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増田信夫の油外放浪記  MIC社長増田信夫 第30回「ワンマン・カーケアステーション」の着想

「昔はよかった」

これまで私は石油業界に初年以上にわたり、深く関わってきました。率直に言うと、今と比べて昔は、油外商品が売りやすい時代でした。

SS店頭では、「オープンボンネット」を行うのが当たり前の光景でしたし、ドライバーたちも、オイル、タイヤ、バッテリーは、「定期的に交換する」ものと考えており、SSスタッフが給油作業の際、声掛けをすると何ら違和感を覚えることなくボンネットのレバーを引いてくれました。

当時の市場環境もまた、油外販売に味方してくれました。  
 ①未舗装道路が多かった。  
 ②車の性能が低かった。  
 ③車もドライバーも右肩上がりで増加していた。  
 ④競合業態が少なく未熟だった。SSがアフターマーケットの主役だった。  
 ⑤車やTBA商品に強い関心を持つ人が多かった。  
 ⑥SSで働く人材も豊富だった。

加えて、顧客の主流は法人でした。

会社経費ですから、油外商品を購入しても自分の腹を痛めることはありません。だから、SSスタッフが声掛けをすると、いとも簡単に応じてくれました。

洗車やオイル交換の待ち時間は、顧客にとって「仕事をさぼる」ための格好の理由でした。 腕利きのSSスタッフは、コーヒーやタバコをお勧めしつつ、同じ顧客から毎月のようにオイル交換を受注したものです。
そう考えると、実に隔世の感がありますね。

翻って、21世紀の現在、ガソリンも油外商品も成熟市場になりました。 アフターマーケットに参入する業態は実に多様化し、専門化しました。しかし、これに関わる人たちが今、押し並べて苦労しています。

というのも、ガソリンという集客商品を持つSSであっても、昔のように「人海戦術による声掛け」という方法論が通じなくなっているからです。
時代の変化に合わせた「将来に生き残る」ための経営モデルをどう形付けるか、SS経営者のひとりとして私自身もあれこれ思い悩んでいます。

そのキーワードになるものは何か。おそらく次の3点でしょう。
 ①セルフ販売
 ②少人数運営  
 ③楽に合理的に売れる

つまりは、「1人で賄えるカーケアセルフ」というSS業態です。(「消防法」上は常駐者を 2人必要としますが、この場では話をいったん置きます) これを名付けて、「ワンマン・カーケアステーション」と申しましょうか。

「SS店舗を間借りした」レンタカービジネスを実験

「ワンマン・カーケアステーション」を成立させるため、油外商品の主役となるのは、セルフ洗車と中古車レンタカーです。
今のところ、これ以外にベストなものが思いつきません。

中古車レンタカーのビジネス展開については、以前より本連載でも述べてきました。

弊社は目下、フランチャイズ(FC)チェーン方式を用い、「ニコニコレンタカー」を展開しています。しかし、中古車レンタカー需要が顕在化し、また、その需要の伸びるスピードが一段と増していることから、供給がなかなか追いつかないのが実情です。

つまり、車両台数も店舗数も足りないので、極めて多くの「機会ロス」が日々発生していることになります。
その状況に切歯扼腕しておりました。

この状況を打開するきっかけを欲しているところにあって、とあるSSのセールスルームを間借りして、只今、「テナント型レンタカー店」の運営を試行している最中です。これは実績の目処がついた段階で、そのSSにレンタカー事業を引き渡すというスキームです。
当社の直営セルフSSの夜間勤務だったスタッフを、そのテナント店の店長として派遣しました。

「表1」は、オープンした翌月の業績です。売り上げは1,425千円とまずまずでした。

しかし、1,771千円の経費が掛かり、営業利益は346千円の赤字です。

経費の内訳を見ると、人件費と賃借料だけで100万円を掛けています。これではビジネスとして成り立ちません。


「表2」は、レンタカー業務の投入時間です。
合計6,752分間、換算すると約112時間です。時給1,500円としても、人件費は17万円にしかなりません。しかし、店の営業時間中は、スタッフが勤務しているわけですから、58万円の人件費を負担しました。

これが単独店の泣き所です。いわゆる「留守番」に多くの人件費が掛かります。
ついでに言うと、店舗と駐車場の間を行き来する移動時聞がレンタカー業務の4割を占めています。仮に、SSの所有する駐車場が数台分でも使えると、業務効率はもっと高まります。

「格安レンタカー」はやっぱり兼業が最適だ!

