情報サービス・出版物

  1. トップページ
  2. 情報サービス・出版物
  3. 増田信夫の油外放浪記一覧
  4. 油外放浪記記事

増田信夫の油外放浪記  MIC社長増田信夫 第38回「神奈川県経営革新モデル」が発進

安価に買い取った車でどう稼ぐ?

SSという業態は、自動車業界の中でもとりわけ顧客との接点が多く身近な存在です。立地も良いので「廃車・不要車買い取ります」と掲示すれば、0~数万円の出費で、走行可能な車を毎月何台か入手することができます。

さて、入手した車をどうするか。
儲け口は4つあります。(表1)
 ①解体業者に売る
 ②オークションに出品する
 ③そのまま直売する
 ④レンタカーとして活用する
SSスタッフが最も好むのは”③”です。

オークションを通さず、車が欲しい人に直接売り渡す方法です。例えば、1万円で仕入れた車を20万円で売れば、利益は19万円。右から左に動かすだけでSSは儲かり、お客様からも喜ばれます。非常に魅力的な方法です。

手間暇をかけたくなければ、"①"の解体屋に引き取ってもらうのが最も簡単です。鉄クズ相場にもよりますが、車1台35千円ほどで買い取ってくれます。販売活動や加修整備作業を実施せずに25千円の利益が得られます。オイル交換10台分に相当しますが、それよりはるかに楽ですね。

なかには、"②"のオークションに出品できる車があります。手数料は掛かりますが、72千円ほどの利益を見込めます。

最も面倒なのが、"④"のレンタカーです。1万円で買い取った車を加修したり保険に加入したり、58千円の費用と手聞が掛かります。初月のレンタカー売り上げが75千円として、17千円の儲けにしかなりません。
ですから、月次販売目標をクリアするためにSSスタッフが①、②、③、を選択したとしても無理はありません。

ところが、レンタカーだけは翌月以後も毎月稼ぎます。
仮に2年間レンタカーとして稼働したとすると、保険、税金、修理などで472千円の費用を要しますが、180万円を稼ぎますので、130万円の利益を得られます。経営者の欲目で、こういう車が100台あったと考えましょう。2年間に4,700万円を投資して1億3千万円の利益を得るという、べらぼうに利回りの良い事業となります。(表2)

レンタカーのオーナーズ制度

低価格レンタカーの車両は中古車オークションから仕入れるのが一般的です。
しかし、落札料、手数料、搬送費などで車1台当たり平均20万円かかるとすると、100台の車を調達するのに2,000万円の現金が必要です。ところが、上記のようにお客様から直接仕入れれば、車1台1万円として100万円しか掛りません。同様に、車1台5万円としても総額500万円です。

そして、1万円で仕入れた車も、20万円で仕入れた車も、レンタカーとしての稼ぎは同じです。というわけで、キャッシュフローに無理をせず、良い車を大量に仕入れるため、新たなビジネスモデルを考案しました。

これは神奈川県の経営革新事業として9月28日付で承認されました。正式名称は、「中小企業新事業活動促進法に基づく経営革新計画」です。「オーナー型レンタカーシステムの事業化」というタイトルが付いています。

その概要は、自動車オーナーから直接車を買い取り、レンタカーとして運用し、そして、その運用益の一部を「配当」として「元」オーナーに還元するものです。前月号の本欄で述べたように、自動車オーナーが5万円で手放した車は、オークションを経由して中古車店に並ぶと、40万円以上の値札(諸費用別)が付けられます。中間業者が利益を上乗せするからですが、これはその分を「元」オーナーに月々還元してもいいのではないか、という発想をカタチにしたものです。

また通常、買い取りや下取りされた愛車がその後どうなったかは、「元」オーナーに知らされません。どこの誰が使っているのか、スクラップされたのか、あるいは遠く海外で元気に走っているのかなど知る由もありません。

しかし、このビジネスモデルでは、愛車がレンタカーとしてどのように活用されているのかを「元」オーナーは随時インターネット上で確認できるので、透明性があります。レンタカーとして天寿を全うするまで、愛車の利用状況が分かり、また、それに応じた配当を手にすることができます。

この面白さに気づき、車を売却してくれる人たちが増えれば、低価格レンタカー市場に対する慢性的な供給不足が解消されるのではないかと考えました。上手く運べば、SSとレンタカーユーザーと「元」オーナーの3者聞における「Win-Win-Win」の関係を築くことができるのです。

実際、この仕組みを「ニコレン・オーナーズ」というネーミングを付けて試しにやってみたところ、レンタカーに適合する車両が6台集まりました。(表3)

オークションに出品すれば、3.5点とか4点の評価点が付く車両です。これを平均2万5,000円で仕入れました。差額は12万円ですから、配当金を払っても支障ありません。
まずは横浜市のドライバーにPRし、事業化実験に取り組みたいと思います。

「負け組」SSの活路を開く!

