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増田信夫の油外放浪記  MIC社長増田信夫 第47回 SSのロイヤルカスタマーを増やしたい

車は移動手段

前回の本稿で、週刊ポストの記事を紹介しました。「マイカーは必要か」と題し、「仮に200万円の乗用車を買うと、ローンや税金、メンテナンス、駐車場代などで年間80万円のコストがかかる」というものです。

5年間で総額400万円です。しかし「5年落ちの車の下取り価格はタダ同然。つまり、生涯かけて3000万円、家が1軒建つほどの出費をして、何の資産も残らない。同じコストを掛ければ、タクシー初乗りなら年間1100回、レンタカーなら年間100日間利用できる」というものでした。

記事では、一般的なレンタカーを想定していますので、低価格レンタカーなら年間200日間利用できます。
先日の朝日新聞にも異なる試算が取り上げられていました。「車を所有するより、レンタカーとタクシーを利用する方が、年間20万円以上もお得。車を手放すと節約効果は大きい」というものでした。

こういう価値観の形成とその現れが認められることを、自動車関連業界でメシを食う私たちは頭に入れておく必要があるでしょう。
「車を持つことがステータス」という価値観は過去のものとなりました。
しかし、「車で自由に移動したい」という欲求は、昔も今も変わりません。その選択肢が多様化し、「格好良さ」や「持つことの喜び」より、コストパフォーマンスが選択基準の多くを占めるようになったということでしょう。

SSが車を販売・レンタル・リースすることによって「移動手段」を多様に提供できるようになったことは、「将来への備え」になったと思います。ユーザーの反応や使い方を見ていると、「車」というものに対していかにニーズが多様化しているかを実感します。

資源エネルギー庁の予測では、今後18年でガソリン消費は6割減少するといいます。「ガソリン購入者」のみをお客様ととらえていると、私たちSSの市場は狭まるだけです。しかし、お客様を「車(移動手段)の利用者」と考えれば、対象マーケットは広がります。

ガソリン減販が車検収益拡大にブレーキをかける

(表1)は、当社が運営する4ヵ所の直営SSの月間粗利益の構成を過去5年にわたって示したものです。

燃料油販売量は、減販に次ぐ減販。仕切り価格には「ブランド料」が織り込まれ、市況対応に苦慮する価格設定を余儀なくされています。燃料油収益はさらに激しい減少を示し、5年間で半減しました。

このような状況下でSSが生き残る道は、「油外収益の確保」しかありません。そのために私たちは車検を始め、車の販売、買取、レンタル、リースヘと、事業領域を拡大する努力を続けてきました。しかし、ここにきて状況が大きく変わりました。油外収益の伸びにかげりが見え始めたのです。

その大きな要因は、車検収益が頭打ちになったことです。車検収益は1SS当たり月間500万円を越え、油外収益の大部分を占めるに至りましたが、ここ5年間はほとんど伸びていません。車検を獲得する方法論は5年前より格段に洗練されているにもかかわらずです。
原因は明白です。SS利用客数の減少にほかなりません。

利用客数の減少を補うために油外の拡大に注力してきたわけですが、皮肉なことに客数減少が油外収益を伸ばすまいと自分の首を締めているのです。
5年前にはなかったレンタカーという新たな収益は、月間1000万円を稼ぐまでになりました。しかし、商圏の認知度が高まることに期待する外はなく、やや鈍化傾向です。低価格レンタカーのマーケットも無限大ではありません。所詮SS油外収益の「ポートフォリオ(資産配分)のひとつ」に過ぎません。

現状のレンタカー収益は1SS当たり月間250万円ですから、その収益貢献度は車検に遠く及びません。このままSS利用客の減少を指をくわえて見ていては、近いうちに総粗利益はとめどなく、減少するでしょう。
こうした危機感から、SSの集客大作戦を展開しました。

まずは燃料油購入客の絶対数を拡大することから開始します。そのための方法論は前月号でも述べた古式ゆかしい、丸ごと「リスト獲得&DM作戦」というわけです。
その目的は、第一に車検客を、第2に車検以外の油外購入客を確保することです。
いずれにせよ、「油外見込み客の拡大」を目的とした集客活動ですから、「一定額の販促費を投入しても採算は合う」という計算のもと、6月にオープンした寒川SSからリスト取り活動をスタートし、さらに7月からは全店で実施しています。

首尾よくSS利用客が増えれば自動的に車検見込み客も増え、同じく車検台数が増えると単純に考えていますが、客数アップ活動にはもうひとつの狙いが込められています。それが「ロイヤルカスタマーの増大」です。

油外販売は顧客を仕分けることから始まる

SSのお客様には2種類あります。燃料油しか買わないお客様と、油外も買ってくれるお客様です。そして、その集客方法は異なります。
「燃料客」の集客は比較的シンプルです。集客要因の大部分が店舗の「立地」「設備」「運営力」で占めます。「運営力」では、 とりわけ「価格競争力」がものを言います。そして、そのためには、仕入れや運営コストをいかに低く抑えられるかがカギを握ります。

「油外客」の集客とは、日常のメンテナンスから車検、鈑金、中古車販売、廃車引き取り、あるいは必要な時だけレンタルするなど、車(移動手段)にかかわるすべてを任せてくれるお客様を増やすことです。つまり、SSのカーケア機能を認知し、信頼し、利用して満足していただくお客様を増やすことであると言い換えられます。

そのためには、来店のたびに、人・ポスター・看板などを介してお客様とのコミュニケーションを深めなければなりません。
来店しない時にも折り込みチラシやDM、Eメールなどでコミュニケーションをとる必要があります。

