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増田信夫の油外放浪記  MIC社長増田信夫 第61回 1000万円SSまであと一息

車検「2014年問題」を吹き飛ばせ!

9月も当社のSSは、何とか黒字でした。5カ所合計で辛うじて140万円の営業利益ですから、胸を張れる数字ではありません(表1)


とは言え、昨年同月は330万円の赤字でしたから、たとえ小額でも黒字は黒字。その立役者はやはり「車検」です。車検収益は800万円増えました。その結果、油外収益は4,400万円です。9月の油外粗利は1SS当たり880万円ですから、これは国内でも有数の実績ではないかと思います。

しかし、営業利益を考えるとまだ足りません。頑張っているスタッフたちの努力に報いるためにも、コンスタントに1,000万円以上の油外粗利を稼ぐSSにしたいと考えます。すなわち1SS当たりプラス120万円、車検台数にしてプラス30台。「あと一息、あと一息」と、現状分析しては問題解決や新手法の開発に心血を注ぐ毎日です。

そんな努力に水を差す記事を見つけました。車検には「2014年問題」があるというのです。
2011年春、東日本大震災が発生し国内の新車販売台数は激減しました。その当時に売れた車の初回の車検が2014年に訪れます。2009年はリーマン・ショックの後遺症で、やはり新車販売が落ち込みました。その2回目の車検も2014年に訪れます。

つまり、カーディーラーや整備工場の人たちは、2014年の車検はダブルパンチで減少すると危機感を抱いているわけです(グラフ1)。 しかし、冷静に考えると私たちSSにとってこれは「商機」かもしれません。SS車検のメインターゲットは「低年式車」ですから「2014年問題」の影響は最少限です。しかも、日常的に顧客接点を持つ業態特性を生かして、いち早く「ツバを付ける」ことが可能です。

 

当社のSSは今年から、全来店客を対象に「次回の車検予約」を獲得しています。2014年分も相当数の予約を獲りました。今はむしろ、これを他の業者に奪い返されないよう防衛策を練っているところです。


獲得手法を駆使すればSSは勝てる

昨年まで直営5カ所のSSで月間400台だった車検台数が600台に伸びたわけですが、その理由を(表2)にまとめました。コバック車検やオートバックス車検とも比較しています。

①は、過去の車検客データを管理して車検時期が近づいたら、DM(ダイレクト・メール)、 電話、場合によっては訪問して車検を獲得する方法です。
SSは一般的にあまり得意ではありませんが、コバックやオートバックスは過去の車検客を「管理客」と称し、命の次に大事にしています。さらに、車検は70%以上の車検客がリピートするのが当たり前だといいます。

②と③は、SSにしかできない技です。販売オペレーションの標準化と教育管理が不可欠です。特に、③の来店客全員にアプローチして早期予約を獲ることは、これまで根拠もなく「無理だ」と思われてきました。
しかし、やってみると素人アルバイトが大活躍します。むろん、早期予約を実際にどれだけ入庫させることができるか、事後フォローの仕組みが鍵となります。

④は、自店利用客に対するDM発信のことです。多くのSSが顧客データを管理しなくなり、それ を実施しません。一方で、オートバックスは 今、利用客に対して一生懸命にメンバーズカードを発行し、またそれにより得た顧客情報を活用しています。
「電子メール会員制度」を採るSSも一部にありますが、顧客の車検時期に合わせてメールを配信するSSは少ないようです。車検獲得には、やはり紙媒体の「郵便メール」の方が何倍も効果があるみたいです。

⑤の商圏告知も実施するSSは少なくなりました。販促コストの抑制が主な原因です。しかし、コバックやオートバックスにとって、商圏告知は今でも新規客を獲得するための主軸です。

⑥のミラーリングも、9年前に車検ステッカーが小さくなってから廃れました。しかし、やってみると、今でもちゃんとできます。当社の場合は外注ですが、費用対効果に優れていることも変わりません。

⑦について。スマホなどのインターネット利用環境が普及するにつれ、webサイトで車検を調べ、比較し、注文する人がどんどん増えています。車検チェーン店は目ざといですね。「車検」と入力して検索すると、コバックやオートバックスは必ず上位に表示されます。当社でもホームベージを見直したり創意工夫を凝らしたところ、車検獲得の強力な武器となってきました。

⑧について。当社が今春に実施した「紹介キャンペーン」では、社員とアルバイト総勢187人が計40日間で1,023件の車検予約を獲りました。従業員ネットワークは想像以上にパワフルです。

⑨について。需要期になるとコバック車検やオートバックス車検のテレビCMをよく目にします。全国店舗ネットワークのスケールメリットを生かせるのが彼らの強味です。たった5店舗しかない当社はとても真似できません。

