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増田信夫の油外放浪記  MIC社長増田信夫 第39回「ほっとけ油外」がSSを救う

競合SSが淘汰されても、「残存者利益」を得られない

明けましておめでとうございます。
年頭にあたり、今日のSSを取り巻く環境と課題について考えてみたいと思います。

私事ながら、当社は創業から四半世紀を過ぎました。マンションの一室で志を同じくする数人の仲間たちと開業し、SSの集客と収益拡大に知恵を絞り、寝る間も惜しんで働きました。当時の私の月間走行距離は1万kmに上ったものです。
その夢は今も褪せていませんが、さすがに現在のSSは、あまりにも厳しい経営環境に直面しています。

年初から暗い話で恐縮ですが、最盛期に6万カ所あったSS数は、ついに4万カ所を割りました。この15年間で2万2,000カ所、1日当たり4SSが姿を消したわけです。欧米先進国のSS数は70~80年代に激減しましたが、日本でも今、まったく同様の軌跡を辿っています。

当社がSSを開業したのは1995年です。当時はガソリン口銭がL20円近くあったと思います。それが今やL数円です。燃料油が売り上げの多くを占めるにもかかわらず、ほとんど利益を生まなくなりました。

燃料油は社会奉仕にも等しい商品ですが、お客様のガソリン離れが起きています。いわゆるエコカーの台頭です。昨年末に開催された「東京モーターショー」は、まるでエコカーの祭典でした。あらゆる自動車メーカーが「エコ」を競い合っています。市中を走るクルマを見渡しても、エコカーがどんどん普及していると感じます。その筆頭である「プリウス」は1997年に発売され、初年度は300台を販売しました。その後、販売価格が安くなり、さらに公的助成や減税もあって、国内販売台数は現在50万台といわれます。

自動車の平均燃費はどんどん良くなっています(グラフ1)。2015年には、燃費は19km/Lまで向上するそうです。つまり、10年前に月2回給油していたお客様は月1.5回しか来店しなくなるわけです。

SS数が減り、生き残ったSSにお客様が集まるかというとそうではありません。ガソリン需要が減退しているので、「残存者利得」を得ることは期待できません。

一握りのSS業者だけが、燃料の薄利多売でやっていける

経営の方向性によって、SSの業態を次の5つに分類してみました。
 ①元売子会社
 ②フリート業者
 ③広域販売業者
 ④系列中小業者
 ⑤PB中小業者

①の元売子会社は当然ながら、燃料油の販売数量にこだわります。
②のフリート業者は主力商品である軽油が寡占状態ですから販売数量が確保できます。
③の広域販売業者も量販ゆえに、有利な条件で仕入れられる優位性があります。

これら①②③の経営は、ベースとして燃料油の大量販売があり、それによって収益力を保っていると言えるでしょう。

これに対して、立地条件、設備力、運営力、資金力に劣る中小業者が、燃料油販売という同じ土俵に上り勝負するためには、系列から離れて、⑤PB化するしかありません。
元売支援を受けられないというリスクを負いますが、燃料油収益は確保できます。

しかし、それが適わない④の系列中小業者は、油外収益で将来の生き残りを目指す方法しか残されていません。当社を含めて、石油販売業者の多くは、これに該当するでしょう。
ところが、その油外販売も険しいイバラの道を歩むことになります。

まず燃料油の減販とマージン下落を補うためには、油外販売目標をより高く設定せざるを得ません。当社の運営する直営4カ所のSSは、ピーク時に月間1,500万円あったガソリン粗利が今や月間200万円です。年間1億5,000万円のマイナス分を穴埋めできなければ、廃業です。

コストを削減するため人員を削れば、油外の販売力が低下します。
加えて、油外市場も全体のパイが縮小しています。この10年間で、国内自動車アフターマー ケットの市場規模は2兆円(約2割)も縮小しました。そのなかでカーディーラーとカーショップだけが売上規模を伸ばしています。

つまり、より目標は高くなり、かたや販売力は低下し、競争が激化している。そんな 「三重苦」に喘いでいるのが、現在の油外販売を取り巻く環境ではないでしょうか。
これを打ち破るには、やはり「人間力」を高める努力が必要です。優秀な人材を採用、訓練、配備、マネジメント、評価し続けなければなりません。

そんなことは百も承知ですが、これまでSS運営を17年続けてきて、それだけでは到底無理だと思いました。それくらい今の市場環境の変化のスピードは早いのです。

(グラフ2)は、当社とお取り引きしていただいているSSの人件費と、燃料指数の相関を調べたものです。

いたずらに人を増やしても、あるいは削っても、SSの競争力が強化されるとは限らないことを表しています。そこで注目しているのが、「人間力」に頼らない油外販売、すなわち「ほっとけ油外」です。


「ほっとけ油外」をもっと増やせないか?

