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増田信夫の油外放浪記  MIC社長増田信夫 第48回 フロントエンドにガソリン、バックエンドに車検

リスト取りの効果がじわじわ現れる

6月に寒川SSの運営を引き継いだのを機に始めた「帰ってきたリスト取り作戦」ですが、じわじわ効いているようです(グラフ1)

季節要因もあるのでリスト取りだけの効果とは単純に言えませんが、全店合計で毎月100kl以上増販しているのは、私もSSスタッフも気持ちが良いものです。

まだSSによってリスト獲得率にバラツキが大きいのは悩ましいところですが、目下、立ち上げに注力している寒川SSはアプローチした顧客件数の8割方を獲得できています。
リスト取りの目的は、かつては現金会員の囲い込み、すなわち燃料油増販でした。今は油外購入客、とりわけ車検販売見込み客の拡大を狙いとしています。

マーケティング用語で「フロントエンド商品」「バックエンド商品」という言葉があります。
フロントエンド商品とは、顧客を吸引するための商品です。例えば、ドラッグストアの店頭に並ぶトイレットペーパーや飲食店のランチメニューはフロントエンド商品です。
バックエンド商品とは、利幅が大きくて売りたい商品です。ドラッグストアなら化粧品や健康食品、飲食店ならディナーです。

SSで言うと、ガソリンはフロントエンド商品、車検や車販はバックエンド商品です。
つまりリスト取り活動とは、フロントエンド商品の購入客を囲い込み、その一方で、バックエンド商品の購入に結び付ける役割を担います。

寒川SSの、7月および8月の営業実績を(表1)に示します。
まだまだですね。
10年前なら、SSのオープンともなると多額の販促費を投入し華々しい結果を求めたところです。しかし今回は、結果を追い求めるというよりむしろじっくり腰を据え、地道ですが、既存スタッフが可能な範囲内でその効果を累積する「リスト取り」を活動の中心としました。
ですから、目先の結果は求めず、向こう3年をかけて油外収益を月販1000万円にしたいと考えています。車検は月間150台が目標です。

ところでSSにとって車検の販売対象客は次の3種類です。
①SS利用客・・・店頭で商談して獲得。
②商圏客・・・チラシ、ミラーリング、インターネットなどで獲得。
③リピーター・・・ダイレクトメール(DM)や電話で獲得。
リスト取りは、①のSS利用客を増やすことにより、来店する車検見込客を増やすために行っているわけです。とは言え、今後のSS運営を考えると、店頭で獲得できる車検台数は、次第に減少すると考えざるを得ません。

理由のひとつは、SSスタッフの弱体化です。昔に比べると、当社直営SSはその数と質のいずれもが明らかに落ちています。今後もこの傾向は変わらないでしょう。
もう一つの理由は、顧客の来店頻度が下がっていることです。こちらの方がより深刻な問題です。かつて平均的な顧客は、給油のために毎月2~3回来店してくれました。しかしエコカーが普及し、来店頻度は毎月平均1~2回に減少しています。数カ月に1回しか来店しないお客様も増えました。

こうなると、来店時をキャッチしてお勧めするだけでは、タイミングを逃してしまいます。
カーディーラーや車検専門店は、車検満了日が近い顧客に対し、チラシ、DM、電話などにより激しい販売攻勢をかけます。場合によっては訪問営業しています。そのなかで、SSがのんびりと来店時の販売チャンスを待っているだけでは、戦わずして負けてしまうでしょう。

こうしたマイナス要因を補ううえでも、リスト取りは意味があります。SSに来店しなくても顧客個人にピンポイントで告知できるからです。

「後方販売」を強化中

かつて当社がリピーターコールを怠った時、車検のリピート率は30%でした。新規客の獲得にはSSは必死で頑張りますが、販売後のフォローは不得意です。まして店頭に来てくれない顧客に対して、電話やDMで遠隔コミュニケーションをとるのは、かなりのストレスを感じる業務です。

そこで当社は、SSスタッフに頼らない「後方販売組織」を強化しています。カーディーラーや車検専門店に負けない電話営業、車検後のサンキューコール、定期点検お勧めDMの発信などを実施します。コールセンター機能を充実させ、顧客からの問い合わせや苦情もSSを介さず、ダイレクトに引き受けます。

