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増田信夫の油外放浪記  MIC社長増田信夫 第68回 SS業態も販促手法も既成概念を取り払ってみる

人手不足の原因はSS自体にあるのかもしれない

当社直営5SSの3月実績を「表1」に示します。

この3月は、消費増税前の駆け込み給油と市況が是正されたおかげで、燃料油収益は改善しました。油外粗利は微増、経費が少し上がりましたが、営業利益は1000万円を超えることができました。

人手不足が続くなか、車検需要期を乗り切ったことに正直ホッとしているところです。
車検は前年比20台しか増やせず、5SS合計で803台止まりでした。

これが現有メカニックのキャパシティーの限界だと思います。不眠不休に近い状態で皆よくやってくれましたが、車検にかまけ、オイルその他の収益は落ちてしまいました。
ガソリン市況に救われた3月でしたが、しかし、この人手不足問題を解決しない限り、抜本的な改善は見込めません。

アベノミクス効果などで建築土木関係に人手が取られていると思っていましたが、どうもそれだけではないようです。「ガソリンスタンドのメカニック」という職種が敬遠されている気がします。

SSフォーマットの既成概念を捨て去ると

今のガソリンスタンドのビジネスフォーマットは、昭和30年代とあまり変わっていません。確かに、給油や洗車設備はどんどんセルフサービス化していますが、今なお店舗の地下には燃料タンクが埋まり、地上はキャノピーが覆い、その下に計量機が設置されています。店舗の大部分をこれら給油設備が占めています。ピット室や販売室は「申し訳」程度に付け足されているに過ぎません。

当社の平塚SSを例に挙げて、話を進めましょう。
このSSは10年前に運営継承し、同時に計量機と洗車機をセルフ対応へ切り替えました。平塚市郊外に位置し、敷地面積は350坪。同時給油6台、ドライブスルー洗車機1台、リフト1基。販売室も狭くて、無理をすれば同時に2組と商談できます。どこにでもある普通のSSです。

この平塚SSの3月の商品別粗利構成を「表2」に示しました。

    

給油設備が店の大部分を占める割りに、そこから得られる付加価値は全体の2割です。車検整備が4割近くを占めますが、たった1基のリフトで行っています。大型ワゴン車を頭から入れるとお尻がはみ出るような小さなピット室です。

雨が降るとずぶ濡れで仕事になりませんが、メカニックは健気にカッパを着て作業をしてくれています。整備作業が重なると仕方がないので、ドライブウェイを車1台分塞いで、ガレージジャッキで整備している有り様です。

レンタカーは、車が外に出て稼いでくれるので設備的には問題ありませんが、レンタル待機中や販売用としてSSのドライブウェーに車数台を並べています。給油の邪魔にならないようにして車を無理やり置いていますが、その収益貢献度も3割以上を占めます。

こう考えると、ガソリンスタンドのビジネスフォーマットがいかにも旧態依然であり、また、そこから収益を得るには、いかに無理を強いられているか痛感します。
こんな環境ではメカニックが逃げ出したくなる、いや、求人募集に応募すらしてくれないのも頷けます。

「フロントエンド商品」「バックエンド商品」という考え方がありますね。ドラッグストアが店頭に安いティッシュやトイレットペーパーを山積みしています。これが「フロントエンド商品」です。利幅は低くても必需品で購買頻度が高いため、お客様の来店を促します。

「フロントエンド商品」に誘われて入店すると、店内は化粧品や健康食品が所狭しと陳列されており、これら付加価値の高い商品の購買意欲がそそられます。これが「バックエンド商品」
ーすなわち収益を確保するための商品です。

SSの場合、「フロントエンド商品」はガソリンです。これが店舗の9割を占めているのが実情で、肝心の「バックエンド商品」は隅に追いやられている始末です。
つくづく「SS業態の限界」を感じます。

というわけで、近く平塚SSの「バックエンド商品」の面積を拡充する予定です。具体的には隣地200坪(農地)を借りることにしました。そこでは、従来のSSフォーマットでは想定していない商材、つまり、車の販売・買取・レンタル・リースのための専用駐車場(兼)展示スペースにしようと考えています。

