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増田信夫の油外放浪記  MIC社長増田信夫 第43回 中古車は「ほっとけ販売」の宝の山

SSの「ほっとけ販売」を目指す

多くの小売り店は、商品を陳列しておけば、お客様が勝手に選んで「これください」と言ってくれます。商品説明をしようと店員が近づくと「お客様が逃げてしまう」ので、近ごろは洋服屋も電気屋も、お客様から尋ねられない限り、接客をしなくなりました。
このように対面販売をしないプル・マーケティングのスタイルを、私は「ほっとけ販売」と称しています。

百貨店VSスーパーマーケット、薬局・化粧品店VSドラッグストア、電気屋VS家電量販店、洋服屋VSユニクロー。
「ほっとけ販売」を極めるほどに、売り上げ規模も販売効率も高くなる傾向にあります。

私は1995年にSS経営を始めた当初から「ほっとけ販売」スタイルのSSを目指してきました。ただ、SSの油外商品は陳列できないものが多く、 陳列できたとしてもスペースに限りがあります。そこでPOPや看板で商品の特徴などを説明し、お客様の購買意欲をかき立てようとしたわけです。
果たして、油外はそこそこ売れました。売れはしましたが、目標には遥かに及びません。とうとう我慢ができなくなり、SSスタッフに「声かけせよ」と命じました。

「声かけ」してみると、びっくりするくらい売れました。
「声かけ」のマネジメントやスタッフ教育を徹底するほどに売れました。ならば、「普通のSSで油外はどれだけ売れるか限界に挑戦してみよう!」とやってみると、L当たり50円の油外収益がコンスタントに稼げるようになりました。
そして、いつしかこれが当社のSSでも当たり前のことになり、多くのSS事業者から「そのやり方をぜひ教えてほしい」と請われるほどになりました。

とはいえ、人海戦術的な販売方法はコスト負担が増します。
人を育てては辞め、育てては辞め、いつまでも「賽の河原の石積み」をせねばならないマネジメント手法は、精神的にも疲れます。やはり対面販売には限界があります。
そういうわけで、再び「ほっとけ販売」の可能性を考えるに至りました。
そのきっかけは、1998年4月にSSのセルフ化か解禁され、セルフSSにおける油外販売の体制を構築する必要性に迫られたことです。折しも少子高齢化の影響がSS業界でも顕著になり、自在に人を投入できなくなりました。そして、何よりガソリンマージンの圧縮に伴うSS経営の悪化から、固定費を抑え、利益率を追求する必要性にも迫られました。

「手間をかけずに売りたい」-。でも、そう考えると販売スタイルを変えるだけでは駄目だということに気づきます。なぜなら、「ほっとけ」で売れる商品と売れない商品があるからです。
つまりは「ほっとけ」で売れる商品群を取り扱い、それに重点を置いた販売戦略が必要になるのです。

例えば「車検」という商品があります。 車検は陳列できる商品ではありません。そこでSS利用客の中から対象客を見つけ、対面で説明する必要があります。生産性の高い商品ですから、販売活動に人を投入してもいいでしょう。
ところが対面販売だけだと、せいぜいkl当たり0.15台が限界です。そこで折り込みチラシ、インターネット、ミラーリングのほか、リピーター向けのダイレクトメールやEメールなど、SSスタッフの手間をかけずに販売する方法も採り入れています。

競合店より魅力的な商品力であれば、一定の割合で必ずヒットします。当社SSの場合、対面販売より「ほっとけ販売」による車検獲得比率は年々増加しており、販売効率の非常に高い商品となっています。
一方で、オイルや洗車は、対面販売をしてもその人件費や管理コストの回収が難しい商品です。だからといって、商圏下で販促費を投入しても、それに見合った販売量は確保できません。
せいぜい来店客に店頭POPなどでPRし、また、SSスタッフの業務はお客様のご意向確認をする程度に止める。お客様が注文してくれるのを期待するような商品だと思います。

最近、「ほっとけ販売」による収益が急激に増えているのは、レンタカーを取り扱うようになったからです。インターネット上に陳列しておけば、お客様が勝手に注文をしてくれます。レンタカーは人の労働ではなく、車が稼いでくれる商品ですから、車両を投入した分だけ収益が増えます。当社は現在4ヵ所のSSおよび専業店を含めると計300台以上のレンタ力 ーが稼働しており、毎日稼いでくれます。

「安ければいい」ってものじゃない

レンタカーは通常、1日とか2日といった短期間に車を貸すビジネスです。長くても1ヵ月くらいでしょう。
しかし、もっと長期間車を貸してほしいというニーズもあります。3ヵ月・半年間・1年間とかの単位ですね。このニーズに対応するため、目下、中古車の格安リースを商品化できない かと事業実験をしています。

もちろんSSのスタッフに売らせるようなことはしません。
「ほっとけ」でお客様の方から申し出てもらいます。一度リース契約をしたら、後は貸しっ放しです。ですから、レンタカーより手間がかからず、淡々と車が稼いでくれます。
車の使用者名義はお客様です。駐車場もお客様負担です。故障したり定期メンテナンスの際も「ほっとけ」で入庫します。

