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増田信夫の油外放浪記  MIC社長増田信夫 第59回 車検販売を「狩猟型」から「農耕型」へシフト

燃料油収益を捨て
車検増を図ったこの1年

当社は昨年6月、新たに寒川SSを引き継ぎ、直営5カ所のSSを運営しています。
当時は燃料油の減販、マージンの圧縮、そして、客数減少に伴う油外販売の低迷という3重苦に悩んでいました。

そこで寒川SSの運営開始を機に、営業方針を一変しました。
まず燃料油の減販を止めなければなりません。
当社SSの商圏内でも競合SSの淘汰が相次いでいます。しかし、頑張って生き残れば、残存利益を得られるとの期待もむなしく、当社は、おこぼれにあずかるどころか、既存客まで奪われています。元売直営SSを始めとした量販店への寡占化が進んでいるのでしょう。

そこで燃料油収益を捨てることにし、当社SSのガソリン価格を市況に合わせました。
これまでは安売り競争に巻き込まれまいと、頑に価格看板を掲示してこなかったのですが、これも改め、堂々と掲げて客離れを防ぐことにしました。
さらに昔懐かしい顧客囲い込みの定番手法「リスト獲り」と「会員カードの発券」を復活しました。

社内からは「時代錯誤」との反対意見が沸き上がりましたが、月販1,700klあった燃料油販売量が月販1,000klを割り込むようになり、肝心の油外収益がまったく振るわない。この現実に直面し、経営トップのわがままでこれを押し通しました。

リスト獲りはまた、車検のダイレクトメール(DM)の復活を意味します。昔はどのSSもDMを発信して車検をよく獲得していたものですが、いつの間にか廃れてしまいました。これはDM効果が失われたわけではなくて、顧客管理コストを削減したSS側の事情によるものです。

さらに車検販売を強化するため、今年1月から車検倍増作戦「GET8000」を大々的に打ち出して新たな試みに挑んでいます。

当社SSが方針転換をして1年が経ちました。表1は、昨年と今年の7月実績の比較です。

燃料油は微増です。減販が止まり胸を撫で下ろしています。
燃料マージンは変動していますが、7月だけを比較すれば昨年並みです。

油外収益は約1,000万円増えました。車検が前年比226台も増加したのが主な要因です。
おかげで昨年7月は直営5店舗のうち4店舗が赤字でしたが、今年7月は寒川SSがわずかに赤字を計上したものの、4店舗が黒字です。もっとも昨年7月は、寒川SSの立ち上げに際して、他の直営SSが多くの人員を割かざるを得なかったという事情もありました。

いずれにせよ、この1年でSSの経営内容が大きく改善したことは喜ばしいことです。燃料指数10以上で喘いでいたのが、今や1.2です。SSの足腰が相当鍛えられたと実感します。


あちこちで当社の車検を見聞きしてもらう

さて、客数減少を食い止めると同時に、客単価を向上させなければ収益は改善しません。
当社は客単価の源を車検に求めました。車検は法定需要なので「買い控え」が起きません。ですから、競合他店に打ち勝ちさえすれば「必ず獲れる」確実性の高い商品です。

だから「使える手はすべて駆使する」というのが、「GET8000」作戦です。
車検客は、既存客(リピーター)と新規客からなります。
かつて当社の車検のリピート率は30%台に落ち込みました。
せっかく車検を獲得しても、その多くは2年後に他社に奪われてしまっていたのです。そこでカスタマーセンターを設置しました。

その主な役割は、
 ①車検後のサンキューコール
 ②6カ月ごとの定期点検コール
 ③次回車検前のコールを行うことです。

なかなか一筋縄ではいきませんが、リピート率は最近ようやく60%程度にまで回復しました。新規客に比べると既存客は圧倒的に低コストで獲得できますから、さらにコールセンターの質と量を改善していきたいと思います。

次に新規客の獲得です。
SSの商圏に向けて、チラシ、看板、ホームページ、紹介など様々な手立てを企ててきましたSS利用客に対しては、さらにDM発信、店頭POPの掲示、人的アプローチが加わります。直営5カ所のSSでリスト獲りを推進した結果、この1年で2万件を超える顧客データが集まりました。
DMが相当の告知集客パワーを発揮していると思います。

とは言え、人間の意思決定や行動を促すのに「これ一つでOK!」という万能薬はありません。「ザイアンス効果」と言って、あちこちで繰り返し接触する情報ほど人間は好印象を持ち信用するものです。ですから、当社も、様々な販促・告知を重層的に投入しています。

以前にも紹介しましたが、当社のSSでは、車検を実施していただいたお客様にアンケートをお願いすることにしました。「どんな告知を見ましたか?」と聞き、接触した媒体すべてに○印を付けていただきます。

表2は、車検客3,935人によるアンケート集計結果です。
合計8,210個の○が付きましたので、1人当たり平均2種類の媒体に接触したことになります。無意識に接触しているケースもあるでしょう。

