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増田信夫の「油外放浪記」

「月刊ガソリンスタンド」2017年2月号掲載

車検はリピート率改善で
まだまだ伸びる

車検の伸びが止まった

当社が運営する5箇所のSSの昨年1年間の業績がまとまりました(表1)。

営業利益は前年から倍増して9,500万円となりましたが、目標は2.5億円ですから、まだ半分以下です。

とは言え、SSの総経費を油外収益で安定的にカバーできる体質づくりが果たせたのは、昨年の大きな収穫です。 その油外収益は7.2億円でした。総粗利の9割を油外が占め、油外の8割は「車検」「車販」「レンタカー」です(グラフ1)。当社にとっては、これが「三種の神器」です。

「車販」は、個人向けオートリースを取り扱ったことにより伸長著しいですが、それでもまだ年間1.9億円。やはり「車検」が依然としてダントツを占め、2.9億円を稼ぐ主力商品です。

車検台数の推移を「グラフ2」に示します。
2013年より車検強化策を推進した結果、3年かけて4000台増加したのですが、昨年はその勢いが止まりました。個人向けオートリースの開発推進に気を取られ過ぎたかと反省しています。

車検受注ルートを見直し

今年は、車検をもう一段レベルアップしたいと思います。 どこを強化するかを考えるにあたり、車検の受注窓口ごとの実績を調べてみました。

車検の受注窓口は、店頭、ホームページ、受注センターの3つがあり、店頭はさらに能動的に「獲得」する方法と受動的に「受注」する方法の2パターンがあります。「グラフ3」に見る通り受注台数の現状はどの窓口もほぼ同数で、どれも欠かすことはできません。

①店頭獲得
車番認識システムがアプローチすべき対象客を教えてくれますので、最も安上がりな車検獲得方法です。もっとも、一から商品説明しているケースは少なく、商圏内に投入している広告宣伝に触れたお客様や、2年前に車検を実施したリピーターが多いので、現実は「ダメ押し」しているに過ぎません。 ただ「ダメ押し」しなければ競合店(カーディーラーや車検専門店など)に流れてしまうお客様も多いでしょう。競合店も黙って指をくわえているわけではありません。店頭獲得活動は、強いマネジメントパワーが要求されます。車番認識システムが捉えた対象客のうち、何人にアプローチし、何人から受注できたか、この「捕捉率」をマネジメントしていますが、ちょっと気を抜くとたちまち下がってしまいます。
②店頭受注
お客様から「車検を注文したい」と言ってくれるパターンです。「ごっつあん」と称しています。前回の車検客にダイレクトメール(DM)を発信したり、商圏内に投入している折り込み広告、ミラーリングなどで当店の車検を知り、魅力を感じていただいたお客様が申し出てくれます。このお客様がもっと増えてくれると楽ですね。
③ホームページ
ホームページから申し込んでいただくお客様は、以前は、月間30人ほどでしたが、アクセス数を増やす改善を図った結果、月間150人以上に増えました。特に強化したのは、チラシや駅看板などの商圏内広告からホームページヘの誘導です。リアルな広告とWebの連動は、関心や信頼感を高めます。
④受注センター
ホームページだけでなく、電話でも注文を受けます。料金やサービスの問い合わせだけでなく、車検切れ、納税忘れ、名義変更といった特殊なケースの依頼も多くやってきます。

商圏告知の強化ポイントは ミラーリング

これら受注窓口のうち、特に前記②③④は、商圏告知活動が前提となります。車検の商圏はせいぜい半径5~7km圏程度ですから、チラシの折り込み広告が主流です。

ところが(表2)に見る通り、当商圏では新聞購読率が6割程度に低下しています。スマホなどパーソナルメディアの普及によるものでしょう。

従って、全紙に折り込んだとしても3分の2の世帯にしか届きません。届いたとしても折り込み広告にはいくつかのハードルがあります。大量のチラシの中から当社のチラシを手にとっていただき、そのご家庭の決定権者の目に触れる必要があるのです。

つまり、折り込み広告だけに頼って車検が伸びることはあり得ません。ポスティングをときどき併用していますが、やはりコストが高いうえ、確実にエリア内に配布されているかどうか信頼できない業者もいます。

そこで今、特に強化を図っているのがミラーリングです。
「表3」は最近のミラーリングの実績です。月間平均173台がミラーリングによって入庫しました。不特定多数への告知ではなく、車検の近い車両にピンポイントで告知するので、CPO(車検1台受注するためのコスト)も4,800円と申し分ありません。

