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増田信夫の油外放浪記  MIC社長増田信夫 第21回「無理をしない」SS経営は可能か?

コスト削減をしたら「ほっとけ油外」が浮き彫りになった!

4月に、新日本石油と新日鉱ホールディングスの経営統合によりJXホールディングスが発足しま した。そして、7月から各事業会社3社が動き始めました。当社直営4カ所のSSのうち3カ所は、「エネオス」ブランドで運営しています。新会社に期待する とともに、従来に増して、安定供給と競争力のある商品群の開発を切に願っております。

我が社が1995年にSSに参入してから、以来、私が経営姿勢として貫いてきたのは、「必要なコストはしっかりかけ、そこから得られる収益を最大化する」というものでした。
間違った考えだと思っていませんが、昨今、あまりに燃料油がSS経営の足を引っ張る状態が続いており、そこで、時局に対応するため、軌道修正することにしました。

当社の運営する直営店舗に、「平塚SS」があります。
周辺の競争環境は大変厳しく、燃料油口銭はL当たり2~3円。いい時でようやくL6~7円が確保できる有り様です。同店はセルフサービスですが、油外販売で足りない収益をカバーしようと頑張ってきました。
様々な販売手法や販促ツールについて、実験・検証する目的もあり、月間700万円もの運営コストを投入してきました。

しかし、ガソリン口銭の下落に耐え切れず、赤字が続いていました。そこでこの春から、思い切って体制を刷新し、徹底的にコスト削減を行いました。
人員体制について、社員は店長と整備士で計3人のみとし、また、営業時間は3時間短縮し閉店時刻を却時に変更しました。
燃料油特化型SSの場合、長時間営業が必要でしょうが、カーケアSSの場合、おおかた22時までに実質的な作業時間は終わるので問題ないと判断しました。

このようにしてコストダウンを図ると、これまでのように、お客様へのアプローチが徹底できなくなります。しかし、改めて気づかされたのは、売り込まなくても(放っておいても)、お客様の方から「自主的に申し出る」油外販売の存在でした。

これを私は、「ほっとけ油外」と呼んでいますが、このウエートが結構高いのです。

洗車は、セルフ洗車機を設置しているので、従来から「ほっとけ」の状態です。レンタカーは典型的な「ほっとけ」ですね。車検は、2年前に実施していただいたお客様が、かなりの確率でリピーターとなり買い求めてくれます。

そもそも、カーディーラーや整備工場などの数ある競争相手の中から当SSの車検を 選んでいただいたお客様は、SSに対し、不安を感じることなく、車のメンテナンスを任せてくれる人たちです。現在、平塚SSの車検台数は毎月60台です が、販促費や人手をかければ、これを80台に増やす(競争相手から顧客を奪う)ことができます。

しかし、営業利益を考えれば、ローコストで毎月60台をこなすのも理があります。それから、車検満了日が間近に迫ったお客様からよくあるのが、「車を売りたい」「車を買いたい」という申し出ですが、これらも「ほっとけ」に該当します。

この詳細については、いずれ報告します。ただ、はっきり言えるのは、いったん油外で、「高収益を得る」ベースとなるものを築くことができれば、(とりわけセルフSSでは)声かけをしなくても、そこそこ、油外が売れることです。

「無理なく売れる」油外と「無理して売る」油外の境界

SSの車検需要の理論最大値は、「燃料油1kl当たり0.5台」です。
当社の直営SSは、平均「0.3台/kl」ですから、60%のシェアを獲得している計算になります。業界平均は「0.05台/kl」くらいです。燃料油販売量が月平均200klのSSだと、月間10台といったところでしょうか。

当社と取引していただいているSSについては、「0.15台/kl以上」を目標に掲げ、一生懸命に支援しています。すると興味深いことが分かります。
「0.05台/kl」のSSは、ちょっとした刺激を与えると、「0.12台/kl」くらいまではアッという間に躍進します。

ところが、すでに「0.12台/kl」くらいのSSは”伸びしろ”が少ないです。
どうやら、「0.12台/kl」あたりが、競争相手との戦いが激しくなる境界線になるようです。月販200klのSSなら、24~25台で壁にぶつかります。
この壁を突破するには、販売促進や目標管理といった「ダイナマイト」や「ミサイル」が必要になります。

以前の私なら、「SSがどこまで車検シェアを獲得できるか限界に挑戦してみたい」という思いから「強行突破する」ことを指示しました。

しかし、最近は少し考え方が変わりました。販促費や人員を過剰に投入するのではな く、収支のバランスを考え、粗利益が減ったとしても、「利益を得る」。平塚SSを先例として挙げたように、「無理をしない」ことも重要なのです。そういう 時にありがたいのは、まさしく「ほっとけ油外」の存在です。

「ほっとけ油外」をラインナップしよう!

