情報サービス・出版物

  1. トップページ
  2. 情報サービス・出版物
  3. 増田信夫の油外放浪記一覧
  4. 油外放浪記記事

増田信夫の油外放浪記  MIC社長増田信夫 第50回 低マージンに追い込まれた私の放浪、迷走、七転八倒

「市況対応ファンド」で辛うじて生き残る

あるかなきかのガソリンマージンの中で生き残るため、油外収益をもっと稼ぐしかない。
油外の基幹商材は車検だ。SSの優位性を生かして車検を獲るには、来店客へのアプローチが第一。だから「SSの利用客数を増やしたい」-。

というわけで、当社の直営SSは数カ月前からガソリン価格を市況に合わせ、フリー客の会員化に勤しんでいます。「お蔭様で赫赫たる戦果が上がっています」 と書き綴りたいところですが、現実はというと、この連載タイトル通り放浪状態です。
例えば、埼玉県の所沢SS。7年前に商社直系から運営を引き継いだ店です。当初から予想していたものの、いざ出店してみると、そこはまるでシリアの内戦状態でした。どこから弾が飛んでくるか分かりません。主要な元売子会社の直営店が軒並み出店し、広域大手の量販店SSも市場に参入していて、日々凄まじい戦いを繰り広げています。

「こんな戦争に巻き込まれてはたまらない」と周りのライバル業者を刺激しないよう採算販売を気取っていたら、販売量どころか利益さえも、面白いように(?)減ってしまいました(グラフ1)

  

運営継承する前は、安値で月間600kl以上を販売していたSSです。しかし、仕入れの優位性のない当社は、ガソリンの安値競争からは一歩引き、「油外で稼ぐ」のだと血気盛んに勇ましく当該店舗を引き継ぎました。
油外商品を購入していただけないお客様は他店に流れても止むを得ない、なんて夕力をくくっていたら、あれよあれよと燃料油販売量は減り続け、とうとう月販200klを割り込む体たらくです。
これでは肝心の油外販売がままなりません。やはり「客数」あっての「小売り業」です。

本音を言うと何度も投げ出したい気持ちになりました。しかし、社員の職場をそう簡単に消滅させるわけにはいきません。こうなれば逆ザヤを覚悟で客数を確保しなければ、会社もろとも撃沈すると判断し、一転、市況価格に対応することにしたわけです。
4円/Lの口銭で減販(2010年)する。さらに1.8円/Lの口銭でも減販(2011年)しました。L当たりの口銭がマイナス1.8円という段に至り、ようやく顧客の流出は止まりました。マイナス1.8円の口銭とは、恐ろしいばかりの淘汰戦です。25円/L以上の油外収益を稼ぐ所沢SSでさえ、赤字基調から脱出できません。

このままでは破綻するので、社内に「市況対応ファンド」を立ち上げました。ガソリンマージンをL当たり1.5円と想定し、直営各SSから0.5円ずつ拠出してもらいます。そして、1.5円/Lを割るSSにはこのファンドから「利益補填」が提供されるというわけです。
元売会社や投資家が出してくれるものではありません。「タコの足食い」のように身を削りながら利益を確保するための防衛策を講じています。

苦戦が続く寒川SS

「表1」は、当社直営4ヵ所のSSの10月実績を前年同月と比較したものです(今年6月に引き継いだ寒川SSは除く)。
市況対応したおかげで燃料油の減販は止まり、わずかに販売数量は伸びました。しかし、燃料油粗利は半減です。
油外収益が増え、また、経費削減の努力もあり、経常利益は4SS合計で144万円改善しました。でもまだ赤字です。ガソリン販売量が月平均250klのSSが、同900万円の油外収益を上げているにもかかわらず、赤字から脱却できないのが実態です。

6月に引き継いだ寒川SSはどうでしょう。10月の燃料油販売量は250kl。フリー客に対するリスト獲得率は10月も8割をキープしています(グラフ2)

