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増田信夫の油外放浪記  MIC社長増田信夫 第24回「現状維持で黒字化した」平塚SS

新名所「東京スカイツリー」直下に単独レンタカー店を出店

東京下町の新名所となった「東京スカイツリー」。目下、世界一の通信中継タワーが着々と建設されています。
そのツリーの直下、東武伊勢崎線「業平橋(なりひらばし)駅」から徒歩3分の場所に、今年7月、中古車レンタカーの直営店を出店しました。

周辺は住宅密集地で世帯数が多く、自動車保有率は低い地域です。しかも駅近です。ですからレンタカービジネスの適合度は非常に高い立地です。
オフィス街から外れているので駐車場ニーズは低く、そのため、回転率に苦しむタワー駐車場を安く借りることができました。

インターネットでレンタカーを探す時、「トヨタレンタカー」「ニッポンレンタカー」など「レンタカー」を含む複合ワードで検索する人が多いことは以前にも述べました。
そういう中にあって、当社が加盟する「ニコニコレンタカー」を単語入力し検索するケースは現在、レンタカー業界で第6位の多さです。

検索数に対するレンタカーの在庫台数は、「トヨタ」の場合、1.5倍程度です。これに対し「ニコニコレンタカー」の場合、全国平均20倍以上の競争率です。つまり、ニーズに対して在庫がない状況が続いています。

JR新横浜駅に続いて業平橋駅付近に単独店を出したのは、レンタカーニーズの高い地域で車両をたくさん用意し、少しでもそのニーズに応えたいという意図があります。まだ7月中旬にオープンしたばかりですが、レンタカー25台で8月は296万円を売り上げました。
次の機会に続報をお知らせしたいと思います。

撤退に瀕した「平塚SS」の赤字状態

さて、今回は当社直営セルフ店「平塚SS」の話をします。
このSSは今年の春ごろまで、日の前に「撤退」という恐ろしい三文字がちらつく赤字状態にありました。

数年前、平塚SSの直近に、広くて新しい量販型セルフSSが出店しました。それ以 来、同じ商圏の有力店同士のつば競り合いが続き、また、そのあおりを食って、同店のような中途半端な立地、敷地面積、販売数量のSSはジリ貧状態に陥りま した。最盛期に月間400klを超えたガソリン販売量も、現状は同270kl。3割以上のお客様が流出したことになります。

悲しいかな、給油客の減少に連動して油外収益も下降線をたどりました。
そこで社内で徹底的に議論して作り上げたのが、「平塚SSリバイバル計画」です。日産のゴーン改革ではありませんが、「不可能を可能にできるか、検証して みよう!」をスローガンに掲げ、これまでの運営方針をゼロベースで構築し直し、次の方針を立てました。(表1)。

①コストの大幅カット

②営業時間の短縮
③油外収益の維持

それまでは16時間営業だったものを「13時間営業」へ時間短縮。これに伴い、アルバイト・パートの人員を削減し、5人いた社員も配置を換え、3人にしました。 ただし、戦力を維持するためにSSスタッフの業務を見直しました。

社員3人のうちの1人、店長には車販専任チームのリーダーをしていた者を据えました。その役割はマネジメントと車販です。
車販は、見込み客との商談、オークション落札、書類手続き、納車に時間を要します。常時、複数のお客様との交渉や連絡が発生するので、片手間にできる仕事ではありません。そこで車販業務は店長に任せることにして一本化しました。

それ以前は、SSは車販見込み客を見つけるだけ。その情報をもとに「車販チーム」が販売業務を完結していました。したがって、「車販チーム」の人件費を負担していました。
でも今は、店長が車販業務を兼任するようになったので、粗利益は減少しているものの、逆に経常利益は増えました。(グラフ1)


販促コストのかからない「リピーター」と「ほっとけ油外」

販促費を大きく減らしました。車検は、競合との争奪戦の激しい商品ですから、折り込みチラシなどの販促費が掛かります。しかし、この争奪戦に販促費を投入するのを止め、既存顧客をしっかりとフオローし、リピーターを確保するようにしました。

これが「2人の社員」イコール「メカニック」の仕事です。
これまで、販促費を投入してきた貯金が、年間800人の車検客という形で残っていますのでこれをまずフォローします。

もちろん、リピータの流出は避けられません。しかし、車番認識システムにより、SS店頭で新規の車検見込み客を見つける作業は機械化されています。ですから、店頭販売で不足分を補い、月間50台を維持しようと考えました。

