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増田信夫の油外放浪記  MIC社長増田信夫 第70回 「社長のための車検獲得術」

車検を売るのは「社長の仕事」

現在私は、当社が企画開催するSSトップセミナーで「社長のための車検獲得術」と題する講演を行っています。

セミナーは9月以降も各地で開催予定ですが、講演をお聴きいただいたSS経営者様の評価がとても高いので、今回はそのエッセンスをお話します。
まず講演のタイトルの頭に「社長のための」と付けたのは、車検の販売責任を店長に負わせている経営トップがあまりにも多いからです。

表1は、SSが取り扱う商品別に販売要因を分析し、また、その販売要因を作るのは誰の仕事かを整理したものです。


例えば、ガソリン。
品質は元売会社が作りますがブランドを選ぶのは経営者です。ガソリンが売れる条件は「立地」「設備」「運営」です。これを整えるのは経営トップの仕事ですね。現場スタッフの仕事はせいぜい、人の配備、接客、店舗クレンリネスといったところでしょう。

洗車はまったく異なります。
トップの仕事は、洗車機を導入したりメニュー看板をつくることだけで、販売のために声掛けするのも、短時間で高品質に仕上げるのも、これらをマネジメントするのも、現場スタッフの仕事です。洗車が売れるかどうかは店長次第と言えるでしょう。

オイル、タイヤ、バッテリーなど多くの油外商品も同様です。
現場スタッフの力に多くを負います。そして、その延長線上で車検も同じだと考えてしまいがちです。しかし、そうではありません。車検を売るのはトップなのです。

車検という商品は、メーカーがありません。強いて言えば、SS事業者自身がメーカーです。ですから、商品開発も広告宣伝もトップの仕事です。整備設備や技術イメージを高めることも、代車1台用意することすら、店長の裁量ではできません。

もちろん、SS店頭で声掛けや販売活動を行うのは現場スタッフの仕事です。しかし、それで売れるのは、後述するようにごく一部です。
顧客接点のない整備工場が月150台も車検を実施しているのに対し、SSが顧客接点だけを頼みにして、仮に毎月30台しか車検を獲得できないとすれば、これはトップがその役割を果たしていないのではないか--。そういった問題提起から今回のセミナーは始まります。

そして、当社SSの実験結果をもとに車検の販売戦略/戦術の判断材料となる情報を披露します。

リピート獲得が得意な整備工場
新規獲得が得意なSS

当社5カ所の直営SSは目下、年間の車検獲得台数を合計8,000台にしようと頑張っています。
2012年は4,600台でしたから、2013年は「あと3,400台獲ればいい」と頑張りましたが、約2,000台増えただけで結局6,700台止まりでした。「今年こそは!」と思って頑張っています。

2013年、あれほど頑張ったにもかかわらず2,000台しか増えなかったのは意外でした。
調べてみると、何と4,200台もの新規客を獲っていたのです。ところがリピート率が55%しかありません。
つまり、2年前に車検をやっていただいたお客様の4割以上が流出したために、活動初年度は掲げた目標をクリアできませんでした。

当社とお取引いただいている多くのSSに「車検のリピート率はどれくらいですか」と聞いてみました。すると「70%」とか「60%」とかリピート率が高いSSもありました。しかし、「50%以下」というSSが圧倒的に多く、平均は44%でした。
車検専門チェーン店はどこも「80%以上」と言いますから雲泥の差です。われわれSSは、この弱点を克服しなければなりません。

実は最近、SSは顧客接点が多いがゆえに、リピーター獲得にはマイナスに働くのではないかと感じています。お客様は、車検が終わってから次の車検までに、約40回来店されます。お客様は「この店で車検をやってやったんだ」という気持ちがあります。しかし、SSにとっては、他のお客様と同じ扱いになってしまいます。
だから挨拶もおざなり、笑顔で駆け寄って感謝の言葉をかけたり「お車の調子伺い」をすることもありません。ですから、来店すればするほどに、顧客は裏切られた気持ちになってしまうのかもしれません。

一方で、新規客は当社のSSでもたくさん獲れました。他の業態と比べると、SSはより地域に密着し、馴染みゃすく、正直で安心でき、便利だ、ということでしょう。ですからSSが、いやSS経営者が本気になれば、新規の車検はまだまだ獲得できます。

人的セールスで車検を買った人は2割以下

2013年に当社のSSで車検を実施していただいた6,700台のお客様が、普段から当社SSをご利用いただいているお客様かどうかを分析したのが(グラフ1)です。


車検客のうちSS利用客はちょうど半分の3,350台でした。
残り半数は他店のお客様ということになります。リピート比率は、当然ながらSS利用客の方が高くなります。
SS以外の業態は「給油客」を持ちません。これが新規客を獲得しにくい主な要因となっています。だったら、SSは店頭での販売活動を強化すればいいかというと、それだけでは足りません。

SS利用客で車検を実施していただいたお客様に「店頭ですすめられたからですか?」と聞いたところ、「はい」と回答したのはわずか16%だったのです(グラフ2)


 