何分にもフリー客数が少ないですが、会員数は4ヵ月間で累計6500人となりました。これは月間200人以上の車検見込み客に対し、ダイレクトな販売促進が行えることを意味します。10月の車検は45台、油外収益は280万円でした。
12月には車検70台、油外収益500万円を計画しています。果たしてどうなることやら、スリリングな日々が続いています。

追い込まれた末にレンタカー専業へ進出

燃料油収益が当てにならない。油外増販も客数の回復には時間を要する。新店舗も立ち上げから苦戦しているという情けない状況の中、レンタカーには一層期待せざるを得ません。なぜならレンタカーは、SSの利用客数にもスタッフの数や質にも依存しないからです。そして1SS当たり月平均300万円以上を稼ぎ出すレンタカーは、油外収益に悩み苦しむ私達にとって文字通り「干天の慈雨」でした。

ところがすべて物事には限度があるものです。4SS合計で150台、月商1500万円くらいで限界が見えてきました。これ以上車両台数を増やしても、現状の立地条件や市場環境、駐車場のキャパシティ、店舗面積の制約などから費用対効果の悪化が予測されます。
このうえはレンタカー営業店舗を拡大するしかありません。
SSから独立した「専業店」を試してみようと考え、JR新横浜駅前にレンタカー直営店を出店したのが3年前の春でした。
ガソリン市況の悪化に追い込まれたSSが、SS以外に収益の源泉を求め、トヨタレンタカーやニッポンレンタカーと同じ土俵に上り、活路を見い出そうというのです。

働けど働けど・・・

さすがJR新横浜駅は好立地です。お客様が殺到しました。車両を用意すれば、青天井で売り上げが伸びました。
車30台で300万円、車50台で500万円、車70台で700万円、車100台で1000万円といったペースです。車500台なら月商5000万円も可能かなあと能天気に考えたりしました。

ところがヘンなのです。いくら売り上げが増えても利益がほとんど出ないのです。SSでやっているときはほとんど気にならなかった店舗費、設備費、人件費などの固定費が、重く利益を圧迫します。特に人件費の重圧が大変です。

SS兼業なら、車30台程度を運用しても「埋没コスト」となりますから、人件費は増えません。しかし、専業店では、お客様がいてもいなくても人件費が発生します。例えば、朝、車20台が一斉に出発する日はスタッフを5人くらい配備しなければ、お客様のストレスが爆発します。ただそれもほんの一瞬のことなので、お客様が出払った後は何の仕事もありません。

当初、貸し渡し1回当たりの人件費を500円程度と楽観的に考えていました。しかし実際には、待機時間が多いため、3000円近く掛かっています。
売り上げの半分近くを人件費が占めていては、利益を出すのは至難の業です。それから駐車場の問題もあります。JR新横浜駅周辺の駐車場は、車1台当たり2万~2万5000円です。車両を増やせば増やすほど、駐車場経費が増加するわけですが、それだけではありません。街中の店で車両を増やすと駐車場はあちこちに分散し、営業所から遠くの場所に確保しなければならなくなります。往復30分もかかっていては無駄な人件費がさらに増えます。
というわけで「働けど働けど・・・」の状態に陥ってしまいました。

私が「専業レンタカーはお勧めしません」と強調しているのは、こういう理由からです。もし専業でやるなら、もっと違う戦い方-すなわち、法人開拓が必要です。新横浜店では、ローラー作戦を展開して法人客を獲得し、代車や長期レンタカーの需要を取り込むようになりましたが、それでやっとの事で生きながらえることが出来ています。しかし、それは私か大好きな「ほっとけ販売」とは正反対の「コテコテ営業」の世界です。

冬将軍の前にあえなく敗退した新千歳空港店

都市部の駅前専業店に限界を感じた私は考えました。空港立地はどうだろうかと。
一般的に空港は原野を切り開いて作られます。ですから、二束三文の駐車場が、まとまって大量に確保できるに違いない。あぁこれは名案と、おっちょこちょいにもすぐに千歳空港の近くのショッピングセンターと交渉を始めました。