中古車リースは当社の仲町台SSで主に取り扱っています。 レンタカーを卒業した車両を中心に、現在約60台が稼働しています。2月の油外租利1670万円のうち1割を中古車リースが占めました。
なかなかのドル箱商品になってきました。しかし、まだ紆余曲折しています。まず人気車と不人気車がはっきり分かれました。レンタカーの場合、お客様から乗車定員や排気量の希望はありますが、車種や年式にはほとんどこだわりがありません。
これがリースとなると、より「所有」に近い形態だからでしょうか、お客様は車種や年式について希望します。ですから、古いマーチなど、まったく稼働しない車が出てきます。

ならば「需要と供給の原則」を適用してみよう。ということで、不人気車種のリース料金を安くしてみました。
1日500円のところ400円、つまり月間3,000円の値引きです。
ところが、まったく反応がありません。「何か訳ありなのか」と、いぶかられたのかもしれません。

私は学生時代、中古トラックを入手して学生専門の引っ越し屋をやったことがあります。料金は引っ越し業者の半額、満を持して「さあ、どうだ」とばかりにチラシを配ったのですが、まったく注文が入りません。
不思議に思い、後輩たちに聞いてみました。すると「安すぎて気持ちが悪い」と言われました。さっそく屋号を変更して料金を高くしてみました。途端に注文が殺到したではありませか。1人で毎日3件の引っ越し作業を請け負ったものです。

この時の経験を思い出しました。消費者心理には、「適正料金」というものが存在するのでしょうね。中古車リースを「ほっとけ販売」するためにホームページで告知していますが、法人向けにはファクスでもご案内していま す。近隣の約7,300社に対し、FAX送信しているのですが、やはり価格訴求の方法により反応はまったく異なります。

まず「1日500円」と謳ってみました。反応率は0.027%です。次に「値下げ、1日400円」としたら、反応率は0%。そこで試しに「1ヵ月19,800円」としてみました。

すると、反応率は0.2%。 10倍に跳ね上がりました(データ1)
興味深い話ですね。実質値上げであるにもかかわらず、「利用したい」という法人が増えたのです。


「価格」プラス「安心感」の商品づくり

期待値以上に安い料金だと、いかがわしさを覚えるのでしょう。季節性などの要因もあるかもしれません。顧客ニーズにピッタリ合致する条件を求めて、いろいろと検証を重ねていることころです。
”いかがわしさ”を払拭するためには、価格だけでなくサービスで安心感を訴える必要性も感じています。今のところ、リース車両については12ヵ月点検並みの点検整備を3ヵ月ごとに無料サービスしています。半年ごとにオイル交換も行います。万が一の故障 対応や保険の適用なども、事前に約束を取り決めています。

なお、中古車リースの収益はリース料だけではありません。
契約時に名義変更手数料、納車前整備料などを定額で頂戴しています。また「乗り逃げ」防止のため、保証金を預かったり、契約終了後の無断利用には車両買取を義務付けたりしています。
何しろ前例のないビジネスですから、手探りでトライーアンドーエラーを繰り返している状況です。

動き始めた「レンタカー収益還元制度」

レンタカー、リースなど中古車にまつわる「ほっとけ商品」の拡充を進めながら、中古車両の調達でも創意工夫を凝らしています。
中古車レンタカーの「オーナーズ制度」と称していますが、その中身は、レンタカー用の中古車を当社に直接売却していただいたお客様(元オーナ)に 対し、レンタカー収益の一部を還元するものです。

昨年、神奈川県の経営革新事業の認定を受けました。
中古車をオークションから調達すると、「ユーザー」→「中古車買取店」→「オークション場」→「当社」という流通過程をたどります。中間業者の利益や陸送費や手数料などが嵩むため、どうしても高額になってしまいます。
しかもこれは現金決済です。
5台、10台の車両を調達するならそれでもいいのですが、100台とか200台の車両の調達となると、現金がいくらあっても足りません。

そこでユーザーから不要になった車を直接買い取り、格安で程度のよいものを手に入れようと考えました。その差額をユーザーに還元してもいいのではないか、という発想です。具体的にはレンタカーとして運用し、その利益の一部を配当します。
これは中古車買取店に対する差別化にもなります。
ユーザーにとっても、売却金が手に入るだけでなく、愛車が手を離れた後も元気に活躍する姿が確認できるし、また、それが配当金になるという楽しみが増えます。

まだ大きな商売にはなっていませんが、(表1)は2月の実績です。1万円以上の配当を手にする「オーナー」が3人出ました。

これから夏に向け、レンタカ ーの稼働率は上がりますから、年間15万円、20万円の配当を手にするオーナーも出てきそうです。

レンタカーとしての役目が終わるまで配当は続きますから、ちょっとした金融商品です。ただ、これも前例のないビジネスですから、実のところ、ユーザーに理解してもらうのに苦労しています。
まだ始めたばかりであることと、中古車レンタカーとして取り扱うには買取査定金額が高額になるケースもあり、申し出件数が多いわりには、思ったほどたくさんの車が手に入りません。
今後、口コミなどで話が広がり、問い合わせ件数がさらに増えることを期待しています。

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