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増田信夫の油外放浪記  MIC社長増田信夫 第69回 「あと50万円」の利益をどう創るか

生き残りに必要な利益改善額

SSを取り巻く環境は悪化する一方です。どのSSも青息吐息、それぞれに事情は異なるでしょうが、総じて『あといくらあれば生き残れるか」を考えてみました。

当社とお取引いただいている約200カ所のSSの平均像は、燃料油販売量が月平均300kl、営業利益は同マイナス14万円です。
まずはこの赤字を解消することが喫緊の課題ですが、収支トントンでは経営は面白くありません。最低でも1%の営業利益率が欲しい。そう考えると、あと50万円の利益改善が必要だと算出しました。

たかが50万円。
一昔前なら、経費の削減努力で何とかなりました。しかし、もう削減できる部分はありません。燃料油収益が増える要素もありません。となれば、油外収益を改善するしかありません。
すべてのSSが、安定的に50万円の営業利益を、油外で上乗せすることになります。ところがこれは一筋縄ではいきません。

洗車やオイルでは生き残れない

「表1」は50万円の利益改善のために、どれだけ売らなければならないかを算出したものです。

    

例えば洗車。洗車1件当たり粗利800円の作業を、時給1,000円のスタッフが20分間かけるとします。洗車を1件販売すると人件費と販売費合わせて433円のコストが余分にかかります。ですから、利益は1台につき367円。50万円稼ぐためには、あと1,362台の洗車を増やさなければなりません。

仮に、燃料油販売量が毎月200klのSSだとすると、固定客数は約3,600人です。その顧客が月平均1回洗車しているとすれば、実に38%のシェアを、従来の洗車台数に上乗せする必要があります。

どうするか。まずは来店するお客様すべて(100%)に声掛けをしましょう。従来の洗車客には、もっと洗車の頻度を上げるようお願いします。当SSで洗車していない人には、当店を利用していただくようお勧めします。6割は断られてもいい。しかし4割から受注します。どう考えてもこれは不可能ですね。

同様に、オイル交換で50万円を新たに稼ぐためには、SS利用客の98%のシェアを獲得、タイヤなら80%のシェアを獲得しなければなりません。なおさら不可能です。

ならば、洗車、オイル、タイヤの販売を少しずつ増やせばどうか。いわゆる「バランス販売」で解決できるでしょうか。洗車、オイル、タイヤをそれぞれの需要の30%のシェアを獲得するとします。

これも大変な数字ですね。
3つの商品キャンペーンを同時に実施し、強力なマネジメントで半ば押し売りをしなければ達成できません。しかもこれを毎月継続するのです。
SSスタッフは疲弊しお客様が逃げ出すのは時間の問題でしょう。
できもしないことを、あれも、これもとスタッフに要求するのは、現場をご存じない輩の戯言(たわごと)です。やはりSSのベクトルを集中させなければ効果は出ません。

そう考えると、車検か車販しかないとの結論に至ります。どちらか単品で、2割のシェアを獲得するだけでSSが収益ビジネスに変わります。

昔は洗車も車検もよく売れた

必要とされる油外収益を得るためにはどうすればいいか。この命題を掲げ、ズブの素人である私がSS運営に乗り出したのが約20年前です。紆余曲折の連続でした。何が売れるか、どうやったら売れるか分かりませんから、手当たり次第に取り組んできました。
洗車、タイヤ、オイル、鈑金、車検は言うに及ばず、靴の修理や宅配便の保管サービス、風船ショップなど、今では笑い話ですが、当時は真剣にやってみました。

結果は、ほとんど空振りでした。やってみて初めて分かりましたが、売れないことには理由があったのです。
ただ、そんななかでも面白いように売れたのが、洗車と車検です。

洗車は頑張れば売れました。
当時、当社の仲町台SSは毎月500klの燃料油を販売していましたが、月500万円の洗車収益がありました。「すごい」と同業の先輩方から感心され、全国から毎日のように見学者がお見えになり、私も有頂天でした。

ところがハタと気づきました。
見かけ上の粗利益は大きいが、経費も大き過ぎてあまり儲かっていないと。どうも洗車は投入した労働量に対して生産性が低く、努力に見合った収益が得られないのです。