こうすれば、フロントエンド商品約350坪、バックエンド商品200坪となり、設備バランスはかなり改善するのではないかと思います。これまでSSから徒歩5分の場所に車検の預かり車両やレンタカーの駐車スペースを借りていましたが、その往復による移動ロスも解消します。給油動線を妨げずにすむので、消防署から注意を受けることもなくなります。

田舎ですから、借地コストはたった20万円/月。そこから少なくとも300万円の収益が上がると試算しています。販促などの相乗効果で集客や車検販売にも効果があるでしょう。
わずか200坪でも給油以外の用途に敷地が使える、そう考えるとワクワクします。


車検専門店はなぜ折り込みチラシなのか

話は変わりますが、広告媒体としての「新聞折り込みチラシ」を見直してみようか、と考えています。最近、ある車検専門チェーンの1月の実績ランキング表を目にする機会がありました。どの店も素晴らしい実績で、うらやましくもあり励みにもなります。

この車検チェーンは、どの店も毎月だいたい10万枚から20万枚の新聞折り込みを実施しています。ランキング1位のA店も毎月20万枚。ガソリンという「フロントエンド商品」を持たない業態ですから、積極的に販促するしかないのだろうと他人事のように考えていましたが、今でも彼らが折り込みチラシを告知媒体の主流としていることについて、ふと疑問に思いました。

というのも、かなり以前から「新聞の購読率は年々下がっている」こと、「折り込みチラシによる情報到達には限界がある」ことを聞いていたからです。これを真に受けた私は、折り込みチラシはそこそこに、webなどの他の媒体開発に血眼になりました。

そんな世の中のトレンドをよそに、折り込みチラシだけで月に300台も500台も車検入庫があるというのはどういうことでしょう。看過できません。
早速、計算してみました。

折り込みチラシによる車検のヒット率は、だいたい0.03~0.05%です。これは当社だけでなくて、どのSSでやってもほぼ同じです。

ですから、20万枚を折り込めば、新規の車検獲得台数は良くて100台です。A店は667台入庫しているので、残る567台以上はリピーターが占めていることになります(表3)

折り込みチラシのコストが1件当たり5円とすると、100万円をかけて100件の新規客を獲得していることになります。つまり、新規客を1件獲得するために要するコスト(CPO)は1万円です。
比較するため、当社が行っている販促効果を見てみましょう。

当社はこの3月は折り込みチラシを実施しませんでしたが、ホームページ、ポスティング、ミラーリング、店頭販売、ダイレクトメールなどの広告を打ちました。広告費として478万円をかけ、803台の入庫がありました。このうち新規車検は549台です。
つまり、新規1件獲得するために8,700円かかったことになります。

A店のCPOは1万円、当社は8,700円ですから、当社の方がやや効率よく車検が獲れているように思います。ただし、A店は1月、当社は3月の数字です。
さらに入庫1台当たりのコストで比較すると、A店は1,500円、当社は6,000円です。
A店の方が4倍も費用対効果に優れていることに気づきます。
この圧倒的な差は、リピーター構成比によります。

私たちSSの悲しい性なのでしょうか。毎日数百件の来店があるSSは、新規もリピーターも区別なく、ただ目の前のお客様をさばくことに終止しています。でも、これでは当店で車検を実施してくれた顧客の満足は得られません。何とかリピーター構成比を高める工夫が必要です。

さらにもう一つ、新聞折り込みは確実に新規車検獲得に効くことが分かります。たとえ新規獲得に1万円かかるとしても、A店のようにその8割以上を囲い込めるなら、2回分、3回分の車検をたった1万円で獲得したことになります。

どうもweb会社やポスティング会社の陰謀に、まんまと嵌められたかもしれません。
私の周囲を見渡せば、確かに新聞を購読していない人は増えています。ただ、クルマを持たない単身者が多いようです。むしろ新聞を購読している世帯の方が付加価値商品の購買力が高いのではないでしょうか。

ということは、折り込みチラシのターゲットは、車検のターゲットにじわじわと集約されており、効率的に車検が獲得できるようになっているのかもしれません。人の話を鵜呑みにせず、自ら調査し判断しようと思い知りました。

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