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増田信夫の油外放浪記  MIC社長増田信夫 第32回ワンマンオペレーションのすすめ

脱ガソリン宣言

大震災後のガソリンパニックが収まったと思ったら、今度は大幅な減販に見舞われています。価格も軟化してきました。「もうこれ以上、ガソリンに経営を振り回されたくない」という気持ちが募ります。

SS業界は皆同じ、運命共同体というイメージがありました。しかしよく見ると、その業態は多様化しています。
(1)ガソリンを主体とする石油流通業者としての生き方
(2)ガソリンで集客し、油外を主体とする客単価の向上で収益化を図る生き方
(3)不動産など核となる本業があり「事業の一部門としてのSS」という生き方

燃料の位置づけはそれぞれ違います。SSビジネスをどうとらえるか、温度差も異なります。 当社のSSは、もちろん(2)を目指し、そのビジネスモデルを追求したいと考えています。しかし(1)に期待する部分もあり、中途半端だったかなと反省しています。

話はそれますが、当社の近隣に地場のスーパーマーケットがあります。立地は裏通り ですが、10年以上前から営業していて、地域密着の温かい雰囲気の店です。私も愛用していました。ところが昨年、電鉄会社系の新しいスーパーが表通りにで きました。さらにその向かいにも流通系の小型スーパーが出店しました。そして今年、業販型ディスカウントスーパーが登場しました。
こうして瞬く間に、地場のスーパーの店内は、ガラガラとなってしまいました。

今回の震災後のガソリンパニッックを経験し、ようやく気付きました。店舗数も販売数量も中途半端な当社のSSは、安定供給の優先順位も後回しになるという現実です。それが今の当社の置かれた客観的な境遇なのです。

業界の空気になじんで真面目に営業していれば生きていけるという「幻想」を抱いていると、当社のSSは間違いなく地場スーパーと同じ運命をたどります。
15年前にSSに参入した時、「SSを超えたSSをつくろう」との思いを込め「スーパーステーション」と名付けました。自分で命名しながら、ガソリンの販 売数量やマージンの変化に一喜一憂する局面もあり「ガソリン依存」に陥っていたなあと、思います。

根性論抜きにローコストに油外はやれないか

さて恨み節はこれくらいにします。
私がSS業界に関わり始めたのは1970年代でした。その頃すでに「リッター5円の経営」という言葉がありました。ガソリン口銭が5円でも利益が出るSS経営を目指そう、というものです。

当時と比べて現在は経営環境が大きく変化し、否応なくこれが現実のものとなりました。
自由化によってガソリン口銭は減少の一途をだどりましたが、セルフ化によって給油人件費は合理化されました。現金決済が当たり前となりキャッシュフローも改善されました。SSの取扱い商品も多様化し、新たな収益機会が拡がりました。

当社のSSは、油外購入客を「VIP会員」として識別し、会員の囲い込みと油外の販売促進のためにガソリン値引き特典を付与しています。したがって今のガソリン粗利は事実上「リッター5円」以下となっています。

もっとシンプルに、薄利多売で「リッター5円」を実現しているSSもあります。立 地・設備・運営力を武器に燃料油を大量販売する一方、店舗運営から本社機能まで徹底的に合理化しています。仕入れ戦略も巧みなPB(プライベートブラン ド)店や元売子会社直営店では、なおさら売価を下げ、量販が可能となります。

しかし当社のような系列特約店では、燃料油特化という選択肢は困難です。やはり油外収益が不可欠です。しかし油外を追求すればするほど、人件費、販促費などのコストも嵩みます。
星飛雄馬は、恵まれない体を養成ギプスで鍛え上げ、大リーグボールを編み出しました。立地・設備力・資産に劣る当社のSSも、何とか最低限のコストで最大 限の収益を獲得できないかと禅問答を繰り返してきました。 そんな中、格好の事例が見つかりました。


社員1人のオペレーション

(図1)は某外資系SSの概要です。社員は1人、アルバイトは時間1、2人で人件費は100万円以下。燃料油特化型セルフ並みの体制です。

給油も洗車も機械任せのセルフ販売です。クリーニングの取次をやっていますが、お客様が衣類を持ち込んで専用袋に入れ氏名を書き込んで置いておくと、業者が取りに来るそうです。人手をかけず、これだけで月20万円の手数料が入るそうです。


