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増田信夫の油外放浪記  MIC社長増田信夫 第25回買ってくれるお客様「VIP会員」を大切にしよう!

不具合を指摘すると6割は他店に流れる?

当社直営SSの近隣に外資系セルフSSがあり、燃料油を1,000kl近く販売しています。

セルフSSの燃料油は「ほっとけ」商品です。フルサービスSSだと販売量に比例して人件費も増えますが、セルフなら人件費は固定です。ですから売れるほど儲かります。L当り5円も口銭があれば燃料油特化型セルフとして十分に成立します。

かつてフルSSで月間500kl売れれば「量販店」と言えましたが、セルフSSなら月間1,000kl売るSSも珍しくはありません。全国で100カ所は下らないでしょう。
「月間1,000klを売る」ということは、月間来店台数が5万台、1日平均1,700台前後あります。運転者、同乗者合わせると、毎日3,000人が敷地をまたいでSSに来てくれる計算です。これは大変な数です。

もし仮に100人中1人が買う商品をラインナップしたとすると、毎日30個、月間 1,000個が売れます。例えば「ほっとけ」で車10台に付き1台が買ってくれるセルフ洗車があったとして、これを取り扱うと、それだけで月間5,000 台売れるわけです。つまり量販店は、「客数が多い」だけで圧倒的に有利なのです。

一方で、当社直営SSは、カーケア販売で競争力を強化しなければやっていけません。少ない客数の中から油外商品を買ってくれる顧客を見つけることが大きなテーマです。こうした顧客を「優良客」とか「ロイヤルカスタマー」とか「VIP」と呼びます。

「グラフ1」を見てください。
当社のフルサービスSSで一時期、洗車を実施した際、無料でエンジンルーム点検を行ったことがあります。点検結果はシートに記入し、ダッシュボードに置いておきました。これを見て、お客様がその後どういう反応をしたか追跡調査したものです。

何と8割の顧客が、点検結果にしたがって「不具合を直した」と答えています。SSの指摘に対して、ほとんどの顧客が、SSを信頼して行動していただいたことが分かります。

ところが、「当店で直した」顧客はその半数、全体のわずか38%でした。
洗車客に対してパーフェクトにエンジンルームを点検することは、SSスタッフの教育訓練やマネジメントを含めると多大なコストと労力が掛かります。しかしその半数以上が、競合他店の販売に貢献していることを知り、愕然としました。

それならば買ってくれるお客様「VIP」だけに「選択と集中」しよう、というのが「VIP戦略」の考え方です。

油外購入客の「VIP会員化」は効果的な方法

自動車のアフターマーケット市場が成熟していると言われます。
商品購入の中心であった「団塊の世代」がリタイヤし始め、車に対し積極的にお金を使う人口が減少したのが、その構造的な理由ではないかと思います。

ですからSSに限らず、カーショップや整備工場などの競合相手にしても同じ状況に直面しているわけです。それだけに、SSで油外商品を買ってくれるお客様の存在は、一層ありがた味を増してきました。

当社直営SSの「VIP会員」制度は、そういうお客様を特別扱いする仕組みです。
カーメンテナンスサービスを優遇することを約束し、また、その見返りとして、入会金をいただきます。油外商品は会員価格で提供し、安全点検やウィンド ウォッシャー液などの補充は無料で行います。車検や車販など高額商品は、特別プレゼントや割引を用意しています。

L当り50円もの油外商品を買ってくれるお客様ですから、他SSへの流出は何としても防がなくてはなりません。そこでガソリンも会員価格で提供します。
とはいえ、これとて特別に目新しいものではありません。「買ってくれる顧客をしっかりとフォローする」のが、VIPサービスの精神です。

「VIP会員」への入会をお客様にお勧めするとお客様の購買行動が変化します。

「グラフ2」は、「VIP会員」に入会した顧客の入会前1年間と入会後1年間の油外収益貢献額を比較したものです。

「VIP会員」に入会する前の油外購入金額は平均11円/Lでした。それが入会後は37.5円/Lとなり、3倍以上に油外購入金額が増えました。


つまり、月間のガソリン購入量60Lの顧客の場合、「VIP会員」に入会する前の 油外収益は660円。しかし、入会後は2,250円となり、1,590円増加するのです。このような「VIP会員」が1,000人いれば、月150万円以 上の油外増収となります。

この変化の理由は、「VIP会員」の懐具合が急に良くなったわけではありません。当店へのロイヤルティが高まったため、油外商品の購入場所を当店に切り換えた、つまり、顧客がSSの「選択と集中」をしたからにほかなりません。

油外購入金額の変化の著しい順に、Sグループ、Aグループ、Bグループと分けてみました。
「VIP会員」入会前は、どのグループも大きな差は見られません。
ところが約3割のSグループは、入会後に購入金額が「85.9円/L」となり貢献度が上昇しました。3割のAグループは微増です。残り4割のCグループ は、「VIP会員」に入会しても油外購買金額はあまり変わりませんでした。

もともと油外を買ってくれた顧客をVIP会員化しただけでは、ここまで劇的に購入 金額は増えません。これまで「たまたま他店で油外を買っていた」けれども、当店で買うことに抵抗がない顧客をも「VIP会員」化できるのが、この「VIP 会員」制度のいい所です。

「VIP会員」制度のいいところは、まだあります。
①入会キャンペーンを実施すると、300~500人の新規入会会員が獲得できます。入会金3千円なら、90~150万円のキャッシュフローを短期で得ることができます。
②入会キャンペーンにより、スタッフ個々の入会おすすめスキルが向上するので、その後も毎月、入会金という油外収益が得られるようになります。
③オイル交換や車検を実施する顧客にVIP会員をすすめると、会員サービスと相殺されることになるので、ほぼ100%の確率で入会します。
④「VIP会員」は油外を「買ってくれる」顧客ですから、「お勧めする」スタッフにも心理的なプレッシャーはありません。