「ほっとけ油外」とは、人的な販売力に左右されることなく売れる「無在庫商品」のことを指します。
取り扱うだけでお客様から声をかけてくれる、販売訓練・目標管理・声かけといった労力がきわめて少なくても売れる、SSにとって、まことに都合のよい商品です。

果たして、どんな油外商品が「ほっとけ」により売れるでしょうか。
まず「セルフ洗車」が挙げられます。機械の設置と溶剤の補充だけがSSの仕事です。それから、飲料などの自販機も、金額は小さいけれど「ほっとけ」で売れます。
ただ、もうこの辺りで思いつかなくなります。というのも一般に油外商品は、車を点検してニーズが顕在化しなければ、売れないからです。

店側がニーズを顕在化しなくても買ってくれる一部の顧客層をターゲットとしたカーショップと、すべてのドライバーをターゲットとしたSSでは、おのずと売り方が異なります。ですから、SSでは、在庫を抱え、応頭に陳列するような物販型ビジネスは適さないのです。

2009年3月に発生した「ETC特需」では、当社のSSでも多くの在庫を抱えましたが、しかしその後すぐに完売しました。でも、こんなことは滅多にありません。
当社のSSがこれまで取り扱ってきた「ほっとけ油外」を挙げてみましょう。

まず「廃車買取り」です。
これは「廃車・不要車を1~5万円で買取ります」という店頭看板を掲出するだけです。この看板を見たお客様が問い合わせをしてきます。通常で月5~10台、多い月は30台も買取り希望があります。

「車販」も店頭看板が大きな力を発揮します。全国のオークション会場から希望の車 を探し出すので、「中古車在庫40万台!」などと派手なアイキャッチを掲げます。また、町の中古車屋さんのような多大なコスト負担が強いられないため、例 えば、「中間マージンが排除でき、10万円から20万円安い!」と価格メリットを訴求することができます。

この店頭看板だけで毎月5件は問い合わせが寄せられます。むろん、そうした見込み客には専任担当者が対応する必要性が生じますが、見込み客を連れてきてくれるのは看板です。こその「時給」は、せいぜい10円程度のものでしょう。

先にも述べましたが、レンタカーも「ほっとけ油外」です。
営業を開始すれば、お客様から予約が入るのを待つだけです。そのお客様を連れてくるのは、インターネットと店頭看板です。

SS業界では、まず「売る商品ありき」というのが前提となり、いかにたくさん売るか、またそのための「声かけ」「点検」を行うという”銃剣突撃”を好む傾向があります。
しかし今や、お客様の方が商品情報をよく知っています。ブログやツイッターなどが駆使され、ネット上でもSSの油外販売の強引さや未熟さがやり玉に上げられる時代です。

であれば、商品を「売る」のではなく、「売れる」商品を取り扱うといった考え方をする。そういう方向に転換してみてはいかがでしょう。となれば、「ほっとけ油外」のラインナップ拡充こそが大きな課題であると言えます。

車両情報の活用によるピンポイント発信

「無理をしない」のもう1つの考え方は、「買ってくれる人にだけ売ろうよ」というものです。当社のSSでガソリンと洗車以外に何かしら買ってくれたお客様は、全体の3割です。この比率は、どのSSでも大差ありません。
また、そういう考え方で、昔から忠実に実践しているのは、「法人客を主体に営業する」都市部のSS、あるいは、小規模な家族経営のSSでしょう。

前回買ってくれたお客様の顔が見えるので、日常会話の中で、「そろそろオイル交換をする時期ですね」などと会話ができます。 しかし多くのSS、とりわけ セルフSSはお客様の顔が見えにくくなっています。誰が「3割」に属する顧客なのか見分けがつきません。挙げ句、無差別突撃をし、お客様からは嫌がられ、SSスタッフは心に傷を負います。

油外商品を「買ってくれるお客様」を識別するため、VIP会員制度を設けて顧客管理をしたり、購入履歴を記録したカードを配布もしたりするわけですが、これらを徹底するには、やはり運用コストと労力が掛かります。

どうやって「3割」のお客様を見つけるのか。そう考えていたところ、このほど、国交省が自動車登録情報を開示してくれることを知りました。申請して認可を受ければ、当該車両の車検証情報を有償で提供してもらえます(個人情報は不可)。

「お客様の顔」ではなく、「お客様の車」が分かるので、ワン・トゥー・ワンの対応ができます。したがって、これを、例えば、「車番認識システム」と連動させると、昔ながらの油外販売が可能となります。

つまり、こういうことです。
来店客の車番データベースが自動的に作成されます。これに車検証情報、商品情報、購入履歴などのデータベースを連動させます。すると、「買ってくれる人にだけ必要な商品情報を提供する」ことができるのです。

例えば、初度登録から13年を経過した車が来店します。その時、「国から廃車の補 助金が出ることを知っていますか」というメッセージが記載されたチラシがプリントアウトされるプログラムを用意しておけば、SSスタッフはこれを手渡すだ けでよいのです。見込み客は、お客様の方から「車を買い替えたい」「車を探してほしい」と申し出てくれます。

このように、お客様の車に応じた「あなただけのメッセージ」を発信することで、あらゆる油外商品が売れます。このピンポイント情報の意味が非常に大きいのです。

「エアコンフィルター」という商品があります。メーカーは年1回の交換か清掃を推 奨しています。しかし、車種によってはフィルターのないタイプがあります。また、指先で簡単に取り外しできるものがある一方で、交換作業に非常に手間のか かるタイプの車もあります。ですから、迂闊に「声かけ」をして受注してしまうと、とんでもなく「割に合わない」事態を招きかねないので、多くのSSは及び 腰です。

しかし、車種別にエアコンの仕様が分かれば、メッセージをプリントする顧客を絞り込むことができますし、お客様の車に合ったエアコンフィルターや、関連商品の見積もり金額を提示することができるのです。

現在、当社の直営SSでこの販売方法が通用するか試しているところですが、思いの外に順調です。経過については改めてご報告します。

今回は、取り扱うだけで売れる「ほっとけ油外」商品のラインナップについて、さらに、顧客ニーズを顕在化すれば、「説得しなくても買ってくれる」お客様の識別方法について考えてみました。このふたつが「無理をしない」SS経営に寄与できるのではないかと思っています。

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