情報サービス・出版物

  1. トップページ
  2. 情報サービス・出版物
  3. 増田信夫の油外放浪記一覧
  4. 油外放浪記記事

増田信夫の油外放浪記  MIC社長増田信夫 第53回 車検「一点張り」作戦発動!

全方位型の販売強化は困難

当社のSSの2012年の実績を(表1)A列に示しました。
1SS当たりの油外収益は月間840万円、L当たり35円強となりましたが、赤字です。昨年6月から運営継承している寒川SSが、半年間で2000万円の赤字を計上したのが響きました。

それにしても自分の経営能力の低さに、ほとほと悔しく歯ぎしりします。働けど働けど利益が出ないSS事業。ここは一つ虚心坦懐に経営資源を分析してみました。やはり全方位型の販売強化は無理だとの結論しか出ません。経営者も店長も目標を達成しようと躍起になり、ついいろんなことを試し喘いでしまうものですが、ここは一番、車検に集中し起死回生を図るしかないと考えました。

そのようなわけで今年は1月から直営5SSで「車検一点張り」販売活動を開始したことは、先月号でもお話したとおりです。

燃料指数ゼロを目指す

車検一点張り活動に「GET8000」という作戦名をつけました。2012年の車検実施台数は4600台でした。今年はこれを倍増し8000台以上にしようという目論みです。

経営目標を(表1)B列に示します。活動の重点は車検に集約します。車検以外の商品は前年並みとしましたが、油外収益は1.3億円増加することになります。
経費は5,000万増加します。燃料収益は4,000万円減少する厳しい予測ですが、営業利益は何とか黒字になる計画です。
SSの燃料指数はほぼゼロになります。競争力が強化され、高い燃料仕切りを余儀なくされる当社SSであっても、ようやく人並みの戦いができる条件が整うことになります。

「GET8000」が達成されSS競争力が強化されると、(表1)C列の「Attack100M」が夢ではなくなります。Mはミリオン(100万円)、つまり5SSで年間1億円の営業利益を上げたいなあ、という希望です。
「Attack100M」では、燃料指数は大幅にマイナスとなります。この収益力を背景にすれば、適正な市場価格を形成する影響力を持てるのではないかと、一人悦に入ってます。
まあ今のところは寝言に等しいので聞き捨ててください。

第一の矢が放たれた

話題の「アベノミクス」にあやかったわけではありませんが、「GET8000」も三本の矢で組み立てられています(表2)。

第一の矢は、SSの店頭活動で獲得する方法です。他のカーケア業態に比べ、SSは来店頻度が圧倒的に多い。この顧客接点を生かし、3,700台の車検を獲得するという計画です。
昨年末から準備し、1月11日に店頭活動を開始しました。そのコンセプトは「必殺トーシロー青田刈り」です。すなわち、
 ①給油に来店したすべてのお客様に
 ②素人アルバイトが働きかけ
 ③次回の車検の予約をごっそり頂いてしまう

---というものです。

対象は車検満了日が近いお客様だけではありません。来年、再来年の車検のお客様にも予約をお願いします。当然ながら、お客様は「そんな先の話をされても…」と目を白黒します。至極もっともな反応です。
しかし、本日予約していただくことのメリットを告げ、「キャンセル、変更OKですから」とお願いすると、半数以上の人が応じ、車検日程を押さえてくれます(表3)


28日間で2,000件の車検予約を獲得できました。1日当たり70件です。3月31日までのキャンペーン期間に5,000件の車検予約を獲得しようと目標を掲げていますが、今のところ達成できそうです。

未経験者に車検を獲らせたい

給油に来店したお客様に対して車検の予約を獲得するのは、実はなかなか難しいものです。アプローチから商談、クロージングに至るまでの手順や、セールストーク、そして、車検証を見せていただきながら費用見積もりを出すことができるようになるためには、しっかりした研修とOJT(現場教育)が不可欠です。

訓練を実施すると、コンスタントに4割以上の確率で受注できる適性を持ったスタッフが現れます。こうしたスタッフを私たちは「車検名人」と呼んで評価しています。通常、今月・来月・再来月に車検が満了するお客様は、1日当たり10人も来店しません。ですから、その時だけ少数精鋭の「車検名人」が対応すれば問題ありません。