このSSが兼業でレンタカーを行った場合の試算を「表3」に示しました。
マーケットは同じなので売り上げは変わりません。

「留守番」の人件費は、丸ごとカットできます。レンタカー業務もほとんどは「埋没経費」として処理できるでしょう。

「表3」では、駐車場移動のための追加人件費と駐車場代を計上しましたが、自前の駐車場が直近にあれば、これらも不要です。
店舗賃料も不要です。水道光熱費も埋没経費になるでしょう。
というわけで、少なく見積もっても月間410千円の営業利益を出せます。
レンタカーがいかに兼業向きのビジネスであるかご理解いただけると思います。

最近、元売会社の直営SSを中心に、燃料油特化型のセルフSSが増えてきました。実質的にワンマンオペレーションが可能なSSです。そこに、セルフ洗車機と中古車レンタカーがあれば、L当たり2~3円程度の油外収益が期待できそうです。

法人を対象にして「格安レンタカー」を告知してみた

レンタカーは、基本的に「待ちの商売」です。
中古車を活用し「兼業」することによって成立するのが、この「格安レンタカー」のビジネスモデルです。

レンタカー料金が安くなることによって、「個人」が「地元」で利用するという、これまでほとんどなかった市場が新たに生まれました。したがって、地元商圏の密度が濃く、一世帯当たりの車両保有率が低いエリア、すなわち、 都市型商圏ほどこのビジネスは有利です。

空港やターミナル駅付近でも大きな需要が発生します。
観光や行楽などの季節需要が見込める地域もありますが、やはり地方では、「個人の地元利用」ニーズを汲み取るだけではいずれ限界が生じます。

そこで昔から存在する「法人需要」に着目してみました。 営業、配達、出張といったビジネス需要のことを指します。
一般のレンタカー店は、収益の多くを法人客で賄っていますが、価格が安いことは、法人にとっても大きな魅力なはずです。法人客獲得の方法ですが、戸別訪問はあまり効果がありませんでした。

当社は以前、地元の企業、工場、店舗の約2万件に対し、社員を総動員してローラー営業を行ったことがあります。粗品やクーポン券などを持って、「こんにちは」と飛び込み訪問し、当店の宣伝をしながらレンタカーのニーズについてヒアリング調査をしました。
その結果、レンタカーをご利用いただいた法人はわずか20件でした。その後のフォローができなかったからとは言え、そこに投入した人件費を考えると話になりません。

どこまで本当か分かりませんが、一般的なレンタカー店の営業マンは、競合店の前で 張り込むそうです。そして、法人客らしい人の出入りがあると、その後をつけて会社を確認し、ピンポイントで営業に行く、そんなスパイまがいの営業スタイル を取っているという話を聞いたことがあります。
どの程度の効果があるか分かりませんが、専任営業マンを雇用するのは、われわれにとって、かなりのリスクです。しかし、法人客の良い点は、比較的長期の利用と平日の利用が多いことです。

そこで次に、ファクスを用いて告知をしてみました。名簿業者に依頼して、価格を訴求する案内状を1万件送りました。
このコスト負担は20万円かかりましたが、4社から計7台の利用申し込みがありました。1カ月以上の長期利用がほとんどですが、なかには、6カ月以上の継続利用もあります。採算が十分に取れる成果です。

例えば、建設業者の方が、「会社の営業車両を減らした。これからは現場の状況に合わせて柔軟に車を利用したい」と借りてくれたり、ある会社では、「新人の営業マンが一人前になるまでは、レンタカーを営業車としてあてがいたい」と3台を数カ月間、借りてくれました。

法人に対して告知する相手、売り込む対象は、レンタカーを利用する人ではなく、経費を管理する担当者(総務部門など)となるでしょう。その立場にある人に有効な経費削減策であることを知っていただきさえすれば、価格競争力はあるので、 既存レンタカー会社から切り替えていただくケースが増えるのではないかと思います。

しばらくこのファクス告知という方法を用い、いろいろなパターンを試しながら、地元法人に対する認知度アップを図ってみようと思います。尤も、地方へ行くほど地場の会社や商店同士の関係が強いので、こうした方法に頼らずとも縁故や紹介で簡単に獲得できるかもしれません。

これからもレンタカーの様々な「商機」を探りながら、本連載を通じ、SS業者に有益な情報を提供したいと思います。

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