お客様にお勧めして売る「プッシュ・マーケティング」に対し、お客様から「これください」と言ってもらう「プル・マーケティング」は、スーパーマーケットでも飲食店でも、一般的な小売業にとって常識的な方法論です。

その「プル・マーケティング」を分かりやすく「ほっとけ」と呼んでいます。SSが取り扱う商品は陳列できないものが多く、また、その必要性を認識していないお客様も多いので、声かけをして説明しなければ売るのが難しいと思っていましたし、実際そう教えられてきました。

しかし、ガソリンは「ほっとけ」ですね。お客様から求めて来店してくれ、何も説明しなくても「レギュラー満タン」と言ってくれます。セルフSSなら給油作業も「ほっとけ」です。

油外販売にも「ほっとけ」は存在します。声かけをしなくても「洗車してよ」「オイル交換してよ」と自己申告してくれるお客様はありがたいですね。セルフ洗車機があれば、作業も「ほっとけ」です。

例えば、燃料油販売量が月平均200klのSSで、月間7,000台の来店客に「洗車しませんか」と声かけし、1,000台を受注したとします。つまり、車1台受注するために6台の車に断られます。この効率の悪い「声かけ」作業に対し、お客様は1円も支払ってくれません。

セルフ洗車にすればどうでしょうか。客単価は低くなり、受注率も下がるでしょう。洗車機のリース料もかかります。しかし、人件費はゼロです。

一般的に油外販売の手順は、「見つける」「口説く」「こなす」の3段階があります。これを誰が担当するかで「ほっとけ」の度合いは異なります。例えば、洗車の必要性をお客様自らが「見つけ」、メニュー看板が「口説き」、セルフ洗車機が作業を「こなす」場合は、ほっとけ比率100%となります。

油外販売を100%「人間力」に頼るのではなく、お客様、機械、あるいは外部機関の助けを借りることができれば、同じ人件費を投入しても、もっと効率よく収益目標を達成できるのではないでしょうか。

「ほっとけ油外比率」を高めよう

当社とお取り引きしていただいているSSの平均的な業績と、「ほっとけ油外」比率の高い4SSの業績を(表1)に示しました。

ASSは当社の直営店です。洗車はセルフですので100%ほっとけです。車検やオイルは、車番認識システムが見込み客を「見つけ」、そのお客様に最適なチラシを出力してくれます。これがお客様を「口説き」ます。つまり、「見つける」と「口説く」は機械が行い、「こなす」作業は人間が行います。

インターネットや折り込みチラシを見て、お問い合わせをしてくださるお客様もいます。その対応についても本社事務スタッフが行いますから、SSスタッフは「こなす」だけです。

レンタカーは、お客様がインターネットで予約してくれます。またはコールセンターが予約を取ってくれます。つまり、「見つける」「口説く」に関し、SSスタッフは一切関与しません。「こなす」のは、貸し出した車が行います。SSスタッフの業務は、戻ってきた車を洗車し点検し、次のお客様に貸すだけです。ですから、非常に「ほっとけ比率」が高い商品です。

廃車買取や中古車リースは、SS店頭に看板を掲示したり、インターネットで告知しています。それを見たお客様がやって来れば、SSスタッフが手続きをします。取り扱う商品を増やしても、受注件数が増えても、「見つける」「口説く」という仕事の担当をスタッフからお客様や機械へ置き換えることにより、人件費は増えません。

BSSは社員が1人しか配備されていないローコストSSです。しかし、セルフ洗車機や車番認識システムを活用し、レンタカーを取り扱うことで人件費の1.7倍の油外収益を稼ぎ出し、燃料指数は2.8円。しっかり営業利益を出しています。

CSSは、数カ所のセルフSSに2人ずつ派遣し、そこから油外収益を稼ぐテナント型油外専門会社です。燃料油収益も洗車収益もありませんが、車検、オイル、TBA、レンタカー、車販、廃車買取を取り扱います。人件費以外にセールスルームやピットの使用料、車番認識システムのリース料、レンタカーの維持費、駐車場代、店頭看板などのコストを負担します。しかし、人件費の2.2倍の収益を上げ、黒字経営です。

DSSは、レンタカーしか取り扱っていない業態です。これも既存SSのセールスルームを借りたテナント型レンタカー店です。家賃、駐車場代、車両維持費などを支払います。しかし、「ほっとけ比率」の高い商品に絞り込んだため、実に人件費の8倍以上の収益を上げています。

このように、「ほっとけ油外」比率を高めるには、2つの方向性があります。まずひとつが、「見つける」「口説く」「こなす」の「ほっとけ化」を図ること。
さらにもうひとつが、ほっとけ比率の高い商材を取り扱うことです。

既存SSの軒先を借りたCSSDSSに見るように、「ほっとけ油外」比率を高めれば、燃料油販売に頼らず、油外販売だけでも勝ち残れることが分かります。

各SSのほっとけ油外比率と人件費効率を(グラフ3)に示しました。
平均的なSSは人的努力に対する依存度が高く、ほっとけ油外比率は43%です。人件費の8割しか油外を稼げません。

しかし、ほっとけ油外比率を高めると、人件費効率が大きく改善されることが分かります。「楽して稼ぐ」のは邪道だと感じる方もいらっしゃるでしょうが、しかし、「SSの勝ち残り」という至上命題を解決するために”人海戦術”の無駄を省き、限られた経営資源をもっと有効に活用する手立てとして、今年は「ほっとけ油外」に前向きに取り組む1年にしたいと思います。

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