コストも掛かるし非常に気の長いマーケティング活動になりますが、これを可能にするためには、「燃料客」と「油外客」を明確に分けることが不可欠です。そのオペレーションが、いわゆる「ロイヤルカスタマー(VIP会員)制度」です。

当社がSSに参入してから17年が経ちます。SS運営を開始するのとほぽ同時に「カーケアクラブ」と称し、ロイヤルカスタマーを囲い込む制度をスタートしました。3000円の入会金を支払った会員は、ガソリンも油外商品も安く買えます。
このため、全顧客の半数近くが加入するまでに至りました。今思えば、全顧客の「半数を囲い込んでしまった」ことが躓きの始まりです。数が多すぎて、一人ひとりに固有の接客ができません。「良いお客様」も「そうでないお客様」も、同じレベルの接客になってしまいました。せっかく作った「カーケアクラブ」ですが、当店に高いロイヤリティをもつ「ロイヤルカスタマー」を育成する機会を自ら放棄してしまったのです。

もうひとつの失敗は「車検」を実施してくださったお客様を「カーケアクラブ」の会員に登録してしまったことです。SSで油外を買うきっかけを与えるものには次の2種類があります。ひとつは、他店でも販売しているにもかかわらず、「このSSを選ぶ」気持ちがあって、必要な商品(オイル、タイヤ、バッテリーなど)を買っていただく場合です。

年間に一定額以上の油外収益を安定的に当店にもたらしてくれるロイヤルカスタマーを、特に当社SSは「プラチナVIP」と呼んでいます。
もうひとつは「駆け込み寺」としてSSの油外サービスを利用するケースです。パンク、バッテリーあがりなどの場合、どこでもいいから手近なカーケア施設に飛び込みます。そして、多くの場合、油外商品の固定客にはなってくれません。

実は車検も「駆け込み寺」的なスタンスでやってくるお客様が多い商品なのです。カーディーラーや整備工場の高価格な車検に閉口している人が多数います。そのうち少なからぬ人がSS車検に逃げ込んで来ます。
これは「一時の雨宿り」的な感覚ですから、決して「このSSを選ぶ」というロイヤリティを持っているわけではありません。
車検の支出金額が多いからと、このような人を「プラチナメンバー」にしてしまったのが間違いだったのです。SSスタッフは、プラチナメンバーに接客するたび期待を裏切られます。これでは相互の信頼関係を育むことはできません。

先日、当社が運営する仲町台SSのカーケアクラブ会員の中から、継続的に月間5千円以上(年間6万円以上)の油外を当店に支出していただいている真のVIPを抽出してみました。
何とたった350人しかいませんでした。同SSで販売活動を行わずに上がるオイルやTBAの月間粗利は約200万円です。そしてこの収益は、たった350人のプラチナVIPが支えてくれていることが明らかになりました。
この収益を「プラチナ収益」と呼びます。 プラチナVIPを増やすことは、オイルやTBAだけでなく、鈑金、車検、ひいては車の買取、販売、レンタル、リースといった油外収益全般の増加に直結します。

仲町台SSの場合、固定客は約7千人ですので、現在のプラチナVIPはわずか5%です。
これを次の2つのステップで増やそうと考えています。
  ①燃料油の固定客を増やす。
 ②プラチナVIPの比率を増やす。
例えば、固定客数を2倍の1万4000人に増やせば、プラチナVIP比率は5%のままでも700人に倍増します。1人当たり5000円の粗利なら、200万円だったオイルとTBA収益は350万円に増加します。

次に、VIP予備軍である「カーケアクラブ」会員に対して定期的なフォローを実施します。

DMを発信したり、店頭でウィンドウオッシャー液などを補充したり、タイヤの空気圧点検などのサービスをします。ドライバーが最も気にしている愛車のメンテナンスはタイヤの空気圧です(グラフ1)

ですから、VIP会員に対してピンポイントで声かけをすると、とても喜ばれます。
こうして5%のプラチナVIP構成比を20%にまで高めようと考えています。そうなると、プラチナVIPは2800人、プラチナ収益は月間1400万円になります。

商圏内にもしっかり販促費を投入する

そういうわけで現在、当社が運営する5ヵ所のSSで、まずは固定客を増やす活動を始めています。
顧客リストを獲得した後、3回以上継続的に来店してくれた会員を固定客とみなし、一定期間DMを発信し続けます。オイル交換やタイヤローテーションといった取っかかりやすい油外商品を会員サービス価格で訴求します。

車検が近づいた会員には車検を案内します。DMによる車検のヒット率は高いので、こうした販促コストは車検だけで十分に回収できます。
今のSS業界の風潮からすると時代錯誤と思われるかもしれませんが、当社では、1カ所のSS当たり年間500万円の販促予算を計上しました。SS以外のカーケア業態では当たり前の予算額だと思います。

DMだけではありません。メディアミックスによって、商圏内の認知度向上を図ろうとしています。以前にも述べましたが、当社のSSは、すでに総収益に占めるガソリン収益の構成比は10%以下です。

見た目はどこにでもある「ガソリンスタンド」です が、その実態は「カーライフーサポートストア」なのです。
「ガソリンスタンド」というイメージを払拭するため、このたびSSの愛称をレンタカーブランドにちなんで「ニコニコステーション」とすることを目論んでいます。
(表2)は販売計画を示しますが、今後3年をかけて商圏内で、その認知度を高めたいと思っています。

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