当社の運営するSSは、立地や設備が圧倒的に優れているわけでもなく、燃料油の仕入れ能力が高いわけでもありません。普通のSSです。
燃料油マージンはほとんど取れなくなっていますし、販売数量は今やピーク時の2分の1を割っています。

気が付けば、「負け組」と言われでも仕方のないほど、燃料収益力は低下しています。もはや、有力販売業者同士の激烈なパイ取り合戦に参戦できる体力も資金力もありません。周囲を見渡せば、同じ境遇のSSが大多数を占めます。ひと握りの「勝ち組」SSが、スケールメリットを生かして販売シェアを伸ばしているのが実情です。

燃料油販売で勝負できない以上、油外収益力を強化し、SSの将来の生き残りをかける以外に途はありません。しかしながら、2000年時点で9兆8千億円規模だったカーアフターマーケットは、2010年に7兆8千億円規模へと急速に縮小しています。加えて、油外という土俵には、カーディーラー、整備工場、カーショップなど多彩な業態が入り乱れ、しのぎを削っています。油外強化も決して楽な途ではありません。

こうした苦境を突破するには「マンパワー」が不可欠です。油外販売で突出するSSを見ると、大抵マンパワーが優れています。マネージャーだけでなく経営者も優秀です。これはなかなか真似できるものではありません。

だからといって、マンパワーの強化を諦めるつもりはありません。ただ、投入した人員をうまく活用できず、ともすれば、人件費をいかに圧縮するかに腐心してしまいがちです。

そこで「労働効率を強化する」視点に立ってみました。投入した人件費に対する油外収益力、すなわち「人件費効率」の改善です。試行錯誤しながら行き着いたのは、「生産性の高い商品」(車検など)に販売活動の重点を置くこと、そして、レンタカーのように「人」ではなく、「車」が稼いでくれる商品を取り扱うことでした。
この考え方に共鳴していただけるSS経営者は多く、「SSレンタカー」というニュービジネスは瞬く聞に広がりました。

(表4)は、そうしたSSの実績の変化です。レンタカーを取り扱う前(2008年)と現在では、SS業績がどのように変化したかを電話でヒアリングしてまとめてみました。燃料油を増販したSSもありますが、多くは横ばい、もしくは減販しています。

しかし、レンタカーはSS利用客数と関係なく、収益を確保できます。3年のうちにどのSSでも、毎月100万円以上のレンタカー収益を計上するようになりました。通常、ある商品の販売が増えると他の商品販売が疎かになってしまうものですが、どのSSも「他の油外販売は落ちていません」と言います。

では、「人件費は増えていますか?」と聞くと、一様に「変わっていません」との返答がありました。つまり、レンタカーは「人」に頼らない油外商品であることが、極めて明確に証明されたのだと思います。

人件費が変わることなく、100万円単位の油外収益がそっくりアド・オン(上乗せ)されたわけですから、人件費効率はどのSSも劇的に改善しました。「もしレンタカーをやっていなければ、今ごろどうなっていたことか」「今だから言うと、実は3年前は真剣に廃業を考えていた」などと、あまりに感慨深げに語るオーナーの存在も認められました。

「F」「G」両SSは、大幅に減販しているフルサービスSSです。総収益のほとんどを「車検」と「レンタカー」で占めるようになっているそうです。聞けば、「燃料ではしっかりマージンを確保し高値で販売しています。もう手間(コスト負担)が掛かる給油や洗車を薄利多売することはあきらめました」とのことです。

見た目はガソリンスタンドでも、実態は「ガソリンも売る車検店・レンタカー店」へと事業軸を転換した「ローコスト・カービジネス・ステーション」と言っていいでしょう。

油外放浪記一覧へ戻る