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増田信夫の油外放浪記  MIC社長増田信夫 第26回SSレンタカー、どこまで拡大できるか計算してみた

SS店頭のミーアキャット

SS業界には「店頭待機」という伝統的なサービス体制があり、それが日々、きちんと行わ
れることが美徳とされてきました。しかし、セルフ給油が常識となった今、お客様が来店したら即時対応できるよう店頭スタッフを配備することは、あまり意味を持たなくなってきました。

セルフSSでは、「店頭待機」は油外販売スタッフを配備するという考え方になりますが、さりとて、適切なタイミングで「油外が売れる」顧客は、オイルなら車6台に1台、車検なら30台に1台の割合です。

ですから、常時「店頭待機をさせておく」よりも、SSスタッフには、「見込み客が来店した時だけ作業の手をいったん止め、すみやかに対応する」ように指示し、必ず従うようにしておけば、今は十分だと思っています。
前回、当社が運営する平塚SS(セルフ店)での抜本的な収益改善の中身について紹介しました。

「写真1」は、4年ほど前の平塚SSの店頭風景です。アルバイトスタッフが応頭待機し、お客様への告知や給油ヘルプをしながら、油外販売の見込みがあるかどうか探っていたわけですが、しかし、1日のほとんどは立っているだけです。


そ の様子をみて、私は、「ミーアキャット」(写真2)を思い浮かべます。人間を野生の小動物に例えるのは失礼なことですが、彼・彼女らがただ立っているだけ の姿を見るたび、何のためにこの人は立っているのかと疑問を抱いたものです。またそれで油外販売への貢献度も低かったため、「待機スタッフ」は短期間で廃止しました。

ただ、「店頭待機」は今も多くのSSでよく見かけます。待機スタッフの業務と負うべき責任を前もって取り決めている場合はともかくとして、SS店頭に立っているだけで「時給千円がもらえる」というのはおかしな話です。


ーーと、嫌味な書き出しになってしまいました。
今回はまず、当社で試行している中古車レンタカーの「専業店」の状況について明らかにします。以前も述べましたが、7月20日、東京都墨田区に当社直営 「業平橋店」がオープンしました。ここでは、世界一高い電波塔「東京スカイツリー」の建設工事が着々と進めらていますが、「業平橋店」は、そこから直線距離で250m、東武伊勢崎線「業平橋駅」から徒歩4~5分の場所にあります。

立地が悪くてもインターネットで売れる

「東京・下町」とは言え、業平橋店が位置するのは路地裏で、一方通行の道路に面しています。しかも仮設店舗です(写真3)。

この地にオープンした経緯を申し述べると---。
この不況下にあって、地元の町工場など中小零細企業の倒産や廃業が相次ぎ、「4層35台収容の立体駐車場の契約者がほとんどいなくなってしまった」とのこ と。その駐車場オーナーから、「丸ごと借りてほしい」との話があり、相場より安く借りられることになりました。

オープン翌月、8月のレンタカー売り上げは300万円、9月は260万円、10月は300万円という具合で順調です。現在月々400~500人が来店しますが、インターネット上に同店を案内した途端、続々と予約が入るようになりました。

この店の最大の利点は、下町の密集地で乗用車保有率が低いことと、駅から徒歩圏内にあるという利便性のよさです。しかし、店舗が立地するのは、歩行者も車両通行もほとんどない場所ですから、店頭看板が集客に寄与したわけではありません。
顧客のほとんどは「webから」店を見つけ出して入店し、お客様が車を借りるために実店舗にやってきます。

ですから、店頭看板は、予約客が店舗を確認するためのアイキャッチャー(目印)という位置付けに過ぎません。10月末に駅看板や電柱看板を設置しましたが、これも同様の狙いがあります。

先行オープンした「専業店」の新横浜店も、駅裏の寂れた場所にある古いビルの5階が実店舗です。同店も月間400~500万円を売り上げていますが、その集客のほとんどがwebによるものです。


