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増田信夫の油外放浪記  MIC社長増田信夫 第44回 SSのシーズとマーケットニーズが合致するビジネスを目指す

ガソリンに依存しない商品にシフト

当社は4ヵ所のSSを運営しています。横浜市内の住宅地に2ヵ所、神奈川県と埼玉県の郊外に1ヵ所ずっあります。3月の実績がまとまりましたので、今回はこれを材料に話を進めます(表1)

(1)昨年3月は震災後のガソリン供給不足に見舞われましたが、今年3月の販売量はさらに悪化し、4SS合計で前年同月比70kl減販しました。燃料油口銭も変化はありません。

(2)燃料油滅販のあおりを受け、洗車、オイル、その他メンテナンスも減少する一方です。 SSの伝統的な油外商品は「給油のついでに買ってもらう」という類いの商品であるため、どうしても客数減少と不況による「買い控え」の影響を受けてしまいます。

(3)増えたのは、車検、中古車売買、中古車レンタカー、そして昨年はやっていなかった中古車リースです。これらはSS利用客数の減少にほとんど影響されない商品です。車検は法定需要ですし、車販、レンタカー、カーリースの需要はユーザーのライフスタ イルの変化によるものです。これらを総称して「自動車4品」と称しています。

(4)もっとも、車検は微増に止まっています。3月は需要期ですから、販売研修を実施してスタッフをブラッシュアップし、SS店頭で予約キャンペーンを実施したり、「ミラーリング」という商圏客に対するダイレクト告知活動を5年ぶりに再開しました。その効果が即現れなかったのは残念ですが、今後に期待しています。

(5)自動車4品が成長したおかげで、燃料油および従来型油外の減販の穴を埋めることができ、総租利は570万円増加しました。租利構成の変化を示したのが(グラフ1)です。
総租利の87%を自動車4品が占めます。燃料油はわずか13%しか貢献していないことに驚きます。

当社のように資金力も仕入れ調達力もないSSは、ガソリンで勝負することができません。 少ないボリュームでわずかなマージンに甘んじるしかない以上、ガソリンに対する依存度は低くなります。 ガソリンは「集客源」としては魅力ですが、経営努力とは無関係に、市況によってあっさり収益が激減する厄介な商品でもあります。そこでガソリンに依存しない商品、しかしながらSSの設備、技術、人材を存分に生かせる商品のラインナップを目指し ています。それが、車検、中古車売買、中古車レンタカー、中古車リース、いわゆる「自動車4品」です。

車検ほど売りやすい商品はない

SSの油外商品は、「声かけをして売るもの」と「放っておいても売れるもの」、この2つがあります。前者を「プッシュマーケティング」、後者を「プルマーケティング」と称しますが、私はもっと分かりやすくかみ砕いて、前者を「人力(じんりき)販売」、後者を「ほっとけ販売」と呼んでいます。
従来型油外商品は「人力販売」です。給油来店客に声かけをし、点検してから必要な商品を提案するのが一般的です。

車検は「人力販売」と「ほっとけ販売」の両方で獲得します。SS利用客に対しては「人力販売」、商圏客に対しては新聞祈り込みやインターネットで告知して「ほっとけ販売」を狙います。車販買取も「人力販売」と「ほっとけ販売」のミックスです。SS利用客に対しては、車検販売の過程で見込み客が発掘されますので、そこから「人力」で商談します。

廃車の買い取りは店頭看板を掲示すれば、「ほっとけ」で獲得できます。また時々、貸し出し待機中のレンタカーを見て、「この車を買うとしたらいくら?」などと聞いてくるお客様がいます。これも「ほっとけ」です。
レンタカーやカーリースは、「ほっとけ」だけで成り立つ商品です。「ほっとけ販売」のポイントは、商圏に対する告知がいかに浸透するかです。その一方で、「人力販売」のポイントは、ス タッフの行動量に絞り込まれます。ただし、バッテリー1個売るのも車検1台売るのも、行勤量はほとんど変わりません。

バッテリーを売ろうと思うと、誰が買うか分かりませんから来店車両に対して軒並みボンネットを開けてもらい、電圧などを点検することになります。不具合が見つかれば、バッテリーの交換をお勧めするわけですが、いつ買っていただけるかは お客様次第。しかも他店が取り扱うバッテリーと差別化は困難なので、実際に当店で買っていただけるかもお客様次第です。

車検獲得のアプローチをする場合、フロントガラスに車検ステッカーが貼ってありますから、見込み客を選別して声かけをすることができます。しかも「買い控える」わけにもいかない商品です。技術力、価格、サービス、特典など、他店との差別化ポイントをしっかりアピールできます。ですから、店内できちんと商談をすれば、半数は当店から買っていただけます。  

車検ほど売りやすい、そして収益性の高い商品はありません。バッテリー1個売ってもせいぜい租利は5千円。でも、車検1台を獲得すれば、4万円以上の粗利かあります。
SS経営は多様化していますから、何か正解であるとは言えません。でも、同じ行動量を投入するなら、需要が安定していて生産性の高い車検を選ぶべきだと考え、これまで当社のSSは傾注してきました。

そのうえに、車検は「ほっとけ販売」でも売れる商品です。さらにアフターサービスが実を結ぶ商品でもあります。洗車、オイル、バッテリーなどは売ってしまえば、それで終わりですが、車検はアフターフォローがきちんと行われていれば、次回車検のリピート率が高まり、車の買い替えの際も有効に作用します。

