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増田信夫の油外放浪記  MIC社長増田信夫 第23回SSにしかできない未開拓市場「ブルーオーシャン」を目指せ

差別化が差別化にならないレッドオーシャン

「ブルーオーシャン」「レッドオーシャン」という戦略用語を聞いたことがありませんか。
アメリカの経営学者が様々なビジネスモデルとyその市場の競合状態を表現するために用いたものです。

「ブルーオーシャン(青い海)」とは、競争相手がいないビジネス領域を意味し、「レッドオーシャン(赤い海)」とは、同じビジネスモデル同士が血で血を洗 う過当競争の市場です。「レッドオーシャン」市場では、さかんに"差別化"という言葉が飛び交います。そして差別化を繰り返すうちに、皮肉にも競合者間の 差異がますます薄れていくのだそうです。

たとえば米国の洗剤市場では「タイド」というブランドが圧倒的に強く、高くても売れていました。しかし競合企業が商品やマーケティングで必死に差別化を図 り、タイドも対抗戦略を講じているうちに、価格も品質も違いが薄れてしまったそうです。同一市場で競合会社が差別化を重ねると、ブランド価値が低下すると 本に書かれていました。

SS業界も典型的な「レッドオーシャン」ですね。ガソリン需要は毎年3%減少し、10年後には3割減となるそうですが、ガソリンにせよ、メンテナンス商品 にせよ、市場は成熟しています。その中で差別化を繰り返すうち、結局、取扱商品も、サービスも、価格も、横並びになってしまいました。

こうした環境下で売るためには、さらに差別化=「ムリ」をしなければなりません。
この終わりなき競争に終止符を打ち、SS業界も「ブルーオーシャン」を切り拓くことができないものでしょうか?

業界プロが見落とす新たな市場の芽

「QBハウス」という理容チェーンをご存知でしょう。10分1,000円のヘアカット専門店です。5年前に1号店ができ、今や国内に400店以上展開しているそうですが、「ブルー」の典型例の一つとされています。

私なりに整理すると「QBハウス」の特徴は、
①小スペースで安い賃料コスト
②カットだけのニーズに特化(洗髪・顔剃り・肩もみなどをしない)
③水道設備なし
④整髪および清掃(掃除機)のシステムをユニット化
⑤機械で前払い・釣り銭なし
⑥少人数スタッフがカット作業に特化

こうした方法が、10分1,000円で顧客回転率の高いカットサービスを可能にし ました。 と、あとから考えればシンプルなビジネスモデルです。しかし「QBハウス」の凄いところは、カットだけでOKという消費者の潜在ニーズを見つけ、既存サー ビスを求めるヘビーユーザーを捨てたことです。まさに「コロンブスの卵」で、これまで理容業界が「当たり前」と疑わなかった洗髪などのサービスをばっさり 捨て、「カットだけでOK」というニーズに特化した店舗運営システムを作り上げました。その結果、同社は、見事に「ブルー」を享受しました。

SSビジネスにもこのような「見えない足かせ」がたくさんあるのかも知れません。
今、一筋の光明が見えています。SSだけが享受できる新たな「中古車市場」です。

既存の新車・中古車市場は「レッド」です。 カーディーラー、中古車店、整備工場、カーショップ、最近はWebを利用した個人売買も出てきました。鹿児島には店頭で車を売る大手スーパーがあります。 メーカーのキックバックによる大幅値引き、メンテナンスの格安パック、記念品プレゼントなど「レッド」ならではの差別化オンパレードの市場ですです。

しかし1点の突破口がありました。 自動車市場は、新車市場と中古車市場があります。
中古車市場は、およそ「年式10年未満、走行距離10万km以下」の車に価値があるとされ、流通しています。したがってこの範囲に入らない「10年以上、 10km以上」の車は、「ポンコツ」と呼ばれ、スクラップ業者による部品取りと鉄屑としての価値しかありませんでした。

ところが、「ポンコツ」の中にも「安全に走る・曲がる・止まる」という機能が損なわれていない車はたくさんあります。
「ちゃんと走ればいい」「必要なときだけ、低料金で使いたい」というニーズが、実は潜在的に大きく存在している可能性があるのです。

SSが既存のインフラを活用して実現する「中古車レンタカー」「中古車リース」というビジネス軸が、こうしたニーズに見事マッチしようとしているのです。(表1)

「年式別車両用途概念」【表1】
  A
B
C
年式 ~10年 10年~
走行距離 ~10万km 10万km~
一般的な呼称 中古車、Uカー ポンコツ車、ケタ車、廃車
機能価値(走行性能・安全性)
従来型商品価値 国内市場転売価値 × ×
スクラップ価値(含パーツ取り)
海外市場商品価値(中古車輸出)
SS型新規商品価値 レンタカー価値 ×
リースカー価値

ポンコツ車は
SSのブルーオーシャン

私はポンコツ車を「Vカー」と呼びます。"バリュー"あるいは"ビクトリー"の「V」です。 SSは、既存の設備、人を活用することができるため、設備投資も人件費もかかりません。 また圧倒低な客数を持っているため、顧客からVカーを安価に下取りする力も強力です。

したがってSSだけが、望む顧客にVカーを、安価に提供することができるのです。
さらにSSは、比較的好立地にあり、地域の信頼が高いという大きな優位性があります。ですから、店頭POPを中心とした訴求で、お客様の方から求めに来てくれます。