その駐車場収容台数は何と2000台。「好きなだけ使ってください」という破格の条件に飛び上がって喜んだ私は、早速、車30台を配備し、現地スタッフを採用しました。昨年5月のことです。 夏が来ました。果たして、お客様が殺到しました。30台のクルマはあっという間に満杯です。「ドヤ顔」が見えてきますか。
でもわずか車30台ですから、100%近い稼働率の裏には、その何倍もの機会ロスが生じました。とても悔しい思いをしました。

ところが好事魔多し。あっという間に秋がやってきました。需要は激減です。30台しかないクルマが、毎日お茶を挽く有り様です。さらに冬季になると、タイヤも冬用に履き替え、バッテリーも冬季用を装備します。予想外の費用が掛かります。水道も凍りつき、洗車するのもひと苦労です。雪かきの労力も必要とします。北国の大変さが骨身にしみました。ほうほうの体で撤退しました。雪国はもうこりごりです。しかし、懲りない私は「南国の空港で試してみよう」と今度は、鹿児島空港に出店しました。新千歳空港から鹿児島への転勤辞令を受けた店長は目を丸くしました。

「レンタカー200台」調達作戦の地獄図

新千歳空港店の轍を踏むまいと、鹿児島空港店では、いきなり200台の車両を配備せよと大号令をかけました。
これが地獄の始まりです。あまり知られていませんが、レンタカーというのは、どこかで売っているわけではありません。新車ならディーラーが納車してくれますが、中古車は仕入れた後、レンタカーに作り上げなければなりません。それを経営者である私か十分に考慮しないまま、迂闊な命令を出してしまったのです。

オークション会場から車200台を調達するのも大変ですが、それが連日、怒濤のように当社の仲町台SSに搬入されます。そこからがもっと大変です。 車1台1台を点検し、部品交換や補充調整し、ナビの基台やETCを取り付けます。キズやヘコミを直し、きれいに磨き上げます。

こう書くとそれまでですが、レンタカー1台を仕上げるのに2~3日を要します。200台ならざっと500人日。これを当社の仲町台SSが、夏の盛りに不眠不休で頑張ってくれました。
200台の車両置き場を確保するのも苦労しました。SS内は常時レンタカー用車両であふれ、コインパーキングも利用しました。それだけで月に数十万円が掛かってしまいました。駐車場オーナーは臨時ボーナスに大喜びだったことでしょう。

ともあれ、仕上がった車両は次々に船便で鹿児島に送ります。すると今度は、この大量の車両をすべて登録するため、鹿児島空港店がキリキリ舞いです。
そんな修羅場の6月を経て、いよいよ7月、決戦の時を迎えました。

「鹿児島夏の陣」の負け戦

さあ、鹿児島空港には大量のレンタカーが配備されました。
月間2000万円のレンタカー売り上げが期待できます。実際にそうなれば、仲町台SSや鹿児島空港店のスタッフの努力が報われるだろうとワクワクしました。

ところが、なかなかレンタカーが稼動しません。結局、7月の売り上げは500万円、稼働率は25%です。でも本命は8月。何とかフル稼働してほしいという祈りもむなしく、8月の売り上げは1000万円弱、稼働率50%という結果で終わりました。
大赤字だけが残りました。まさに骨折り損のくたびれ儲けです。その原因として考えられるのは、開店してから日が浅く、客数が十分に確保できていないにも関わらず、無闇に車両を配備したこと。つまりは、私の性急さにつきます。

そうなのです。格安レンタカーと言えども、顧客をじっくり増やしていかなければいけないのです。鮭の遡上する川にヤナを張るような心構えで安直に車両を配備した私かひたすらに浅はかでした。

さて秋になりました。鹿児島空港のレンタカーを適正台数に是正するため、半数の車両を横浜に回送する作業がようやく完了しました。
油外を追い求め、懲りない私の放浪は、なおも続きます。

油外放浪記一覧へ戻る