残りの84%の方に対し、「では、何を見て車検を実施していただいたのですか?」と尋ねると、チラシ、店頭POP、DM(ダイレクトメール)、HP(ホームページ)といった、人的セールス以外の販促活動がいろいろ挙がりました。

これらは、SS利用客以外からの車検獲得手法でもあります。
そこで、これらの車検獲得手法がいったい何台の車検を獲得したのか、費用対効果はどうか、という観点から検証してみます。

昔も今もDMは車検獲得手法ナンバーワン

今から15年ほど前は、全国どのSSでもガソリン販促の一環として顧客リストを獲得し、会員カードを発行していました。ところがガソリン口銭が圧縮され、「販促は悪」との認識がSS業界にはびこり、さらにセルフ給油が定着し始めると、顧客リストを獲得するSSは絶滅しました。

このため、車検を販売する手段としてのDMも、リピーターのみをターゲットとした、ごく小規模なものになってしまいました。
当社SSも、かつては1カ所のSSで月平均250台の車検を受注していました。当時は毎月5,800件のDMを発信していたものです。ところがDMを止めた途端、みるみる車検台数は減少し同150台にまで落ち込みました。いかにDMが車検受注を支えていたかが分かります。

月5,800件のDMを止めたということは、月70万円のコストカットです。「10年間で8,000万円以上のコスト削減をした」と言えば聞こえはいいですが、これによって「10年間で3億円弱の収益が失われた」とも言えます。

そこで2012年から全SSで顧客リストを獲り直し、2013年からDMを復活しました。
DMのポイントは、顧客の車検時期に合わせてピンポイントのメッセージを繰り返し発信することと、引っ越しや車の買い替えで無効となった顧客データをスクリーニングすることですが、今やIT(情報技術)がこれを完璧にこなしてくれます。

このため、費用対効果は格段に高まりました。DMはまだ月当たり1,000件ほどしか発信していませんが、年間670台の車検を獲得しました。車検1台獲得するためにかかるコスト(CPO)はわずか3,900円です(表2&表3)




ミラーリングは今が旬

次に、CPOの良い手法はミラーリングです。
外部スタッフに委託して商圏内を巡回させ、車検時期が近い車両を見つけては案内ツールをドアミラーに取り付ける活動です。SSスタッフの負担はありません。

折り込み広告と違い、ミラーリングは車検ターゲットに対するピンポイント攻撃です。配布スタッフに手数料を支払ってもCPOは4,400円。これで昨年は約1,000台が獲得できました。

かつて当社SSの商圏では、30社近くの競合がミラーリングを実施していましたが、2004年、車検標章が小型化したのを機に絶滅しました。ところが数年前、車検標章は視認できる大きさに変わりました。

以前に比べミラーリング効果は高まっています。これは競合相手が誰もやっていないからでしょう。ミラーリングのポイントは、配布員の行動やエリアの評価を、本社が統括することです。

折込チラシは定番

新聞購読率が減少し、折り込み広告が効かなくなったと言われています。
当社のSSのお客様にアンケート調査を実施したところ、新聞を購読している方は58%、そのうち折り込みチラシにも目を通している方は60%を占めることが分かりました。すなわち、全体の34%が折り込みチラシを見ています。

クルマを保有するご家庭の多くは、新聞を購読する余裕があるのかもしれません。しかし、実に3人に1人が折り込みチラシを見るという事実は、折り込み広告がまだまだ有効であることを示しています。

当社を含め多くのSSの実績を調べたところ、折り込み広告による車検の反応率は概ね0.05%です。つまり、1万枚撒けば5台、5万枚撒けば25台の車検を受注できます。
当社は折り込み広告で、昨年900台の車検を受注しました。

問題は費用です。CPOは1万4,500円と少し高くなります。もしも車1台当たりの車検粗利が3万円以上なら、折り込み広告はとても有効です。しかし、2万円程度なら、折り込み広告は収益のほとんどを食いつぶすことになります。

つまり、車検の客単価が経営トップの選択肢を制限するというわけです。例えば「短時間立ち会い車検」を実施する店は、構造的に客単価は上がりません。
しかし、車検の数日前に事前点検を実施し、予防整備などもしっかり提案できる仕組みを採用した店は台当たり3万円以上の粗利を確保できるので、台当たり1万4,500円の販促費は許容範囲でしょう。

ここで疑問が生じます。
車検専門店チェーンは「短時間立ち会い車検」が特徴です。
車1台当たり2万円くらいの粗利です。にもかかわらず、なぜチラシを撒くのでしょうか。毎月20万枚、30万枚を撒く店は珍しくありません。

その理由はリピート率にあります。
まずリピート率が100%という事はあり得ません。ですから、新規客を取り込み続けなければ、どんな店も顧客は減少するだけです。
これを補うために、台当たり1万4,500円をかけて新規客を獲得します。そして2万円の粗利を得るだけで話は終わりません。

彼らは「生涯顧客」という考え方のもと、2回分、3回分の車検、日常のメンテナンス、次のクルマの販売など、大きな収益源を獲得しているのです。「80%のリピート実績」がこの考えを裏付けます。

この経営姿勢はSSに馴染まない部分がありますが、けれど学ぶべき点も多いと思います。

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