レンタカーは12台を用意し、月に100万円上がっています。
車検も取り次ぎです。受注すれば工場との往復だけの業務です。
その他の油外も「おすすめ」は店頭POPに任せます。
このようなスタイルで油外収益は月間250万円となります。「リッター5円経営」どころか、油外だけでSSの総経費がまかなえる月が少なくないそうです。

このSSが成功しているポイントの一つは、立地に恵まれていることです。燃料販売量は400kl、その顧客に対して手のかからない商品・サービスをラインナップした結果、ワンマンオペレーションが実現しました。

私の専門はマーケティングですが、特に油外商品に関しては、いかに合理的に「売る」か、その仕組みを長らく意識してやってきました。しかしレンタカーを始めてからは、お客様の方から「買いたい」と求めて来てくれる「プル型商品」の重要性を思い知らされました。
このSSは、複数の「プル型商品」をラインナップすることによって、ローコスト・高収益事業を実現した事例だと思います。

平塚SSのローコスト化と車販

前に本連載で、当社が直営する平塚SS(セルフ給油)の惨状と改善策について紹介したことがあります。
環境悪化にともなって赤字が続き「撤退止むなし」という状況に追い込まれていました。しかしその前に、思い切って「コストをかけなくても売れる運営体質」に、抜本改革してみようとしたわけです。

昨年4月から着手しました。
まずは出血を止めなければなりません。次のような施策を講じました。
①社員の配備数を5人から3人に削減、アルバイトも削減
②営業時間を16時間から13時間に短縮
③店長はマネジメントと車販業務に特化
④販促費を圧縮し、2人のメカニックが車検販売を担当
⑤アルバイトはレンタカーの受付・作業と洗車プリカの販売
⑥販売対象客の選別には、車番認識システムを活用

その結果、1年間の推移を(図2)に示します。棒グラフは総経費、折れ線グラフは経常利益です。まだまだコストが高いと思われるかもしれませんが、収益は着実に改善されました。

(表3)は今年と昨年の3月の業績を対比したものです。経常利益は前年赤字でしたが、218万円に改善しました。ガソリン販売量は減少しましたが、油外粗利はやや増加しました。

「MIC直営「平塚SS」の業績の変化」【表3】
  2010年3月 2011年3月
  油外
構成比
  油外
構成比
増減
ガソリン数量(kl) 258   245   ▲ 13
ガソリン粗利益(千円) 1,290   1,225   ▲ 65
油外粗利(千円) 5,891 100% 6,125 100% 234
  洗車 225 4% 250 4% 25
カーケアクラブ 240 4% 150 2% ▲ 90
オイル 80 1% 85 1% 5
その他油外 278 5% 500 8% 222
リペア 476 8% 200 3% ▲ 276
保険 66 1% 40 1% ▲ 26
車検 4,175 71% 3,100 51% ▲ 1,075
車販 ▲ 153 -3% 800 13% 953
レンタカー 504 9% 1,000 16% 496
粗利合計(千円) 7,181   7,350   169
総経費(千円) 7,571   5,436   ▲ 2,135
  うち販促費 606   250   ▲ 356
経常利益(千円) ▲ 164   2,176   2,340

油外粗利の内訳を見てください。販促費と販売スタッフを削減したため、車検の粗利が100万円減少しました。一方、車販とレンタカーは数字を伸ばしています。この2商品で油外粗利の3割を占めます。

平塚SSの立地は市街地から離れた田園エリアです。その割にはレンタカーのニーズは高く、店頭にはいつ も貸渡し準備中のレンタカーや帰着後のレンタカーが一時保管されています。 これに値札をつけておくと、給油客が興味を持って近寄って来られるケース少なくありません。そこから会話が弾み、レンタカーがよく売れています。いわばレ ンタカー実車の展示販売です。売価はレンタカーの償却残価に15万円程度の利益を上乗せしています。

お客様の要望を聞きながらオークション場から落札して引き渡す、いわゆる「無在庫販売」の場合にはいろいろ手間がかかり、専任チームを必要としました。しかしレンタカーの展示販売は、お客様の希望や予算を聞いたり車両を探す必要がありません。お客様の選択 肢は、この車を「買う」「買わない」あるいは「レンタルする」の3つだけです。

もちろん売れない車もレンタカーとしてしっかり稼ぎますから、不良在庫にはなりません。売れたときには、新たにレンタカーを補充します。
レンタカービジネスが少ない労力での中古車販売を可能にし、相乗効果をもたらしています。

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