こうした後方活動は、リピーターだけでなくSS利用客からの新規獲得にも有効でしょう。SS店頭で獲得したリストが威力を発揮します。
寒川SSは、6~8月の3ヵ月間で5000件のリストを獲得しました。スタッフ数に限りがあるため、すべての新規客にアプローチできているわけではありませんが、この調子で継続すると、半年間で1万件、1年間で2万件の顧客リストが累積します。2万件の顧客リストがあると、車検見込み客は月間700件となります。後方支援部隊によるDMや問い合わせ対応と店頭活動の相乗効果により、このうち2割を獲得したいと思います。

そして車検後は、サンキューコール、6ヵ月点検、12ヵ月点検、そして次の車検の優待など、店頭スタッフも後方部隊もフォローします。
その際、ガソリンが有効な武器になるかもしれません。「車検をリピートするほどガソリンが安くなる」とし、ピンポイントで特別価格を提供するわけです。カーディー・ラーや車検専門店には真似することはできません。航空会社のマイレージみたいですが、当社のように燃料油調達力の劣る弱者SSは、顧客個々人から得られる油外収益も含めたトータル収益を考えなくてはなりません。

石油連盟が毎年実施しているユーザーアンケートによると、「SSを選ぶ理由」のトップには「近くにある」「価格が安い」が挙がります。この2つの理由で7割以上を占めます(グラフ2)。   
  

ガソリンは「最寄り品」ですから「近くにある」と回答する人が多いのはもっともですが、同じくらいの人が「価格が安い」SSを選んでいます。消費者の 価格選好性が強くなっていることは明らかです。

当社は1995年に第1号SSをオープンして以来、これまで価格看板を掲示せずにやってきました。市況に振り回されることを避けたいと思ったからです。価格看板を 掲示しなくても燃料油は市況に対応し、そのうえで、ポイントセービングや付加サービスによって安値イメージを訴求できた時代でしたから、特に問題はありませんでした。
しかし、最近は燃料油口銭の下落により市況対応がままなりません。もし価格看板を掲示すれば、周辺SSより値段は高めに映り、顧客減少に拍車がかかるだろうと半ば諦めてもいました。

ところがSS運営18年目にして、当社は初めて価格看板を掲示することにしました。燃料油価格に対して消費者が過剰に敏感になっており、価格看板を掲示していないSSは気持ち悪がられている、敬遠されていると感じたからです。それに新規客動員のためにも今の時代、価格看板は一役買うだろうと判断しました。

もちろんガソリン価格は周辺市況に合わせます。おかげで口銭はほとんどありません。ガソリンは、もはやフロントエンド商品どころか、車検を売るための販促品ですね。

新規客が増えると固定客が増える

さて、レンタカーのことを少し述べておきます。当社はSSおよび専業実験店を合わせると、現在9ヵ所の店舗でレンタカーを提供しています。その合計売り上げは今年8月、とうとう5000万円を超えました(グラフ3)。 グラフ3を見ると分かるとおり、レンタカーは毎年8月にピークを迎えます。そしてピークを過ぎると元に戻るのではなく、売り上げのベースが一段上がります。つまり、需要期に多くの新規利用客を獲得したことにより、その後リピーターがドンと増えるわけです。

 

地元客をターゲットとした低価格レンタカーですからリピーターが累積します。出張ビジネスマンや観光客(すなわち一見客)をターゲットとしたレンタカーでは、これほどドラスティックな変化はないでしょう。 昔、神奈川県の量販SSが「週末値引き」を繰り返し実施しました。それを見た競合店は、「黙っていてもお客が来る週末に値引きするのは愚か者」と嘲笑しました。しかし、「客数が多い時」により多くの新規客を呼び込んだこの量販SSは、結果的に固定客を増やし、大きく販売量を伸ばしました。

SSもレンタカーも、販売実績を支えているのは固定客です。しかし、新規客を取り込まなければ固定客も増えません。
いつの時代も、新規客の動員と顧客の固定化を促すのは商売の基本ですね。

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