車検は95年に自由化されて以来、SSの定番商品となりました。中古車オークションを活用した中古車売買も、多くのSSで取り組むようになりました。そして車検を契機として買替え需要を取り込むことができるようになると、下取り車や廃車がSSに舞い込んできます。

この中には、中古車としての価値はないけれども、まだまだ走る「ポンコツ車=Vカー」が存在します。それらを廃棄処分するのはもったいない、という考えから「中古車レンタカー」ビジネスが誕生しました。

中古車レンタカーにすると、1台につき年間60万円以上の利益をもたらします。そしてレンタカーとして役割を終えた車、あるいはレンタカーに回せないけれどもまだ走る車は、「中古車リース」に使用します。 リースカーでは、1台につき年間20万円以上の利益になります(名義変更手数料含む)。そして走らなくなったら、リース契約終了。その車は鉄屑相場に応じて取引されます。

このように、「車の第2、第3の人生」をSSで収益化する仕組みができ上がりました。
当社では2年前から中古車リースのビジネス実験していますが、このようなニーズが寄せられます。
①車両コストを下げたい法人
②車を買い替えたいが、納車されるまでの繋ぎで必要
③急に一定期間、車が必要になった
④ローンが組めない、しかし車が必要

時代を反映したニーズで、なるほどとうなずけます。 ユーザーの負担金額を比較すると、1ヶ月利用ならレンタカーの方がやや安く、3ヶ月以上利用ならリースカーの方が、車庫代負担を考慮しても安くなります。(表2)

レンタカー vs. リースカー 顧客の負担費用比較(マーチ利用の場合) 【表2】
※レンタカーはニコニコレンタカーのマンスリーユース料金を適用
レンタカー リースカー
1ヵ月間利用 合計 登録手数料
38,000
レンタル料・リース料 55,000 15,000
車庫代-1ヵ月
10,000

55,000 63,000
月間平均
55,000 63,000
3ヵ月間利用 合計 登録手数料
38,000
レンタル料・リース料 165,000 45,000
車庫代-3カ月 30,000

165,000 113,000
月間平均 55,000 37,667
6ヵ月間利用 合計 登録手数料
38,000
レンタル料・リース料 330,000 90,000
車庫代-6ヵ月 60,000
330,000 188,000
月間平均 55,000 31,333


当社直営店では現在、レンタカーとして約250台、リースカーとして約40台が稼働しています。リースの方は、車両不足のため、まだ一般告知していませ ん。ニーズのある顧客に対して、個別に応じている状況です。レンタカーとしての役目を終えた車が大量に出るようになれば、リースカーの一般告知もできるで しょう。告知すれば眠っていた需要がどっと押し寄せるのではないかと思っています。

このように、自動車業界のプロが関心を持たない「Vカー」が、SSでは立派な商品になり、「ブルー」市場を形成するのではないかと思います。

店頭オペレーションのブルーオーシャン

「ブルー」と「レッド」では、店頭オペレーションも変わります。
(図3)(図4)は、「車検」と「レンタカー」の販売・業務時間を比較したものです。
まず車検から見てみます。

SSでの車検販売は「顧客の来店頻度が高い」という優位性を活かすことになります。そこで、大量の来店客の中から、まずは車検満了の近い顧客(対象客)を見つけることから始めます。かりにガソリン販売量200klのSSなら、月間100台の対象客が来店しています。

これをくまなく見つけるためには、月間8,000台の来店車両の車検商標をチェックしなければなりません。そのためだけに、少なくとも常時1人のスタッフが必要です。1日16時間営業のSSなら、月間480時間の労働投入量です。

そして100台の対象客に対し、声かけ、商談、成約といった「口説く」作業を繰り返します。正しく実施すれば、だいたい40台の車検を獲得することができます。投入時間は約22時間。

次に40台の車検を処理します。その「こなす」時間は約133時間。
「見つける」「口説く」「こなす」合わせて、月間635時間を投入することになります。
しかしお客様が評価し対価を払っていただけるのは、「こなす」133時間に対してだけなのです。

お客様が1円も支払ってくれない「見つける」ための480時間があるため、車検の 労働生産性は低くなってしまいます。ですから普通は480時間も投入しません。他の業務の片手間に「見つけ」て10台程度の車検獲得で良しとするか、ある いは「見つける」作業を機械化するわけです。

一方、「ブルー」の代表である中古車レンタカーでは、「見つける」「口説く」作業 は不要です。かりにレンタカー20台を保有し稼働率が50~60%程度であれば、「こなす」ために180時間の投入が必要なだけです。しかもそのスタッフ に専門技術は必要ありません。

中古車レンタカーは半日~数日の利用がほとんどですが、中古車リースはもっと長期の利用になります。したがって「こなす」時間さえ、ほとんど必要としません。
このように、「レッド」と「ブルー」では運用コスト面でも天地の開きがあります。

ただし中古車レンタカーも、リースも、SSの経営資源を前提として成立するビジネ スです。ですから「レッド」を捨て去るわけにはいきません。バランスよく「ブルー」を開拓しつつ、「レッド」で流した血を「ブルー」で補えるようになれ ば、「レッド」も有利に戦えると考えます。

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