レンタカーは「兼業」が最適だ

現在当社が営むレンタカー店は、SSとの兼業が「4店舗」、専業が「2店舗」です。「兼業」と「専業」の違いを以下に列記します。

利便性の高い場所に自由に出店できるのが「専業」のメリットです。しかし、デメリットはたくさんあります。
①事務所や駐車場への新規投資がふくらむ
②洗車や整備の「設備と場所」を確保する必要がある
③事務機器、什器備品などが新たに必要となる
④スタッフを採用するので新たな人件費負担が強いられる
⑤水道・光熱費が新たに発生する

このように、初期費用・運用費用の面で「専業店」は大きなハンデを負います。来客がほとんどない昼間の時間帯でも、留守番スタッフ(ミーアキャットならぬ、ただ座っているだけのスタッフ)を置かなければなりません。

新横浜店は、事務所、車両受け渡し場所、駐車場、洗車場をそれぞれ離れたところでしか確保できなかったため、さらに余分な要員を必要としています。
そのため、月額500万円の売り上げも、ほとんどがコスト負担で消えてしまいます。

業平橋店は、事務所と駐車場が一体なので、新横浜店に比べるともう少し楽な運営ができていますが、基本的には苦しい台所事情は同じです。

したがって、格安レンタカーの「専業店の運営」を考える場合、路地裏でも空中店舗でもよ
いので、多くの需要が見込める場所に出店することが必須条件です。そして、集客力を持つホームページに掲載し、かつ需要を満たす車両台数を確保し、供給していかなければ、損益分岐点を超すことは困難です。

新横浜店のすぐ近くにトヨタレンタカー店があります。おそらく当社の安値レンタ カーを苦々しく思っていることでしょう。しかし、SS業界のように価格追従をしません。専業店はコストの壁があるため、価格競争ができないのです。高コストなSSが価格競争をできないのと同じ理屈です。

そう考えると、中古車を用いた格安レンタカーは、「兼業」で行うのが事業リスクも格段に低くて有利です。当社が加盟する「ニコニコレンタカー」はこのところ、SS以外の兼業店での広がりがみられ、とりわけ整備事業者の方々が話を聞きに来られるケースが増えています。
整備工場は一般に立地条件に恵まれていません。

私は当初、格安レンタカーの事業適性は「立地」と「店舗力」だと考えていました。 ですから、SSほど兼業で最適な業態はないと思っていました。ところが、業平橋店や新横浜店に見られるように、webが持つ告知力は、ロードサイド店の店 頭看板のそれと同等か、もしくはそれ以上のものがあることに気付きました。

つまり、地元商圏のお客様が、徒歩や自転車、あるいは公共交通機関を使い、足を運べる便利な場所にさえあればよいのです。だから、車検用に10数台の代車を保有し、駐車スペースを確保する整備事業者が中古車レンタカーに興味を抱くようになったわけです。

中古車レンタカーは、店舗数が増加するのと並行して市場が急速に拡大しています。ニコニコレンタカーに加盟する約500店の月間平均売り上げは50万円を越えました。そのうち約1割の店は同100万円を超えています。

webのアクセス数を見ると、今年3月は1日平均4000件でしたが、今や同8000件を超えています。
同様の業態のチェーン店を含めると、中古車レンタカーがそろそろ一般的に認められる「市場を形成する」のではないかと思います。

市場が持つポテンシャルの算出法が分かった!

