しては、SSに配置したりしましたが、無在庫販売の経験はなく、なかなか期待通りの成果を出してくれません。

この10年余りの間、車販の才能がありそうだと目をかけて、育成したスタッフは20名を超えます。このうちモノになったのは4名。うち2名は、お客様をつかむとあっさり独立してしまいました。結局、毎月5台以上をコンスタントに売り続けているのは2名です。

無在庫販売のハードルは、思った以上に高いと思い知りました。普通のSSスタッフが売り続けることのできる商材でなければ、「ニコニコステーション」には適しません。


現車販売のハードルは、はるかに低い

当社の平塚SSでは、車販能力のある2名のうちの1人、車販部隊の部門長だった人間を店長に据えました。田舎の立地にもかかわらず、平塚SSは月平均5台を売り続け、当社でも優秀な車販店の一つとなりました。
その平塚SSですが、昨年、隣地を借り受けられることになりました。そこで農地転用の手続きをし、整地して今年2月、中古軽自動車専門店をオープンしました。

展示車両50台、バックストック20台、合計70台の高年式軽自動車を仕入れ、折り込みチラシで集客しました。新人スタッフを2名投入し、代わって店長は赤字に苦しむ寒川SSへ転属させました(これについては後述)。

何と、新人が月に20台売っています(グラフ1)。前年同月が平均5台でしたから、4倍の成果です。「現車を見せて売る」ことと「口先で売る」ことの違いは明らかです。この10数年間、「オークション・ダイレクト」にこだわり、もがいてきたことが馬鹿らしく思えるほどの圧倒的な差です。

もっとも5000万円以上の初期コスト(車両仕入れを含む)がかかり、ランニング費用も250万円かかっているので、毎月20台を売り300万円の粗利が上がっても、営業利益は50万円です。このまま推移したとして投資回収に8年くらいかかる計算です。

さすがにおっちょこちょいの私でも、他店でも同じようにやってみようという勇気は湧きません。土地の確保から考えると、なかなかの投資を要する事業です。結局は、このスタイルも「ニ
コニコステーション」構想には遠いかなあと思います。

数台の展示で大変身した寒川SS

さて、平塚SSで中古軽自動車の展示販売事業が立ち上がると、店長を寒川SSに異動させました。その話をします。この店舗は、平塚SSから8kmほど、車で20分の距離にあり、やはり周辺は農家の多い「田舎のSS」です。運営交代したのは3年前のこと。以来、赤字続きの、当社にとっては「お荷物SS」でした。

それが店長が代わった途端、ドル箱SSへ変身したのですから驚きです。
表2は、実績の内訳です。
車販収益が50万円から230万円へ大躍進しているのが目に付きます。経費は変わっていません。
車販が黒字転換の直接的な原動力になっていることが分かります。

寒川SSは同時給油8台、敷地面積は600坪。平塚SSの2倍の設備規模です。10台分くらいなら車を置いておけるスペースがあり、これまでは車検の預かり車両やレンタカーを何となく置いていました。
新店長はここに目を付けました。

2~3台分のスペースに、平塚SSから在庫車両を持ってきて展示したのです。
初めは「オークションダイレクト」へ誘導するための「アイキャッチ」のつもりでした。
ところがほとんどは、現車を見てもらって成約しているというのです。

つまり、こういうことです。
給油のお客様が展示車に興味を持ちます。スタッフが駆け寄って声をかけます。するとお客様から「これしかないの?」と言われます。
スタッフはすかさず「ありますとも」と返答します。「バックヤードに在庫がありますので、ご希望の日に持ってきますね。明日はいかがですか」とアポイントをとります。

そして、平塚SSの70台の在庫から、お客様の希望する車を寒川に回送し、お客様に見てもらいます。すると「成約する」と言うのです。
結局は、店長の高度な商談スキルに負う無在庫販売でなくて、普通のスタッフが現車を見せて販売しているわけです。

新車、中古車、何でもござれ

期せずして、寒川SSは平塚SSの車販サテライト店となりました。これはひょっとすると「コロンブスの卵」かもしれません。
店頭に何十台もの在庫を展示しなくても、バックヤードにありさえすれば、誰でも車が売れるということではないでしょうか。ワクワクしますね。

例えば、地元の中古車屋さんと提携すれば、どんなSSでも可能なやり方です。中古車屋さんにとっては、在庫の回転率が上がり、他方、SSにとっては「顧客接点」という最大の武器を車販にも生かせます。

さっそく中古車屋さんにアプローチしてみようと思います。
ともあれ、前回述べたとおり、寒川SSは6月から新車販売の実験も始めました。新車は無在庫で売れると言われますが、これもアイキャッチとして有効で、折り込みチラシに多くの人が反応して来店しました。

7月は新車、中古車を含め16台が成約し、下取り車も利益を出し、300万円を超える車販収益を計上しました。冒頭の「ニコニコステーション」構想の実現に、思いがけず寒川SSがリーチ一番乗りとなった格好です。

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