月間50台程度を獲得するのであれば、車検名人が1人いれば十分です。しかし、「GET8000」を達成するためには、1SS当たり月間100件以上を受注しなければなりません。そこでキャンペーンスタッフ(アルバイト)を採用し、各SSに投入してみました。 SS未経験の素人でも車検が獲れるやり方を模索してみたのです。

宝くじで店内誘引

その手順が(図1)です。お客様が来店すると、まず車番認識システムが車検満了日が近いかどうか、車検リピーターかどうかなどを識別します。
車検満了日が近いお客様なら「車検名人」の出番です。各SSに1~2名が配備されていますが、28日間で605件の車検予約を獲得しました。

それ以外のお客様には、宝くじ引換券を渡します。「あちらで宝くじの当選発表をしています」と誘うと、概ね8割のお客様が店内へ足を運んでくれます。そこには、くだんのアルバイトがポツンと立ち、待機しています。お客様に宝くじを渡し、景品を差し上げ、そして、アンケートをお願いします。すると、ほとんどの人が座ってアンケート用紙に記入してくれます。

このアンケートには当店の車検の魅力がしっかりアピールされています。
そして最後の質問には「予約金不要、ドタキャンOKですから予約いかがですか?」とあります。
半数の人が「仕方ないなあ」と車検を予約してくださるという流れです。

素人アルバイトが応対するにもかかわらず、車検という高額商品を予約してくださるお客様が半数もいるのは嬉しいことです。つくづくSSという業態がもつ顧客接点の多さに感謝します。顧客接点の活用法は、まだまだSS業界で開発の余地があるのではないでしょうか。

日本人は心根の優しい人が多く、相手に対し、正面切って「NO」ということをできるだけ避けたいと考えている気がします。ですから、リスクを負わなければ、とりあえず「YES」と返答してしまうのだろうと推測しています。そんな優しいお客様と、クルマに関して、直に頻繁に面談できる、そんな好条件を有する業態はSSしかありません。
しかし、SSの弱みは、いつも販売スタッフの数が不足していることです。効果的な戦術であっても、それを実践する人がいなければどうにもなりません。当社もまったく同様です。

50%以上の実入庫を実現することがキモ

そこで短期アルバイトを募集しました。
短期なら少し高めの時給を設定すればいくらでも集ります。

(表4)は短期アルバイトを投入した時の費用対効果シミュレーションです。横軸は時給、縦軸は車検予約の入庫率です。当社は1,250円で募集しましたが、もし1,600円くらいの時給を提示すれば、短期アルバイトは全国どこでも山ほど集まるでしょう。その中から元気のよい、1日当たり10件以上の車検予約を獲れる人だけ採用します。基本給+成果給にするともっと頑張ります。

車検獲得1件当たりの許容経費(CPO)はいくらでしょうか。私は1万円が限度と考えています。もちろんその経費は低いに越したことはありません。CPOを決める要因は人件費、予約獲得件数、そして入庫率です。
仮に、車検1台当たり3万5,000円の粗利を得られるとすると、入庫率が30%以上であればキャバクラ並みの3,000円の時給を払っても、入庫1台当たり獲得費(CPO)は1万円を下回ります。
入庫率が50%なら、例え時給が3,000円でも車検1台当たりの獲得費は5,000円を下回ります。十分に採算が合います。

もちろんこんな簡単な仕事に3,000円を支払うつもりは毛頭ありませんが、SSが、いとも簡単に車検を獲得する方法が見つかりそうな気になってきました。
SS業界がこぞってこの作戦を採用すれば、カーディーラーやコバックなどは商売上がったりになるでしょう。
そこで次の課題です。1年先、2年先の車検予約は素人アルバイトでもどんどん獲得できます。その後さらに50%以上の入庫をしてもらうためには継続的なフォローが必要です。郵便、電話、Eメールなどを駆使して、その方法を何としても探し出す旅にまた出かけます。

油外放浪記一覧へ戻る