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増田信夫の油外放浪記  MIC社長増田信夫 第62回 今、リスト獲りが新しい

リスト獲りがSSオペレーションに定着

当社のSSでは今日も、しみじみと”リスト獲り”が行われています。
昨年7月に”リスト獲り”を再開して以来1年半が経ちました。
獲得した顧客リストは4SSで2万3,000件になります(グラフ1)

   

各SSには「車番認識システム」が設置されていますので、お客様ごとに来店頻度をつかんでいます。その記録を見ると、初めて当SSを利用してくれた顧客(フリー客)は、この1年半に6万5,000台ありました。つまり毎月3,600台のフリー客が来店し、1,200件の顧客データを獲り続けてきたわけです。

”リスト獲り”は「もうこれで終わり」ということがありません。かつて私は、本誌連載で 「フリー客は、汲めども尽きぬ養老の滝」と唱えたことがあります。あれから四半世紀が過ぎましたが、現在もその状況は変わっていません。いつの時代もSSはフリー客の宝庫です。


とめどのないガソリン減販

一時期やめていた”リスト獲り”を再開したのは「車検対象客にダイレクト・メール(DM)を発信したい」のが主な目的です。とは言え、やはり客数減少に歯止めをかけたいという、副次効果への期待もありました。

   

グラフ2は、当社が運営するSS第1号であり、フラッグシップ店でもある仲町台店(フルサービス)
のガソリン販売量の推移です。ピーク時は月販600klを販売した量販店でしたが、近隣のSSがどんどん元売子会社の直営セルフSSへ切り替わるにつれ、顧客は見る見るうちに流出しました。いつかは下げ止まるだろうと楽観していましたが、一向に止まりません。まるで底なし沼のようにズブズブとはまり込み、とうとう首までつかってしまいました。

さすがにこれはまずい。油外販売に必要な客数さえも維持できなくなります。思いあまって”リスト獲り”をしたところ、今年夏になってようやく下げ止まった感じです。

”リスト獲り”とはつまり、フリー客を「おもてなし」して、今後も引き続き当店を利用していただけるようにするための第一歩です。「現金会員」「計算センター」「モノクレ」と聞いて「懐かしい」と思われるSS事業者も多いでしょう。10年くらい前までは、多くのSSで当たり前に行われていた「ガソリン増販」手法です。

そのメカニズムはこうです。
①フリー客を歓迎し、メンバーズカードを発行して、個人情報を入手します(リスト獲り)。
②次に、ハガキなどで再来店を促進します。
③すると、何割かが再来店してくれます。
④再来店客を価格やサービスで手厚くもてなすと、さらに何割かが継続的に当店を利用してくれるようになります(固定化)。
⑤この一連の流れを繰り返し、固定化客数が流出客数を上回れば、ガソリン販売量が増えるわけです。

今から25年くらい前になりますが、当社は数多くのSSの”リスト獲り”を指導させていただきました。その結果、すべてのSSでガソリンが大幅増販したものですから、たちまちSS業界に火が着き、大流行しました。
元売会社もこぞって現金会員カードをリリースしたり、顧客情報管理センターを設立しました。

しかし、いつの間にか、ガソリンに販促費を割けなくなるほど、ガソリンマージンは低下しました。顧客管理コストさえも削減対象となりました。さらには、SSのセルフ化や人員削減により店頭接客が手薄になりました。こうして”リスト獲り”手法は廃れ、「過去の遺物」となりました。

いつしか顧客のSSに対するロイヤリティーも希薄化し、より安価なSSを求める「流浪の民」と化してしまいました。


誰もやらないから効果がある

しかし、やってみると今でも効果があります。
ガソリンの販促ではなく、車検の販促だと考えれば、費用対効果は合いますし、車番認識システムが、誰がフリー客か、誰が再来店客かを見分けてくれますから、ピンポイントで接客できます。車番認識システムはまた、顧客管理の大半を自動化してくれます。

「グラフ3」は昨年7月に運営継承した寒川SSで、フリー客からリストを獲得した顧客としなかった顧客が、その後どれくらいの割合で再来店してくれたかを示したものです。


”リスト獲り”したフリー客は、翌月までに3割が再来店し、6カ月後までに4割以上が再来店してくれました。ところが”リスト獲り”しなかったフリー客は、6カ月経っても2割程度しか再来店してくれません。固定客化への歩留まりを考えると、その差はさらに広がるでしょう。

ただ、これを見て私は「変化」も感じます。再来店のスパンは、昔は3カ月でした。今は長期化しています。車の燃費向上が大きな理由でしょう。資源エネルギー庁の発表によると、この15年間でガソリン乗用車の燃費は49%も改善されたそうです。給油の頻度がおおむね半減した計算になります。

表1は、当社および取引先のSSの車番認識システムが弾き出した、平均的な顧客の来店頻度です。

「来店頻度は月2.5回」と元売会社にも教えられてきましたが、これを見ると、月1.8回というのが実態です。

昔は市場全体が伸びていたので、どのSSも横並びで成長することができました。しかし、「パイ」が半減した現在、普通にやってもガソリン販売量が半減するのは当然だということです。
それが下げ止まったということは、誰もやらなくなった”リスト獲り”を敢えてやったことが「差別化」の効果を生んでいるのかもしれません。

絵に描いたような収益改善

通常、SSのマネジメントは数字を前年と対比して見ますが、これではなかなか環境変化に気付かないものです。今回、当社の平塚SSを長期スパンで振り返ってみました。そして急激な変化にびっくりしました。

このSSは神奈川県平塚市の郊外立地で、2004年に運営継承しました。田園地帯を通る生活道路にポツンとある小さなSSです(表2)

のどかな町で平和に運営を始めたわけですが、半年後、目と鼻の先に同系列マークの大型競合セルフSSが新規オープンしました。そして地元の有力セルフSSと、激しい価格競争を展開し始めました。

表3をご覧ください。
月平均300kl以上あったガソリン販売量は、現在かろうじて同200klです。毎月254万円あった燃料油収益は、今や100万円もありません。4人分の人件費が吹っ飛んだ計算です。

一時は撤退も考えましたが、最後の賭けに打って出ました。コスト削減と油外強化に取り組み、「黒字化に挑戦するぞ!」と。

まずは営業時間を短縮し、社員2名を他SSに異動、アルバイトの投入時間も半減させました。販促費は3分の1に圧縮しました。水道光熱費も丹念にカットしました。こうして2007年は、毎月728万円と鷹揚に使っていた経費を、558万円へと170万円カットしました。
一方で、少なくなった人員で効率的に油外を稼がなくてはなりません。生産性の悪い「手洗い洗車」は捨てて、重点商品を「車検」と「車販」に絞りました。

そして2009年には「レンタカー」を新たなメニューに加えました。当時、こんな田舎で誰がレンタカーを利用するのかと、誰もが疑問を呈していましたが、しかし、リピーターが積み上がり、 毎月150万円を稼ぐようになりました。

レンタカーの増車コストは収益に応じてかかるので、基本的に赤字にはなりません。ですから、レンタカー経費は増えましたが、黒字を維持しています。レンタカーはまた、車販にも好影響を
及ぼしています。
こうして見ると、たったこの5年の間で平塚SSの収益構造は大きく転換したことが分かります。絵に描いたような「脱ガソリン」モデルですね。

収益全体のうち燃料油の占める割合は、今や14%にすぎません。
間もなく年の瀬を迎えます。
来年もさらに燃料依存度の低いSS業態にチャレンジしていきたいと思います

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