最初のころは、当社でも担当した整備士が「サンキューコール」の電話をしていました。しかし、これがなかなか徹底できません。お客様が不在である場合が多いこともありますが、クレームめいたものを言うお客様に出くわすと、担当スタッフは 気持ちがどうも萎縮するようです。そこでこの「サンキューコール」をパート勤務の事務スタッフの仕事に変えました。それ以来、電話コールが淡々と行われるようになりました。

当社SSには、ナンバープレトを読み取る顧客管理システムが設置されています。これを活用してリピーターに定期的に発行されるクーポン券を店頭で 手渡ししたり、登録会員に向けた電子メールが自動的に発信されるようにしています。
おかげで毎月の車検のうち、約6割をリピーターが占め、残り4割は「人力」と「ほっとけ販売」により新規客を獲得しています。

中古車リースは開発段階

さて、中古車リースを取り扱うようになってから、当社のSSは、中古車を「買う」「売る」「短期に借りる」「長期に借りる」というサービスのラインナップができ上がりました。
カーリースというビジネスは、新車を3~5年リースで契約するのが一般的ですが、当社のカーリースの中身は、「レンタカーで償却済みの中古車を、お客様の求める期間、低料金でリースする」というものです。

レンタカーとの違いは、長期間貸し出すため、車の使用者名義をお客様に変更し、任意保険や車庫代はお客様の負担となることです。まだ1店舗でのみ実験的に行われている状況ですが、この3月は130万円の収益を得ました。何とかビジネスモデルを確立し、直営全店で展開したいと考えていますが、いまだ試行錯誤を繰り返しており、そこから抜け出せていません。
カーリースの対象は、個人客と法人客ですが、これがなかなか顧客ターゲットを絞り込めません。というのも、個人客と法人客ではリース料金のアピールの仕方がどうやら異なるみたいだからです。

また、法人客は意思決定をするのに時間がかかりますが、契約後のトラブルはほとんどありません。逆に、個人 客は意思決定は早いのですが、回収トラブルが絶えません。保証金をとったり、自動引き落としにしたり、契約条件を厳しくするなど、まだまだ試行錯誤中です。
できるだけ現場の手間をかけずに「ほっとけ」で収益が上がるビジネスを構築したいものです。

レンタカーは発展途上
積極経営が吉と出る

レンタカーが当社4SSで1000万円のビジネスになっています。レンタカーも季節需要があり、8月がピークを迎えますが、多くの人々が新生活を迎える3月も需要が多くなります。

グラフ2)は、ニコニコレンタカーの加盟店の平均売り上げを示したものです。
当社SSだけでなく、どの加盟店でも年々着実に平均売り上げが上昇しているのが分かります。今年8月は平均65万円、3年前の1.8倍となる見通しです。

ニコニコレンタカーの加盟店数は2009年3月時点で24店でした。今年3月時点では820店を数え、当時の30倍以上になりました。
平均売り上げは倍増しています。つまり、低価格レンタカーの潜在ニーズが顕在化したわけです。

ガソリンや各種油外商品のマーケットが急速に縮小しているなか、これを何とか維持しようと私たちは日々頑張っています。しかし、パイそのものが拡大しているマーケットでは、いとも簡単に業績が伸びます。そこでは、久しく私たちが経験していない、60~70年代の高度成長期にも似た経営感覚が求められます。
つまり、こういうことです。
レンタカーを2~3台用意して様子を見ている経営者は、月間20万円くらいの売り上げにしかなりません。車両にかかる税金、保険、減価償却費などを差し引くと「損はしていないが、大したビジネスにはなっていないな」とお感じになられると思います。

その一方で、レンタカーを10台くらい用意した経営者は、あっという間に月商100万円のニュービジネスヘ育て上げます。
そしてユーザーの求めに応じて増車し、さらに店舗数を増やし、倍々ゲームの事業展開を実現しています。
あるSS企業のレンタカーの月商は、初年度が300万円、2年目が600万円、3年目は1,200万円。まさに倍々ゲームです。
経営者ご本人に聞くと、「私は本来、石橋を叩いて渡る慎重なタイプなんですけど・・・」とおっしゃいますが、経営者としてはプロだと思います。
当社も最初は1店舗から、レンタカー10台で始めました。今は4ヵ所のSSと3ヵ所の実験専業店を展開し、車両台数は計335台、年商3億円のビジネスになっています。

ニコニコレンタカーの加盟店の中には中古車販売店もあります。
SSという業態はレンタカーを調達するにもつい「設備投資的な感覚」になりがちですが、中古車販売店にとっては「商品の仕入れ」に過ぎません。
レンタカーとして稼働しなければ転売すればいいわけですから、比較的気楽に増車する傾向があり、レンタカービジネスはしっかり上昇気流に乗っています。

脱サラして事務所を借りてレンタカービジネスを始めた方もいらっしやいます。現場=経営者ですから、顧客ニーズをすぐに反映できます。余計なしがら みもありません。稼いだ利益を増車にどんどんつぎ込み、今や37台の車両で月400万円を売り上げ、整備士や事務スタッフを雇用する立派な経営者のひとりです。
「給油のついでに油外商品を買ってもらう」という伝統的な販売スタイルにとらわれすぎると、SSというビジネスは間違いなく萎縮するでしょう。もう少し柔軟に広い視野からマーケットを見れば、SSという経営資源は、まだまだ発展的に運用できると考えます。

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