一方で、コスト負担を増やしたのがレンタカーです。
車両台数を増やしました。平塚SSの近隣は、田んぼと農家が点在するレンタカーにはあまり向かない立地です。が、10台のレンタカー車両を用意していて も、『いつも出払つており、借りられない」という顧客の苦情が寄せられていました。また、店長の要請もあって、思い切って計17台にまで増車しました。

レンタカーは、「ほっとけ」で売れますから、販売コストはかかりません。アルバイトですべて対応できますから、平均客単価6,500円に対し、500円の人件費で賄えます。

アルバイトのもうひとつの仕事が洗車の販売です。
セルフ洗車ですが、車番認識システムの活用により顧客の洗車履歴が分かります。そこで洗車のヘビーユーザーにはプリカをお勧めし、顧客の囲い込みをしま す。また、洗車未経験の顧客には「洗車1回無料券」を渡します。全員に配布すると洗車収益がマイナスになってしまいますが、洗車しないお客様のみに1回だ け試してもらうのであれば、歩留まりが期待できます。

赤字からの生還

まとめると、このようになります。
①店長がマネジメントと車販を行う
②メカニツクが整備作業と車検客をフオローする
③アルバイトがレンタカー作業と洗車の販促を行う

SSの運営コストを抑えながら、業務を「選択と集中」することによって、少人数で客数と収益を維持する体制を敷きました。

その結果は「表2」の通りです。
営業時間を短縮したにもかかわらず、ガソリン販売量は前年並みにまで回復しました。
粗利益は、ガソリン口銭が減少し足を引っ張られましたが、前年実績が維持できました。コストは総額230万円下がりました。したがって、「SSの廃止」宣言す前だった平塚SSが一転して、月130万円の黒字化に成功しました。

「平塚SSの8月実績」(前年同月対比)【表2】
  2010年8月 2009年8月 前年比
販売量(kl) ガソリン 265 275 ▲10
軽油 8 8 0
粗利益(千円) 燃料油粗利 1,044 1,230 ▲186
油外粗利 洗車 367 253 114
カーケアクラブ 112 110 2
オイル 98 80 18
その他TBA 655 768 ▲113
車検 1,550 1,882 ▲332
ボディリペア 112 36 76
保険 29 46 ▲17
車販 900 1,372 ▲472
レンタカー 1,308 564 744
油外収益小計 5,131 5,111 20
その他収益   162 ▲162
粗利益合計 6,175 6,503 ▲328
経費 人件費関連 2,147 2,581 ▲434
他経費 3,130 5,006 ▲1,876
経費合計 5,277 7,587 ▲2,310
経常利益 898 ▲1,082 ▲1,550

収益を支えたのはレンタカーです。前年56万円だったのに対し、今年は130万円ですから、倍以上に増加しました。増車により維持費は30万円アップしましたが、安定して稼働しています。(グラフ2)

「社員が一生懸命に頑張って現状を維持し、さらにアルバイトが新事業を伸ばす」という面白い構図が描き出されています。
経費については、人件費と販促費を合わせて90万円減っています。昨年はこれに加えて車販チームの人件費が掛かっていたので、それを考慮すると結果として180万円のコスト削減ができたことになります。

販促費と人件費を投入して「ガツガツ売る」スタイルから、「ほっとけ油外」とリピーターを中心に「ムリせず売る」スタイルへと体質が変わりました。

地域の機能を利用した販売促進

ところで、販促費を削減した分、平塚SSの店長は、「お金のかからない販促について」いろいろと試しています。

集客・ガソリン増販では、その中心は「Eメール」と「ポイントセービング」です。きめ細かなメールの内容は特に、顧客に好評のようです。
また、周辺の学校に働きかけて、「ペットボトルの『エコキャップ』をSSに持ち寄ってください」と呼びかけています。また、農協にはSSでの「朝市」の開催を呼びかけています。

このように地域との関係をより深め、フレンドリーで身近なSSへと変身を遂げようとしています。どんな業種・業界、団体でも、客数減少、収益減少に苦しんでいるので、お互いの機能が利用し合えるような地域ぐるみの販促活動は面白いと思います。

まだ平塚SSは再生の緒についたばかりですが、成熟時代の 「弱小SSサバイバル」のモデルに是非なれたらと、思っています。

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