これだけ費用対効果の高い方法を、多くのSS事業者が採用しない理由が分かりません。ある方から「違法活動ではないですか?」と質問され驚いたことがありますが、まったくの見当違いです。クレームを心配される方もいるようですが、洗車の方がはるかにクレームが多いことをご存知でしょうか。

リピート率改善はSS共通の課題

さて、車検を最も安上がりに伸ばす方法は、リピート率の改善でしょう。
新規客を獲得するより、既存客に反復購入してもらう方がはるかに簡単でローコストなのは、あらゆる業界に共通する世の中の常識です。

車検も例外ではありません。
新規客を獲得するためには広告宣伝、景品、値引きなどで興味をひき、しっかり商品説明しなければなりません。下手にやるとCPOが2万円かかることもあります。しかし、リピーターなら、意向確認するだけで注文してくれます。

SSは元来、大量の給油来店があることが逆に災いし、リピーター対策が不得意です。当社SSも例外ではありません。車検のリピート率が70%以上の整備工場は珍しくありませんが、当社SSでは30~40%です。もうそれだけで、年間3200台、1億円以上の機会損失をしている計算です。

ある日、私は店長たちに説教しました。
「車検客は釣った魚ではない。ちゃんとフォローしよう」
「まずは車検が完了したら1週間以内に調子伺いの電話をしなさい」
「半年ごとに定期点検を勧めなさい」
「こうして定期フォローを継続し、2年経ったらまた車検を受注しなさい」

店長たちはお互いの顔色を見ながらも「はい、やります」と答えます。ところが5割も実施できません。「なぜできないのか?」と問うと「忙しくて時間がない」「相手が捕まらない」「電話に出てくれない」。挙句の果てに「電話すると寝た子を起こす」と言う始末です。

電話すると整備のミスや不手際が指摘され、かえってクレームが増えると言うのです。これには唖然としました。ともあれ、できない理由を延々と聞いても埒(らち)があかないので、SSとは別に「コールセンター」を設置することにしました。かれこれ4年前の話です。

コールセンターづくりに七転ハ倒

ところがこのコールセンター、「言うは易く行うは難し」です。最初は車検工場の事務パートを増員し、コールセンターを兼任させようとしました。1年ほどやってみましたが、やはり兼任ではうまくいきません。

そこで独立した部門を作りました。SSの会議室を仕切って部屋とデスクを充て、管理者1名と数名のパートを配備しました。ところが、一向に成果が挙がりません。

成果が挙がらなければ、組織は停滞します。あろうことかパート軍団が反乱を起こしました。あの管理者が嫌いだ、見るのも嫌だ、管理者を代えてくれなければ「一斉に辞職するぞ」と。リーダー格の者はセクハラ、パワハラだと労働基準局に訴え、弁護士を雇って慰謝料を請求します。そんな職場に嫌気がさして辞める人も出て、リピート率の改善どころではありません。

ついに管理者自身も心労で長期入院します。実に半年近くの間、管理者不在のまま、残った3人が気ままにシフトを組み気ままに仕事するという、とんでもない状態が続きました。 本末転倒もいいところです。何が悪かったのでしょう。特に感じた反省点は次の2つです。

➊狭い空間に押し込まれると、ゴキブリも共食いするといいます。人間も同じ。ストレスの「気」が部屋に充満したのでしょう。

➋たかが既存客に電話するだけだと侮っていましたが、事務能力に優れた人が 電話に向いているとは限りません。電話の適性のある人を採用すべきでした。

これら反省点を踏まえ、昨年2月からコールセンターの再構築に着手しました。まずは管理者選びですが、途方に暮れました。適した人間がいません。仕方なく本社スタッフを無理やり指名せざるを得ませんでした。適任スタッフの採用を繰り返し10名の組織にしました。

前述の「受注センター」の機能も統合し、昨年8月には広い事務所スペースをあてがいました。 その甲斐あってか、車検のリピート率は40%から50%にまで上昇し(表4)、前年割れを起こしていた車検台数も下半期から巻き返しているのです。

しかし、まだ安心できません。コールセンターのコストが月間200万円かかっています。ということは、まだプラスマイナスゼロです。
そこでコールセンターをなお一層強化しようと決意しました。車検リピート率の改善だけでなく、個人オートリースや任意保険なども受け持つ、SSの総合カスタマーセンターにしていきたいと考えます。

「コールセンター業務」というものに対する見識不足も痛感しました。かくなる上は、コールセンターのプロをヘッドハンティングしています。3名のプロと面談しましたが、目からウロコの連続です。そのプロを採用する目処もついたので、今年中には超強力なコールセンターに変革できるでしょう。

当社SSの車検台数が年間1万台を超える日も近い。そう確信しています。