さて、こうして見ると、単純に手数(てかず)の差が車検実績の差になっていることが分かります。
コバックは月間100台以上の車検を実施している店舗が多いですが、そのうち7割以上を車販客や車検リピーターが占め、残り3割はチラシやホームページで新規客を獲得していると聞きます。

ここ数年、伸長著しいのがオートバックスです。今や全国500店舗で年間60万台の車検入庫といいますから、1店舗当たり月間平均100台です。しかもSSと同様、他店が販売した車両の車検がメインターゲットです。低年式車が多いため「2014問題」も気になりません。

SSも手数を増やせば、車検がさらに増えることは明らかです。さすがにテレビCMだけは、元売会社に頼るか、直営SSが特定の地域に集中出店しているようなSS会社でなければ、到底無理です。けれども、それ以外の手段はすべてできます。

そのうえで、SSしかできない「店頭商談」、すなわち①と②を強化すれば必ず勝てます。
オートバックスも来店数が多いじゃないか、と思われるかもしれません。でも、来店頻度は年1回程度だそうです。これでは車検時期と商談のタイミングが噛み合いません。

というわけで、他業種は電話、DM、チラシ、ネットといった遠隔コミュニケーションに頼らざるを得ません。
だからこそ、対面販売の手法も使えるSS業態は有利なのです。にもかかわらず、経営者の戦略ミスにより、いつまでも他業態の後塵を拝していたら、SSスタッフたちに申し訳が立ちません。


「車検名人」評価基準に落とし穴

ーーなどと格好いいことを綴りつつ、恥ずかしい失敗談を述べます。
SS店頭での車検販売活動を何とか合理化・徹底したいと試行錯誤を繰り返し、今から6年前、「車番認識システム」なるものを開発しました。

これはSSの来店客の中から商談すべき対象客を見つけ出し、即時にスタッフへ知らせることを自動化したシステムです。その開発思想は、全国のSS事業者様から多くの共感をいただきました。それ以来、たくさんのSSでご利用いただき、あちこちから「おかげ様で車検が増えた」などと高い評価を得ています。

当社のSSも同じです。
車番認識システムがなかった当時、店頭販売の行動を最大化するためにマネジメントを追求し、「もうこれ以上は無理だ」というところに到達しました。
それが車番認識システムの導入によって、どの店もあっさり車検獲得台数が月間50台以上伸びました。機械でできることを人間にやらせてはダメですね。

これを機に、車検獲得オペレーションも次第にブラッシュアップしています。販売実績の高いスタッフは「車検名人」と呼び、彼らに商談優先権を与えて業績評価をしています。
この営業体制を基盤に今年はさらに車検を倍増させたいと、「表2」のようにたくさんの手法を繰り出しました。おかげで月間200台増えたわけですが、ある時”異変”に気付きました。

「表2」の②、すなわち直近車検の対象客に対し、店頭で商談して獲得した件数がかなり減少しているのです。
「車検名人」たちはいったい何をしているのでしょう。
答えはこうです。

車検の獲得手法をあれこれ多様化すると、ホームページやコールセンターに車検を申し込むお客様が増えます。SSに来店して申し込まれるお客様も増えました。そこにたまたま「車検名人」が接客し、「ごっつあん!」とばかりに自分の業績にしていたのです。

”ごっつあん”客が増えるにつれ、「車検名人」は本来の業務がバカらしくなります。それはそうでしょう。給油来店客を店内に引き込み、商談し口説いて獲った車検も1件、”ごっつあん”で獲った車検も1件、評価は変わらないのですから。
野生動物も餌を与え続けると、わざわざ狩りをしなくなりますね。

「車検名人」がいつの間にか「楽勝名人」になっていた。そんな簡単な落とし穴に、アホな私は最近気づいた次第です。
慌てて評価基準を見直しました。「今後”ごっつあん”は評価しない」と。その途端、彼らの行動が変わりました。

「表3」は評価基準の改善前 (8月)と改善後(9月)の車検名人の行動変化です。
8月は直近車検客が1,382件来店しました。
にもかかわらず「車検名人」は179件しか商談せず、わずか38件しか成約しませんでした。
本来なら「車検名人」の優遇資格を剥奪すべき体たらくです。

改善後の9月、行動量は2倍に、成果は4倍増となりました。
まだまだ「車検名人」に求める水準には達していませんが、急遽ブラッシュアップ研修などを施し、鈍ったパフォーマンスを取り戻させています。

もっと私が早く気付いてさえいれば、冒頭に述べた1SS当たり「プラス30台」は、すでに実現していたかもしれません。

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