しかし、まだ少ないですね。
車検は通販ができませんから、テレビや新聞などのマス媒体を活用しても費用対効果が合いません。あくまで車で移動可能な範囲に限ったエリアマーケティング手法により、いかに当社の車検情報に触れていただくかがカギを握ります。

表2を見ると「DM」「店頭POP」「ホームページ」が、多くのお客様の目に触れています。

次いで「店頭おすすめ」が効果的だと分かります。
なかでも「DM」「店頭おすすめ」は、ガソリンを取り扱うSSにしかできない手段です。どちらも個々の顧客に対するダイレクトな情報提供方法であると同時に、クロージング機能も持ちます。
このふたつが競合他店に勝つ最大の武器となるでしょう。


SSの来店客すべてに
車検の早期予約を勧めてみた

「GET8000」活動は、「店頭おすすめ」についても新たな試みをしています。

表3をご覧ください。
1~7月の7カ月間に、SS利用客1万2,219人に車検をすすめ、6,975件の予約を獲得しました。お客様に聞くと「店頭ですすめられた」と思っている方は2割くらいしかいませんでしたが、実際は店頭予約が圧倒的に多いのです。

過去、本連載では「車検時期が2カ月前の顧客に対し、訓練を受けたスタッフが熱意を込めて商談すれば、SSは来店客から5割受注できる」と述べました。これは今でも正しい考え方です。
しかし、SSスタッフは、やれ忙しい、やれ人がいないとなかなか行動を徹底しません。

そこで予約を獲ることしか行わないスタッフを各SSに配置しました。そして、すべての来店客に対し「次回の車検をぜひ当店で予約してください」と早期予約をすすめました。

直営5カ所のSSで7カ月間、計1万2,000回の店頭おすすめをしたというのは、1SS当たり月平均350回の車検商談が繰り広げられたことを意味します。商談に応じていただけないお客様も約2割いらっしゃいましたので、声かけ件数は、月平均440件。既存スタッフだけでは、とうてい不可能な行動量となります。

早期予約は採算に合うのか

これで果たして商売が成り立つのか、と疑問を持たれるかもしれません。
この問題は次の3点に集約されます。
 ①目先の利益につながらない。
 ②将来のことすぎて、お客様がまともに意思決定してくれない。
 ③何カ月も前の車検予約に対し、お客様が素直に入庫してくれるとは思えない。

SS来店客全員が声掛けの対象客となりますが、すでにアプローチした人は車番認識システムが管理しSSスタッフに教えてくれますから、行動のロスがないことを、まず最初に申し上げます。

そのうえでの問題です。
これは先の車検予約をいくら獲っても、今は一銭にもならないじゃないか、ということです。この問い掛けに対し、私は「狩猟型」から「農耕型」へ行動をシフトしてもいいのではないかと考えました。

車検に限らずSSの油外販売は、これまで「狩猟型」が一般的でした。当月の利益目標をクリアすることを第一に、キャンペーン販売を繰り出し、多くのエネルギーを費やします。そして刈り取った後の翌月は、もうその商品はほとんど売れません。

これを計画生産方式に切り替えるのです。そうすると当月の活動対象は、もちろん”収穫時期”の顧客も含まれます。1年後、2年後の収穫を期待して種を蒔き育てていくことも重要な活動となります。

次にの問題です。
前述のように様々な方法で告知しておけば、SS経験のまったくない新規採用アルバイトがお勧めをしても、57%が意思決定してくれました。問題ないでしょう。

そしての問題です。
グラフ1をご覧ください。
車検を早期予約した顧客のうち、3~6月の入庫状況は44%でした。たった数カ月前に車検を予約していただいた顧客の半数以上が入庫しません。あらかじめ事前点検日と車検実施日を約束しているにもかかわらずです。
ましてや1年前、2年前に予約をした顧客の入庫となると、ほとんど期待できないでしょう。

それはそうでしょう。「農耕型」とは、種を蒔いたあと「水と肥料」を与え続けなければ収穫できないものです。つまり、車検予約客に対するDM発信、電話と店頭フォローなどが不可欠です。これがなかなかうまくいきません。例えば電話をして100%入庫させられるスタッフもいれば、0%のスタッフもいます。

これらフォローの内容、頻度、タイミングの最適な「解」を今、試行錯誤しながら確立しようとしているところです。
いずれにせよ現状は、予約獲得率57%、このうち入庫率44%、すなわちSS来店客のうち25%の車検を獲得していることになります。

これは「狩猟型」に例えると、優秀なスタッフが、車検2カ月前の顧客の5割にアプローチし、入庫確実な予約を5割ゲットするのと同等の成果です。しかし、当社も長らく「狩猟型」でやってきましたが、その販売行動量やスキルをマネジメントしていくより「農耕型」の精度を高めていく方が、継続的に高い収穫を得られそうな気がしています。

SSだけに与えられた「給油客」という恩恵を、さらにもっと生かすため、そろそろ私たちSS独自の販売スタイルを確立してもよいのではないかと思います。

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