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増田信夫の油外放浪記  MIC社長増田信夫 第41回SS車検の間違った常識

依然として低い SS車検の市場競争力

昨今の燃料油マージンの低さにはほとほと参ります。本連載で「油外をSS運営の軸にしましょう」と格好のいいことを言っていますが、これだけガソリン低マージンが続くと、気持ちがブレてしまいそうです。

当社直営SSでは、洗車やケミカルといった従来型油外アイテムから、車検・車販・レンタカーなど、車そのものに直接関わる商品へ販売活動の軸足を移してきました。これらは客単価が高く、生産性に富む商品です。なかでも、車検は油外収益の半分を占める特別重点商品です。
ホルムズ海峡が平穏無事で、ガソリン口銭は、依然としてL3円しかなくとも、2012年を生き残るためには、今年も車検をたくさん売らなければなりません。

折しも、3月は車検需要が集中する好機です。というわけで、当社SSは車検販売の段取りをせっせと整え、目下、車検獲得に励んでいます。例によって商品力を見直し、店頭スタッフを再研修し、店頭POPも一新。「集中予約キャンペーン」の実施で弾みを付け、さらに、車検の商談に長けたスタッフを「車検名人」に任命し、万全の態勢を固めています。

また、数年前に中断していたミラーリングを再開しました。 実はミラーリングは、現在でもものすごいコストパフォーマンスを発揮することが、いくつかのSSをヒアリングして分かったからです。早速、商圏内車検対象車両に対するピンポイント告知をしてくれる外注スタッフを募集し、育成しています。

年明け後に全国のSSに向けて「車検獲得即効ワザ勉強会をやります」と呼びかけたところ、全国どの会場でも満杯となりました。”やはりSSにとって車検は、今なお大切な商材であるのだな”と実感しました。

そこで今回は、1台でも多くSS車検を獲得するためのポイントを、先輩のコバックの戦術と比較しながら紹介することにしましょう。
コバック車検の、ネットワークは全国約400店舗。たった400店でSS業界全体の販売シェアを上回ります。彼らに話を聞くと、毎月の車検客のうちリピーターと新規がほぼ半分ずつだそうです。新規で獲った顧客の多くは2年後にリピーターとなり、そこにまた新規客が上積みされるので、どの店も年々着実に車検台数が伸びています。

一体何が違うのでしょう。 新規客を獲るための条件は、コバックもSSも同じです。いやむしろ、立地条件に恵まれており、顧客と接触する頻度が高いSSの方が、はるかに有利なはずです。それにもかかわらず、顧客がSS車検を選んでくれないのはなぜでしょう。

大きな理由のひとつに、車検商品に対する認知度の低さがあると思います。
では、リピーターの獲得はどうでしょう。整備工場やカーディーラーは、自分の顧客を必死で守ります。アフターフォロー、顧客管理、ダイレクトメール、電話コール、場合によっては客先を訪問します。それくらい顧客を大事にします。

SSは苦手ですね。2年前(前回)の車検客リストすら満足に整理されていないのが普通です。車検実施後に行うアフターフォローのルールもなく、リピート率がどれくらいなのかも把握していない、これが多くのSSの実情だと思います。

しかし、実はリピーターの獲得は、新規客獲得に比べ、コストも手間もかかりません。事務スタッフが電話一本で獲得できるのが、リピーターです。
このように考えると、SSの車検販売には、誤った思い込みや、「間違った常識」がはびこっていると感じます。それがSSの得べかりし利益を損ねています。逆に言えば、SS車検は、まだ十分な成長余力を持っているわけです。

店頭での声かけはダメ 商談は必ず店内で行う

長らく、SSの油外販売は給油中に完結するものが多数を占めました。洗車の意向確認、オープンボンネットをきっかけとしたオイル販売やバッテリー点検、あるいは給油しながら行われるタイヤチェック、水抜き剤のお勧め--等々、これらはすべて店頭で声掛けし、店頭で受注していました。

「給油のついで」に売るのは、SS独自の伝統的な販売方法です。そしてその延長線上で、車検も店頭で販売しようとするSSはいまだ少なくありません。
これが間違った常識のひとつです。

洗車もオイル交換も、顧客は必要性を理解すると、「いつ買うか」を検討します。場合によっては、「しばらく買わずに我慢する」という選択肢もあります。ところが車検は異なります。「いつ買うか」が法律で定まっています。ですから、ドライバーにとって「どこで買うか」が最大の関心事なのです。

いや、自動車ユーザーにとって最も簡単なのは「いつものところでやれば、まず安心」だということです。加えて、車検は支払い金額が他の油外商品のそれと比べ、1桁か2桁異なります。家計に大きく影響する、2年に1度の大きな買い物です。この一大事をSSの店頭の立ち話で即決して もらうのは土台無理な話です。

「この店で買おう」と決断してもらうためには、やはり落ち着いた雰囲気の店内で、車検に関する情報をしっかり伝える必要があります。

実際のところ、給油アイランドで商談していたSSが店内で商談するように場所を替えただけで、車検の成約率は以前の10倍以上に跳ね上がりました(グラフ1)。

最初に見積もりはダメ 受注してから

車検の商談の最初から見積もりを取ろうとするやり方が横行しています。
整備見積書を提示しなければ、車検が受注できないと思い込んでいるSSマンは多いようです。しかし、これは整備工場やディーラーのやり方です。給油目的で来店した顧客には向きません。