そう気づいてから、洗車販売の努力をやめました。現在の仲町台SSの洗車収益は、自然体で売れているだけで200万円に及びません。それでいいと思っています。

時を同じくして車検が自由化されました。これ幸いと、試しに新聞折り込みゃSS店頭でチラシを撒いてみました。すると毎月250台もの注文が来ました。3月などは415台も受注しました。手探り状態だったとはいえ、たった1基のピットでよくぞやったものです。

当時は整備業界の車検はまだまだ不透明でした。カーディーラーも自動車販売にしか関心がありませんでした。その隙間をついて、SSが顧客の支持を得たわけです。

当初、SS業界の大勢は車検への参入に懐疑的でした。やれ「高度な設備が必要だ」「有能な整備士も必要だ」などと勝手に判断していたと思います。

でもやってみると、オイルやタイヤよりはるかに簡単に売れるし、SSの設備や技術で十分に通用します。当時私はSS業界に対し、声を大にしてこう唱えました。
「車検は超簡単。ジャッキと電話があれば誰でもできる」と。

あれから20年。車検の市場環境は変わりましたが、今も車検に対する気持ちは大きく変わっていません。ただ、その後「車販」という魅力的な商材が加わりました。次なる問題は、注力すべき商品を「車検」にするか「車販」にするかです。

車検と車販は販売難易度が大きく異なる

車検と車販を「業務処理」という観点で比べてみたのが(表2)です。

人間の行動には2通りあります。「受動的行動」と「能動的行動」です。

お客様に「この商品をください」と頼まれてから、「はい喜んで」と動くのが「受動的行動」です。ほとんどのスタッフは「受動的行動」が大好きです。ですから、ダイレクトメール(DM)などの広告を仕掛け、お客様を動かし、受動的行動を誘発するのは理にかなったやり方です。

ただし、車検の受動的行動には整備士資格が不可欠です。経営者はその要件を整える必要があります。でも、車販の受動的行動には資格がありません。オークション売買などの手続きを教えれば、誰でも担当できます。

一方で、お客様に対して「この商品はいかがですか」「説明を聞いてください」といった、「能動的行動」が積極的にできる人は限られています。多くの販売局面で必ず暗礁に乗り上げるのが、この部分です。
車検の能動的行動を厭わない人は、経験的に5人中1人くらいです。社員、アルバイト、パートの別を問いません。どんなSSにも適任者が必ずいます。
その人に基本的な知識と販売手順を教えると、10日もすれば一人前に販売を任せられるようになります。

ところが自動車販売の適性がある人は、20人に1人くらいしかいません。当社は現在5カ所の直営SSを運営し50人を超えるスタッフが勤務していますが、車販業務がまともにできるのは2人です。やはりお客様から信頼され、お客様の心を動かすことのできる営業マンでなければ務まりません。

もしもそんな貴重な人材が見つかったとしても、実績が出るまで半年間は見守る必要があります。でも一人前になると、独立したり転職してしまうのも、こういう人材の常です。

そう考えると、やはり経営者が選ぶべきは「車検」です。車検が軌道に乗れば、自ずと車販ニーズが発生しますので、それから車販を考えればいいと思います。

SSの体質改善が鍵

前回も触れましたが、SSは整備工場に比べると、車検の集客に大きな違いがあります。
SSは新規客を集めるのが得意です。片や整備工場はリピーターを囲い込むのが得意です。

「グラフ1」は、当社3月の車検客の内訳ですが、新規客は516台、リピーターは287台でした。2年前の3月の車検台数が587台でしたから、リピート率は49%です。残る51%、実に300台が他店に流出したことを意味します。

多くのSSの実績を見ても、車検のリピート率は30~50%、努力しているところだと60%くらいです。

毎月30万枚の折り込みチラシを実施している車検専門店でさえ、安定的に80%以上のリピート率を確保し、新規は残り20%プラスアルファを補っているに過ぎません。雲泥の差があります。

あるコンサルタントによれば、「新規客の多い店(会社)ほど、ダメな店(会社)」なのだそうです。半数の顧客が「おたくの車検はもう嫌だ」と言っている店なのですから。
このSSの体質をどう改善するかが、私たちの大きな課題と言えるでしょう。

これを改善し、そのうえでSSの得意分野である新規獲得能力を発揮すれば鬼に金棒、怖いものはありません。

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