「グラフ3」は、洗車、オイル前売券を「お勧め」した場合の販売結果です。

一般客は10人中8人に断られますが、「VIP会員」は五分五分です。これだけ打率が異なるとスタッフが「お勧めする」際の気持ちも俄然として変わってきます。そして精力的に「VIP会員」を増やそうと頑張るようになります。

このようにして囲い込んだ「VIP会員」は、なかなか他店に流出しません。ですから、来店客に占める「VIP会員」の比率は次第に上昇します。


オイルは半年ごとの「ミニ車検」

油外商品の多くは販売する前に「点検作業」を伴います。点検作業によって修理交換の必要性を説き、お客様から理解が得られなければ売れません。

当社直営SSでは、オイル交換を受注したら作業時に必ず点検を行っています。オイル交換時にはボンネットを開け、リフトアップもしています。なので、作業の"ついで"に点検ができます。

「車検」を受注したら、継続検査だけでなく点検・整備を行います。同様に、オイル 交換も「オイルが売れればそれで良し」とするのではなくて、点検し不具合箇所を指摘して、整備を受注します。車検は2年に1回のサイクルで実施しますが、 オイル交換なら半年ごとに点検できます。

「表1」は、当社直営SSがオイル交換時に点検することにより「売れたもの」の一覧です。オイル交換当日に売れる場合もありますが、「時間」と「お金」を用意してもらい、後日注文していただくケースがほとんどです。

オイル交換時クィックチェック実施客の購入状況【表1】
(スーパーステーションNT茅ヶ崎店 N=343人(台) 車検・洗車・コーティングは除く)
  項目 件数
(件)
粗利益(千円) 購入客比率
(%)
  購入1台当り
(円/台)
オイル交換1台当り
(円/台)
1 エンジンオイル 343 188 548 548 100
2 エレメント 140 214 1,529 624 41
3 フラッシング 73 44 603 128 21
4 カーケアクラブ入会(更新) 59 184 3,119 536 17
5 ATF 15 89 5,933 259 4
6 LLC 16 53 3,313 155 5
7 ブレーキフルード
14 46 3,286 134 4
8 パワステオイル 5 19 3,800 55 1
9 エンジン洗浄 65 215 3,308 627 19
10 タイヤ 23 60 2,609 175 7
11 タイヤ作業 39 60 1,538 175 11
12 ワイパーブレード 26 14 538 41 8
13 バッテリー 7 27 3,857 79 2
14 電球交換 16 8 500 23 5
15 軽整備 40 402 10,050 1,172 12
16 有料点検 13 117 9,000 341 4
17 ボディリペア他外注 12 363 30,250 1,058 3
18 合計 906 2,439   7,111  
19 除・オイル購入 563 2,251   6,563  


平均すると1回のオイル交換当たり7千円の油外収益をもたらしてくれます。
このようにオイルを入口として時機を逃さず、メンテナンス商品を根こそぎ受注することができます。となると次の課題は、オイル交換客をいかに獲得するかです。

通常のオイル交換の販売方法は、お客様の車のボンネットを開け、オイルの汚れをチェックしてお客様に示します。
ところが買わない顧客がほとんどです。なぜでしょう。

オイルに限らず、油外商品をお客様が購入する条件として次の5項目が挙げられます。
①その商品内容を理解している(価格、品質)
②今、その商品を購入する必要がある(劣化、破損)
③今、時間がある
④今、お金がある
⑤この店で買ってもよいと思っている

この5つの条件がすべて揃わなければ、お客様は買ってくれません。逆に言えば、この5つの条件をいかにクリアするかがSSの油外販売のポイントと言えます。 スタッフ教育やPOPの工夫などで、①と②を満たしただけでは売れないのです。
「VIP会員」だけにお勧めすることによって、⑤をクリアすることができます。 問題は③の時間と④のお金です。この2つは、SSの努力だけでは解決できないように思います。

そこで当社直営SSでは、「オイル交換の予約」という方法を採り入れました。予約特典を用意し、「好きな時に来てください」というメッセージが発信されれば、時間とお金の垣根は一気に低くなります。さらに予約販売は②の問題さえもクリアできます。
このようにして5つの購入条件をすべて揃えた上で、今夏は「夏の愛車ケア」というキャンペーンを実施しました。

同キャンペーンの対象は「VIP会員」です。手順は次のとおりです。
「VIP会員」が来店したら、会員サービスの一環として「ウィンドウォッシャー液」などの補充サービスを申し出ます。
すると約7割が「お願いします」と応じてくれました。その間、お客様には簡単な「愛車チェック表」を書いてもらいます。そして、作業完了報告と同時に、記入していただいたチェック表を見ながら、カーケアアドバイスをします。

このようにしてお客様との良好な関係づくりを行いつつ、「次回のオイル交換も、ぜ ひウチでやらせてください」と申し出ます。 これには、お客様は「ああいいよ」と応じてくれます。すかさずオイル交換について予約のご案内をします。その結果、6割のVIP会員が予約してくれまし た。また実際に、そのうち95%が約束通りオイル交換を実施してくれました。

少々の手練手管を要するアプローチですが、これほど高い受注率と交換率も、実は「VIP会員」の存在があってこそのものです。一般客にまで対象を広げたら、とてもこれだけ効率的な販売結果を出せません。SSスタッフもおそらくやる気を失ったことでしょう。

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