なぜなら、まず「見積もりをしましょうか?」と声かけをしても、点検に応じていただける顧客は限られているからです。また、その見積もり料金が割高に感じられるため、ますます受注しにくくなります。
受注することができなければ、点検・見積もりは無駄になります。無駄な作業にSSスタッフは翻弄されてしまいます。

何とか車検を受注しようとして、必要最低限の整備だけを見積もりするのでは、なかなか車検の客単価は上がりません。客単価を上げようとして、あとから追加整備を請求すれば、顧客から得た信頼が損なわれてしまいます。だからといって、車の不具合箇所を放置したままにすれば、顧客は「手抜き車検をされた」と不満に思います。

では、どうしたらよいかというと、車検と整備の受注をそれぞれ分けて行うのがSSの正しいやり方です。まず最初に、車検を受注し、受注時に点検の日程を決める。そして、後日点検して整備見積もりを提示し、受注するわけです。

車検チラシは0.5秒が勝負

車検のチラシを作成しているSSは少なくありません。車検は形のない商品ですから、チラシやリーフレットが不可欠です。
商圏から車検を獲得する最も一般的な方法は新聞折り込みです。しかし、消費者にとってチラシは「ゴミ」なのです。さっと目を通したら次々に捨てる。言葉は悪いですが「ゴミあさり」をしながら、価値ある情報がないかチェックしているのです。ですから、一瞬で目を止めさせる「アイキャッチ」がなければ、チラシはそのまま本当のゴミになってしまいます。アイキャッチは、チラシの左上に置きます(縦書きチラシは右上)。ここに何を置くかでチラシの反応は大きく変わってきます。

コバックのような車検専門店は、SSと異なり日常の来店客はいません。折り込みチラシが新規客との唯一の接点です。ですから、彼らが作るチラシは非常に参考になります。
消費者に最もアピールしやすいのは価格です。価格が安く見えると、車検が近い顧客は目を留めてくれます。

経験上、「おいしい車検」というのも効果的です。販促プレミアムとして、カニや肉など、赤系統の食品の写真を掲載すると視覚や味覚に訴え、本能的に目を奪われます。

価格競争が一段と強まる

コバックの車検チラシを見てください。
「写真1」は、「低価格保証」とうたい、「他店の見積書をお持ちください」と競合店より安くすることを約束しています。「写真2」は、「見積もり」だけでティッシュ5箱プレゼント。「写真3」は、「軽自動車37,180円」と価格をストレートに打ち出しています。

かつて、車検が規制緩和され、私たちSSに門戸が開かれた頃は、「車検9,800円」などと手数料(基本料金)を提示するのが流行りました。この価格破壊のイメージにつられ、チラシだけで大量の車検が受注できたものです。
しかし、もうその手は通用しません。今は法定費用も含めた総額で勝負する時代です。車検総額を安く見せるため、コバックは様々な割引特典を付けています。

この割引制度の効用は、価格を安く見せるためだけではありません。例えば、「入庫日即決割引」は文字通り、顧客の即決を促します。「新車初回割引」は、カーディーラーの呪縛から顧客の心を解くのに役立つかもしれません。「代車なし割引」により少ない代車を有効活用し、また、「持込引取割引」はスタッフの手聞を省いて作業を効率化します。参考になりますね。

車検は商品力が命

コバックの車検チラシは手を替え品を替え、消費者をそそります。
私たちSS業界は、競合店の価格看板を見て、素早い価格対応を繰り返してきました。車検も同様です。

商品内容を変えなければ、車検も陳腐化します。当社の直営SSは、車検の内容、デザイン、特典などを毎月見直しています。毎月見直すのが妥当かどうかは分かりませんが、せめて半年くらいの頻度で車検商品を見直す必要はあるでしょう。

商圏から車検を新規獲得するための条件は、コバック車検もホリデー車検もオートバックスもSSも同じです。自社の車検が顧客に選ばれないのは、顧客の目に留まらないか、商品力が劣るか、そのどちらかしか理由はないのです。特にSSは技術力が低く見られがちなので、技術的な信頼が高いイメージを抱かせる必要があります。そのうえで、価格、サービス、特典でも競合相手に負けない商品に仕上げる必要があります。

つまり、車検販売を「店長任せ」にするのは間違った常識なのです。そもそも、店長には商品力を見直したり、商圏告知を実行する権限がありません。現場作業やマネジメントには長けていても、マーケティングセンスに優れているわけではありません。やはり、経営者自身がこれらすべてを推進する必要があります。

「ご検討ください」は禁句

SS利用客に対する商談も同じです。
せっかく店内でじっくり丁寧に説明しても、商品力が劣っていれば売れません。スタッフも自信を持って説明できません。お客様に断られるのが嫌なので、「ご検討ください」とつい言ってしまいます。

実はこの「ご検討ください」の一言は、商談をご破算にしてしまいます。「どこで車検をやろうか」と考え商談に応じていただいたお客様に、「ご検討ください」と言ってしまえば、お客様は「はい、検討します」と言うしかありません。

どこに出しても恥ずかしくない車検を用意して、「当店で車検をぜひ予約してください」とはっきり言わせるべきです。そうするとお客様は「はい」「いいえ」で判断してくれます。
「いいえ」と言われたら、その理由をはっきりさせ、改善すればいいのです。

焼き芋なら新聞紙にくるんでも売れます。しかし、宝石を新聞紙で包装する店はありません。なのに、車検という高額な商品を新聞紙で包んで販売しようとしているのがSS車検の実情です。トップダウンで強い車検をつくり、これを商圏客や来店客にしっかり知らせ、SS現場での商談プロセスを標準化する必要があります。そうでなければ、ライバル店に勝てません。

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