中古車レンタカーという新しい市場を考える上で、「商圏内で顕在化する最低限の需要」に ついて算出する方法を考えました。
これを「MAMOLD」 (マモルド)と称します。

当社では定期的にマクロミル社に依頼して、全国の免許保持者を対象に「中古車格安レンタカー利用に関するアンケート調査」を実施しています。
その結果、1世帯当たり月間約300円の「市場規模」が潜在的に存在することをつかみました。

例えば、店舗半径2km圏内に2万世帯があれば、月間600万円の市場規模です。仮に、全世幣が「中古車レンタカー店が私の町にある」と認知し、かつ独占できたなら、その店は毎月600万円の売り上げを獲得することができます。

また同調査によると、ニコニコレンタカーの平均認知率は現在12%でした。ですから、2万世帯の市場でニコニコレンタカー店を今始めれば、市場規模の12%(72万円/月)は、レンタカーを用意するだけで獲得できるわけです。これが「MAMOLD」です。

そして、時間経過に応じてリピーターが増え、商圏内の認知度も上がるため、「MAMOLD」はなお一層高まります。さらに、店頭看板などで積極的に告知すれば、認知されるスピードも増し、これに「MAMOLD」が比例します。

例えば、2年前に「中古車レンタカー」の営業をスタートしたSSの認知率は20%を超えます。こうした考え方をもとに、ニコニコレンタカー加盟店の「MAMOLD」を算出し、現状と比較してみました。「表1」は、5カ所のSSを例示したものです。

店舗別レンタカー実績と市場ポテンシャルの比較【表1】
SS レンタカー実績 市場ポテンシャル 市場
占有率
(%)
評  価
売上
(千円)
車両数
(台)
稼働率
(%)
MAMOLD
(千円)
必要
車両数
(台)
A 2,030 19 98 4,700 44 43 商圏需要が非常に高い都心部にあって高い実績を上げている。
しかし市場の顕在化スピードに車両供給が追いついていない。
B 1,050 10 89 1,050 10 100 車両稼働率は高いが、現状のMAMOLDをほぼ獲得できている。
商圏告知を図れば、さらにMAMOLDは拡大する。
C 930 10 84 2,620 28 35 実績は悪くないが、月間260万円までは無理なく獲得できる。
現状に満足せず、その需要を満たすまで増車を図りたい。
D 270 5 86 2,300 43 12 月間200万円以上の市場が顕在化しているにもかかわらず、
車両5台では戦力不足。今のままではSSにも顧客にも貢献度は少ない。
E 270 8 30 50 1 540 商圏世帯数が極端に少ないため、地元需要はほとんど期待できない。
季節変動の高い観光需要を狙うためには、広告宣伝が必要か。

※MAMOLDは2010年7月調査時点での認知率をもとに算出
※数字は分かりやすく四捨五入しています

ASSは車両19台で月200万円の実績です。素晴らしいですね。しかし、「MAMOLD」では470万円を示しています。車両を44台確保すれば、獲得できた売り上げです。逸失利益は月間270万円になります。

甚だしい例がDSSです。「MAMOLD」は230万円あるのですが、車両を5台 しか用意していないため、売上実績は27万円に止まっています。この店のレンタカーを借りるのは、ものすごい競争率です。このままでは顧客から「借りたい 時に借りられないレンタカー屋」の烙印が押されるかも知れません。

逆に、BSSは、「MAMOLD」が105万円、売上実績も105万円です。今の顕在需要を完璧にカバーしています。今後、認知率が。高まるにつれ、車両台数を増強すればよいでしょう。

ESSは商圏内世帯数が極端に少ない店です。地元需要はほとんどありません。しか し、観光特需によって一時的に27万円の売上実績となりました。このようなケースは稀です。ほとんどのSSは、ASSやDSSと同様の傾向です。すなわ ち、「MAMOLD」の伸びに比べ、車両の供給が追い付かないのが現状です。

新車も、中古車も、アフターマーケットも、燃料も、いずれも縮小傾向にある自動車市場の中で、唯一右肩上がりをしているのが中古車レンタカー市場です。しかも「兼業」でやる限り、その取り組みやすさは、燃料、車検、オイルなどと比べて簡単です。

マネジメントカなどとは関係なく、市場の成長とともに事業が成長します。ですから、足元商圏の市場性さえ見誤らなければ、太くて安定した油外収益に育つことでしょう。

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